西日本に広がる照葉樹林を代表する樹木であるクスノキ。
クスノキは古くから日本文化に根付く樹木であり、建築材や彫刻材として活用されてきました。
クスノキは木材だけでなく、成分を抽出して「樟脳」や「クスノキ精油」としても利用されています。
この記事では「樟脳」や「クスノキ精油」の概要や効果について解説します。
樟脳とは
樟脳とはクスノキの木材から結晶として得られる、防虫効果のある化学物質です。
江戸時代には金や銀に並ぶ主要な貿易品として輸出されており、当時の経済状況にも大きく影響しました。
樟脳はチップ状にしたクスノキ材を大きな窯で蒸し、蒸留すると結晶として得ることができます。
現在では主に衣類の防虫・防臭材として利用されています。
クスノキ精油とは
クスノキ精油はクスノキから抽出された油で、爽やかな香りが特徴です。
樟脳が含まれているため、防虫・防臭効果が得られます。
クスノキ精油に関する研究
蚊への忌避効果が確認
天然の防虫剤として活用されてきたクスノキ精油ですが、研究でも蚊への忌避効果があることが明らかになっています。
佐賀大学の研究によると、以下のことが分かっています。
クスノキ精油は重要衛生害虫を含むイエカ属およびヤブカ属に対して有意な忌避効果が確認さ
塩見 宜久・大橋 英純・徳田 誠「クスノキ精油のカ類に対する忌避効果」
れた.植物精油は一般に揮発性が高く,忌避効果の持続時間が短いという欠点があるが,本研
究においては,クスノキ精油200μl あるいは500μl の塗布により,夏季の夜間に少なくとも6
時間は効果が持続することが確かめられた.
ストレス反応の回復促進効果
クスノキ精油の香りは爽快感があり、「カンフル剤」という言葉からも「元気になる」というイメージがあります。
こちらは科学的な根拠はあるのでしょうか。日本心理学会では以下のような研究が発表されています。
アロマ群では天然クスノキ精油を香気吸入したことで副交感神経系活動が活性化し,中枢 NA 神経系活動が抑制され,その結果として,統制群よりも唾液中 free-MHPG の基礎値までの戻りが速く,回復期における HF 成分が順応期の基礎値以上に反応したことが示唆される。
以上のことから,急性ストレス状況下における天然クスノキ精油のストレス鎮静効果が明らかとなった。アロマオイルとしてクスノキ精油を日常生活場面で用いることで,ストレス状態から速やかに心身がリラックスした状態を作り出し,ストレスマネジメントの 1 つの手段となることが期待される。岡村 尚昌, 津田 彰, 矢島 潤平, 松原 昭, 三原 健吾「メンタルストレス・テストに対する心理生物学的ストレス反応の回復過程を促進する天然クスノキ精油の効果」
クスノキ精油を嗅ぐと副交感神経が活性化し、ストレスを鎮める効果があるということが科学的にも証明されているんですね。
まとめ
公園や広場でよく見かけるクスノキですが、クスノキ精油からは防虫効果やストレスを鎮める効果があることが科学的にも裏付けられているんということが分かりました。
樟脳の爽やかな香りはクスノキの葉っぱをちぎると確認できますので、クスノキの葉が落ちているのをみかけたらぜひ香りを嗅いでみてください。
参考文献
塩見 宜久・大橋 英純・徳田 誠.「クスノキ精油のカ類に対する忌避効果」.佐賀大農彙.2015年,100:p27~31
岡村尚昌・津田 彰・矢島潤平・松原 昭・三原健吾.「メンタルストレス・テストに対する心理生物学的ストレス反応の回復過程を促進する天然クスノキ精油の効果」.journal of aroma science technology and safety.2012年,13(1),p64-68