林業における植栽作業とは?目的や手順・コツなどを紹介 | 森林テック
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林業における植栽作業とは?目的や手順・コツなどを紹介

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スギやヒノキ、広葉樹の苗木を山に植えていくのが林業における植栽作業です。

街から見える遠くの山でどのように苗木が植えられているのか、気になっている方もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、植栽作業の目的や手順、コツなどを紹介していきます。

コンテナ苗の手順も紹介するので、植栽作業を知るための参考にしてください。

林業にとって植栽とは

植栽は苗木を植えることを指し、目的とする樹種で形成された森林を造るために行われます。

主伐後に何も植えずに放っておくと、林に育つ樹種が周りの環境に強く依存するため、狙い通りの林にするのは困難です。

その点、植栽を行えば、目的の樹種の林へと誘導できます。

針葉樹の植栽には大きく分けて2つあり、根が露出している裸苗(普通苗)の植栽と、コンテナに苗木が入っているコンテナ苗の植栽があります。

作業時期は主に春が多く、事前に林地の整理作業である地拵えも行われるのが一般的です。

地拵え作業に関してはこちらの記事を参考にしてみてください。

最近では、主伐から植栽までを一連の流れで行う、「一貫作業システム」が普及しています。

作業の効率化と省力化が見込まれ、近年注目を集めています。

植栽の基本的な手順

植栽作業は基本的に以下の4つの手順で行われます。

  1. 苗木を用意する
  2. 植栽するポイントを決める
  3. 植え穴を掘る
  4. 植え付ける

それぞれについて詳しく紹介していきます。

苗木を用意する

植栽を始める前には、苗木を手配する必要があります。

植栽箇所の面積を測量やGISなどから求め、植栽密度を乗じて計算します。

  • 苗木の本数=植栽する面積×植栽密度

また、苗木は乾燥を嫌うため、現場に運ぶ量を調節する必要があります。

例えば、1日に1,000本植えられる労働力があるときに、林地内へ一度に10,000本供給してしまうと、最後に植えられる苗に着手するのは早くても10日後になってしまうでしょう。

その間、苗木は乾燥し続けてしまい、最悪の場合は枯れてしまうことも考えられます。

トータルに必要な苗木の本数と日々植えられる苗木の本数から、苗木の運搬計画を立てていきます。

植栽するポイントを決める

植栽するポイントを決める方法は2つあります。

1つは50mのロープなどを張り、等間隔に植栽ポイントを決める方法です。

もう1つは、植栽間隔の目安となる「尺板」や「尺杖」を用いて、1つずつ植栽ポイントを決める方法です。

代表的な植栽密度ごとの植栽間隔は、以下の表を参考にしてください。

参照:スギ・ヒノキ・カラマツにおける低密度植栽のための技術指針l林野庁

おおよそ植栽するポイントを決めて、岩などの障害物を避けたところが掘る位置となります。

植え穴を掘る

植栽するポイントを決めたら、その場所にある落ち葉を鍬などを使って軽く寄せ、土を露出させてから掘り進めます。

落ち葉を寄せる理由は、苗木の乾燥を防ぐために土を埋め戻したあとで再び落ち葉を使うからです。

土と一緒に掘り進めてしまうと落ち葉と土が混ざってしまい、落ち葉だけを使うことができなくなってしまいます。

植え穴の大きさの目安は、苗木の根っこがしっかりと伸びる程度です。

掘った土は散らかさずに集めておくと、土を戻す作業が効率よく行えます。

植え付ける

十分な大きさの穴を掘り終わったら、次は苗木を植え穴に入れます。

この際、根を伸ばした状態で入れると、根がしっかりと張りやすく、木の健やかな成長が望めるでしょう。

苗木を入れたあとは、掘ったときに寄せた土を埋め戻していきます。

土を埋め戻したら必ず行いたいのが、埋め戻した箇所を足で踏み固める作業です。

踏み固めることで、土が締まり、風などでも簡単には倒れにくくなります。

最後に、寄せていた落ち葉を掘った場所の上に散らして、1本の苗木の植え付けが完了です。

コンテナ苗を植えるときの違い

コンテナ苗を植える手順は、裸苗を植える手順と基本的には一緒です。

大きく違う点は、専用の器具である「ディブル」で穴を開けることです。

参照:新潟県ホームページ、森林研究所たより

ディブルは土を掘るのではなく地面に穴を開ける器具のため、表土をはぐ必要がなくなり、素早く植え穴を作れます。

また、乾燥に強いこともコンテナ苗の特徴です。

裸苗と違い苗木の根が土で覆われているため、水分不足になりにくくなっています。

そのため、基本的にはどの季節でも作業が可能です。

植栽を成功させるコツは苗木の乾燥を防ぐこと

植栽を成功させるコツは、苗木を乾燥から防ぐことです。

苗木が乾燥してしまうと枯れてしまう可能性が高まるため、いかにして乾燥から守れるかどうかが、植栽を成功させるポイントになります。

例えば、苗木を現場でストックする場合は、日陰などに置く対策がとられるでしょう。

とくに裸苗の場合、根が露出しているため非常に乾燥に弱くなっています。

裸苗の運搬の際は根が重なるように梱包され、乾かないような工夫がされていますが、それでも油断はできません。

植えたあとも植えた苗木の根本に枯れ葉などを敷くことで、土を乾燥させないようにできます。

植え時期を考慮するのも1つの方法で、雨が振り続けるタイミングで植栽すると苗木に十分な水分が行き渡ります。

まとめ

植栽は、将来の林を育てるために非常に大切な作業です。

森林資源の確保は木を切り尽くしてしまってからでは遅く、今から50年以上先を見越して植えていかなければいけません。

コンテナ苗が普及しはじめ、植栽作業も省力化が進んできています。

これからも林業を営んでいくためには、木を切って植えるというサイクルが必要です。

この記事が、少しでも植栽作業を知る機会となってもらえたら幸いです。

参考資料

林野庁.「スギ・ヒノキ・カラマツにおける低密度植栽のための技術指針」林野庁.2020.https://www.rinya.maff.go.jp/j/seibi/sinrin_seibi/attach/pdf/R01mitudo-15.pdf(2024.3.3取得)

新潟県.「森林研究所たより スギコンテナ苗の植栽功程調査について(林業にいがた 2016年5月号記事)」新潟県.2016.https://www.pref.niigata.lg.jp/site/shinrin/rin-nii-201605.html(2024.3.3取得)