林業に欠かせない作業の1つが間伐です。
林業の中でも注目されている作業ではあるものの、「そもそも間伐って何?」「どんな目的で行われるの?」など、間伐作業について疑問を抱いている方も多いでしょう。
本記事では、間伐の目的や歴史、種類について解説します。
高性能林業機械を使った間伐も紹介しますのでぜひ、参考にしてください。
目次
間伐とは?
林業において間伐とは、一部の木を伐採し森林を整備する作業のことです。
年間を通じて行われますが、冬期間に行うと丸太の価値を損なわずに間伐ができます。
冬期間は樹木の活動が押さえられているため、伐採の際に木々同士がぶつかり合っても樹皮がめくれることは少ないでしょう。
出典:林野庁「間伐とは?」
ここでは、間伐の目的や歴史を紹介します。
間伐の目的
間伐の目的は、次の通りいくつかあります。
- 対象木の成長促進:林内に光が差し込むようになるため
- 水源かん養・土壌保全機能の発揮:下層植生を繁茂(はんも)させることにより可能になる
間伐が行われないと木々同士が干渉し合い、成長が阻害されてしまいます。
形質不良となったり、成長量も落ちたりするでしょう。
その結果、木材としての価値が高まらないため、森林の収益性が落ちます。
また、間伐によって日の光が林内に差し込まず、下層植生が育ちません。
下層植生に乏しいと表土が雨にさらされ、土壌が流出しやすくなります。
山に水をためる機能である、水源かん養機能も高まりません。
森林の収益性と公益性のどちらから見ても、間伐の作業は重要といえます。

間伐の歴史
「森の中の一部の木を伐採する」という行為自体は、古くから日本で行われていました。
制度として「間伐」に通じる考え方が採用されたのは江戸時代です。
江戸時代には過度な伐採による森林の荒廃・洪水被害などを受け、「留山制度」「留木制度」と呼ばれる一部の山や樹種の伐採を禁止する制度が導入されました。
さらに明治時代になると「輪伐」や「択伐」など、森林を持続的に利用する方法が実施されます。
しかしその後、昭和20~30年ごろの「拡大造林政策」や、チェーンソーの普及による生産性の飛躍なども影響して森林資源が枯渇し、災害の増加といった問題も発生しました。
その後林業の低迷により保育の必要性が増加したことから、昭和49年には除伐や間伐を造林事業の補助事業として追加するなどして、人工林の整備が推進されるようになります。
この木材需要の高まりから森林荒廃への流れは、江戸時代や明治時代をはじめ、幾度となく繰り返されてきました。
間伐の歴史は、過度の伐採と森林保護の繰り返しの歴史であったともいえるでしょう。
参考:林野庁「我が国の森林整備を巡る歴史」
間伐の種類
間伐の種類には、以下のようなものがあります。
- 保育間伐
- 搬出間伐
- 列状間伐
ここでは、それぞれの間伐の種類について詳しく紹介します。
参考:林野庁「間伐等の推進について」
保育間伐:搬出を伴わない間伐
保育間伐は、主に対象木の成長を促すために行われる間伐です。
およそ、20〜30年生の林齢の林で行われます。
伐採する樹木の直径は20cmにも満たないことが多く、木を伐って出す作業である搬出を行わないことが特徴です。
樹木同士が成長を邪魔し合うため、保育間伐を行わない林はもやしのように細長く育ちます。
単木として考えても強さがなく、風雪害にも弱い林となり、台風などの強風が吹く環境では林全体が倒れてしまうケースもあるでしょう。
太く成長した樹木は、根が土を掴む力も大きくなるため、土砂災害などにも強くなります。
また、よく成長し材積が多くなれば収益性も上がるため、林業において保育間伐は欠かせない作業です。
保育間伐は伐採する木が細いため、油断しやすい作業です。
危険なかかり木にもなりやすいので、保育間伐の作業は細心の注意が必要です。

