【GIS基礎知識】主題図とは?他の地図との違い、GISによる活用について解説
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【GIS基礎知識】主題図とは?他の地図との違い、GISによる活用について解説

主題図を作るためにGISを利用する、ということを聞いたことがある方は多いと思います。

しかし主題図とはそもそも何か、と問われるとうまく答えられる方は少ないかもしれません。

そこでこの記事では主題図の概要や一般図・地形図との違い、GISによって作成・活用する方法を簡単にお伝えします。

主題図とは

主題図とは、特定のテーマや情報に焦点を当てて作成された地図のことです。

地図とは地球表面の形状を尺度や座標系などの仕組みによって紙面化し、地形や道路、建物などの位置を正確に記載したものです。

平たく言うと「どこに何がある」のかを示したものが地図です。

主題図は「どこに何がある」という情報に加えて、特定のテーマに基づく情報を強調して視覚化するために作られています。

例えばハザードマップや観光案内図、人口分布図など、日常的に目にしている主題図も数多くあります。

主題図は位置情報である「どこに(Where)」と「何(What)」に加えて以下のような情報が加えられています。

  • いつ(When)
  • 誰(Who)
  • 何(What)
  • なぜ(Why)
  • どのように(How)
  • どのくらい(How much・How many)

このように主題図は5W3Hの様々な状況を整理し、地図という一つの可視化ツールにまとめて紹介できるビジネスインテリジェンスツールということもできるでしょう。

その名の通り、主題(テーマ)がある地図が主題図。わかりやすいですね!

一般図・地形図・主題図:目的別で異なる地図の分類

地図には主題図のほかにも大きく分けて一般図地形図が大きな分類として有名です。

主題図の特性をより深く知るためにも、以下にそれぞれの特徴を解説します。

一般図

一般図は、道路、鉄道、河川、都市などの基本的な情報を含む広範な利用を目的として作成される地図です。

土地の標高や起伏、地形、植生、土地利用などが特定の事情に重点を置かれることなく、縮尺に応じて平均に描かれています。

一般図の例としては都市の交通マップなど挙げられ、日常生活やナビゲーションに広く利用されています。

電子国土基本図(mapryGISより)

地形図

地形図は、地形や地物などの有形物、地名や行政界などの無形物を縮尺に応じて正確に表示した地図です。

原則として等高線で表現されるほか、植生や土地利用などは特殊な記号で、人口構造物は情報から見た時の正射影を表現しています。

地形図は山、谷、湖などの地形的特徴が詳細に描かれており、登山や測量、環境調査などで利用されることが多いです。

地形図(出典:国土地理院ホームページ

主題図

前述通り主題図は、特定のテーマに基づいた情報を視覚的に表現した地図のことです。

具体的には健康データを用いて作成された病気の分布図や、経済データをもとにした収入分布図などが存在し、テーマに応じて様々な図が存在します。

このデータの種類が多岐にわたることこそ、位置情報以外の情報は等高線や植生などの地形情報に限られる地形図、そもそも位置情報以外のデータを使わない一般図との違いといえるでしょう。

主題図の分類:定量的地図と定説的地図

様々なデータを扱う主題図は、位置情報以外から定義されるデータの種類から以下の2つの定義があります。

  • 定量的地図
  • 定性的地図

それぞれについて以下に簡単に説明します。

定量的地図

定量的地図とは名前の通り数量データを地図化したものを指します。

地域ごとの帰宅困難者の人数が表されたハザードマップや犯罪発生数を表した地図などが該当します。

また定量的地図は表現の違いから絶対図相対図の2つにさらに分けることができ、それぞれ以下のような特徴があります。

  • 絶対図:絶対数のデータを円の大きさなどで表現した地図
  • 相対図:比率や百分率など計算されたデータを表現した地図
絶対図の例:地震発生回数(出典:気象庁ホームページ
相対図の例:人口増減率 (出典:総務省統計局

