近年、ツキノワグマが人里に出没することが多くなり、人身被害が頻発しています。
ツキノワグマの行動はブナ・ミズナラ・コナラといったブナ科樹木の結実状況と深い関係があります。
ブナの実りとツキノワグマの出没
東北森林管理局の調査によると、ブナが凶作の時はツキノワグマの出没数が多く、豊作の時は出没数が少ないことが明らかになっています。
しかし北陸や近畿などその他の地域ではブナの実りとツキノワグマの出没状況の相関がそれほど強くなく、ブナ以外の「実」の豊凶が関係していると予測されます。
ミズナラの実りとツキノワグマの出没
足尾・日光産地の調査によると、ミズナラが凶作の年は豊作の年に比べてクマは低標高の地域へ行動範囲を広げていることが分かりました。
クマはミズナラが凶作の年は、代わりの食物となるクリやコナラを食べるために、それらが生育するより低い場所へと行動範囲を広げているのです。
ブナやミズナラの結実を予測して対策する
ブナの結実度は前年のブナの結実度や夏の気温、開花度から予測することができます。
ミズナラ・コナラの結実は8月中旬~9月上旬に木の結実度を測定することで、熊の出没状況を予測します。
これらの予測をすることで、茂みを刈りはらったり、クマが近づきやすい作物の収穫を早めるといった対策につながっています。
参考資料
水谷瑞希・中島春樹・小谷二郎・野上達也・多田雅充.「北陸地域におけるブナ科樹木の豊凶とクマ大量出没との関係」.日本森林学会誌 ,2013年95巻 1号,p76-82.https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjfs/95/1/95_76/_pdf(2024年12月19日取得)
独立行政法人森林総合研究所.「ツキノワグマ大量出没の原因を探り、出没を予測する」.2011年2月.https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs5-4a/background/full.pdf(2024年12月19日取得)