搬出間伐:伐った木材を搬出し販売する間伐
保育間伐を何回か行うと木は順調に成長し、どの木を伐ってもある程度の太さとなり、木材の搬出が必要な状態となります。
そこで、伐採した樹木は製材工場のニーズに合わせて採材され、運搬車によってトラックが進入できるところまで運ばれます。
この搬出作業を伴った間伐を「搬出間伐」といいます。
現在の搬出間伐では主に高性能林業機械が用いられ、効率的により大規模に生産されています。
搬出間伐を何度も繰り返すことで、主伐と呼ばれる最終的に全ての木が伐れる林となります。
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列状間伐:伐採の範囲を列状に決めて行う間伐
列状間伐は、間引くように伐る木を選ぶのではなく、列状に伐採する手法をいいます。
1列ごとに伐採をしたり、数本まとめて帯状に間伐したりと、列状に伐る方法には多くの種類があります。
出典:林野庁整備課「列状間伐の手引」
「比較的伐採がしやすい」「伐る木を容易に選べる」などの利点があるほか、「かかり木にもなりにくい」間伐方法です。
一般的に用いられる間伐方法は「定性間伐」と呼ばれ、列状に伐ることはせず、間引くように木を伐採します。
定性間伐と比べ、列状間伐を用いるところはまだまだ少ないでしょう。
とはいえ、取り入れるメリットもあるため、どちらを採用すべきか、組み合わせて伐採すべきか、総合的な判断が求められます。
搬出間伐や保育間伐、列状間伐は、森林整備事業補助金の申請も可能です。
詳しくは「こちらの記事」をご参照ください。
高性能林業機械を使った間伐
ここでは、高性能林業機械を使った間伐を紹介します。
高性能機械の導入で作業時間の短縮が可能
近年は高性能林業機械の普及が進んでおり、作業は効率化されてきています。
出典:林野庁「令和2年度 森林・林業白書」
林野庁によると、平成元年における高性能林業機械の保有台数は100台にも満たなかったものの、令和元年には1万台を突破しているとのことです。
多くの事業体において、高性能林業機械の恩恵を受けているといえるでしょう。
搬出間伐を行う際は高性能林業機械による作業がほぼ必須の現在では、機械が林内へ進入できる作業道の重要性がますます高まっています。
作業道の詳しい解説は以下の記事で確認できるため、参考にしてください。
「作業道作設の路網計画について手順やポイントを解説〜路網計画編〜」
「作業道の管理は施工のときから始まっている!〜作業道管理編〜」
参考:林野庁「高性能林業機械の効率的活用」

チェーンソー作業よりも安全性を確保
高性能林業機械はチェーンソーマンが人力で作業するよりも、安全性に優れています。
その理由は、キャビンの中(主に操縦するところ)で伐採作業が行えることや、リモコン操作が可能になったことが要因に挙げられます。
しかし、依然としてかかり木による災害発生は減少していないため、間伐時のかかり木発生をいかに防ぐかが、間伐作業の労働災害防止の観点からは重要です。
日本は急しゅんな山が多いため、機械化が進んでいる現在でもチェーンソーによる伐倒技術は必要不可欠です。
参考:林野庁「高性能林業機械導入等から見た労働災害の現状と今後の安全対策」
まとめ
間伐は適正な森林管理を目的とした、林業でも重要度の高い作業です。
収益性を高めたり公益的機能を高めたりと、林業では欠かすことができません。
近年では高性能林業機械の普及により、より安全に効率的に作業できる環境が整ってきています。
それでもなお、かかり木の発生による事故は減少していないため、間伐の作業時には一層の注意を払う必要があります。
本記事が間伐作業を知るための参考になれば幸いです。
参考資料
林野庁.我が国の森林整備を巡る歴史https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/25hakusyo/pdf/6hon1-2.pdf(2024年9月取得)
林野庁.間伐等の推進についてhttps://www.rinya.maff.go.jp/j/kanbatu/suisin/(2024年9月取得)
林野庁.高性能林業機械導入等から見た労働災害の現状と今後の安全対策https://www.rinya.maff.go.jp/j/kensyuu/pdf/terasaki.pdf(2024年9月取得)
林野庁.高性能林業機械の効率的活用https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/R2hakusyo_h/all/tokusyu1_2_2.html#:~:text=%EF%BC%88-,%E9%AB%98%E6%80%A7%E8%83%BD%E6%9E%97%E6%A5%AD%E6%A9%9F%E6%A2%B0%E3%81%AE%E5%8A%B9%E7%8E%87%E7%9A%84%E6%B4%BB%E7%94%A8,-%EF%BC%89(2024年9月取得)