定性的地図

定性的地図は、名前の通り数量以外のデータを対象として、分布や拡散の程度を表現した地図を表します。

具体的には土地利用図や文化地図、電車の路線図や天気図などが該当します。

定説的地図の例:鉄道路線図 (出典:国土交通省北陸信越運輸局ホームページ

GISにおける主題図の活用手順

様々な目的に応じて位置情報を活かした地理空間分析には、GISによる主題図の作成・活用が役に立ちます。

以下に、GISにおける主題図の活用方法の手順を簡単に紹介します。

1.活用目的の整理

一概に主題図と言われても前述通り、目的に応じて様々なものが存在します。

そのためまずはどのような目的でGISを使って主題図を作るのかを具体的に知ることが重要です。

例としては以下のような活用事例が存在します。

  • 都市計画(まちづくりなど):地区計画の策定、土地区画整理など
  • 店舗出店計画:新規開店店舗における調査(競合や地域住民の所得層などを調査)
  • 交通計画:交通空白域の発見、交通流動の現状調査など

2.データの収集と整理

目的が決まったら、主題図の素材となる最適なデータを選定し入手します。

例えば、政府機関や民間企業から提供される統計データや、センサーデータ、土地条件や地質などの情報があり、それらを目的に応じて入手します。

もちろん、自分で計測したり調査して入手する方法もあります。

入手したら統合してうえで、一つのデータベースにまとめてください。

このようにして整理されたデータは、主題図の基礎となります。

データ整理後はご自身が利用するGISソフトに応じてデータを取り込んでください。

3.データの可視化

データをGIS上に取り込んだ後は、表現方法について決定します。

主題図では様々なデータを扱うため、それぞれの表現方法が何のデータをどの程度示しているか、という事項が重要になります。

できるだけわかりやすく表現できるよう慎重に決定しましょう。

また、具体的な表現方法としては以下のような方法が存在します。

  • 色の塗り分け:定性的な情報に向いています。値を階級に分ければ定量データの分析も可能です。
  • グラフ:数量の代償を視覚的に判断するのに向く方法です。
  • ドット:人口などの数字をドット(点)の密度などで表現し、データの分布を表現する方法です。
  • 流線・直線:人やものの流れなど動きのある情報を表現する方法に向いています。

とりわけ色分けについては、数量が増加傾向なら赤色、減少傾向にあるなら青色を使うなど、どの色を使うかも表現方法として重要です。

配色についても各ソフトにあるカラーパレットを参考にし、一見して不自然と思われないパターンを選択するように心がけましょう。

4.空間分析と意思決定

主題図作成後、空間分析機能を活用してデータ間の関係性やパターンを探ってください。

複数のマップを重ね合わせることができるのがGISの醍醐味であり、主題図を作成することでより分析が行いやすくなります。

例えば、人口密度と病気の発生率の関係を分析したり、交通量と事故発生地点の関連性を調査したりすることが可能です。

これらの情報は政府や地方自治体、企業などが次に何をするのかを決めるのに役立ちます。

まとめ

主題図は特定のテーマや情報を視覚的に表現するための地図であるため、特定の問題や現象を明確に理解するための有効なツールとなります。

数字や文章だけのデータよりも、主題図があることで視覚的に分かりやすくなり、経営計画や都市計画の実行などの重要な意思決定に役立ちます。

その作成には様々なデータを一つのデータセットにまとめ上げ、わかりやすく可視化できるGISソフトが大いに役立ちます。

主題図の基本概念とその活用方法をしっかりと理解し、実際の業務に役立ててください。

ただGISを使う前にはどのような目的で何のデータを利用するのか、という前提条件の整理が欠かせません。

主題図を作成する前には現在抱えている、もしくは将来起こりうる問題を整理した上で、必要なデータを検討し、無駄なデータ収集や加工プロセスを省くようにしましょう。

参考文献

ゼンリン「主題図とは?伝わる主題図を作成するための表現法や活用方法を解説」https://www.zenrin.co.jp/product/article/thematic-map/index.html (2024年7月20日取得)

菅野峰明 (1987)「地図」、菅野峰明・安仁屋政武・高阪宏行 編『地理的情報の分析手法』古今書院〈地理学講座〉、ISBN 4-7722-1228-0。

国際航業株式会社「主題図|地理空間情報技術ミュージアム」https://mogist.kkc.co.jp/word/5caa891c-6827-44a8-a502-d9b217dbc27d.html (2024年7月21日取得)

国際航業株式会社「地形図|地理空間情報技術ミュージアム」https://mogist.kkc.co.jp/word/b359fb72-e25c-46c8-acac-98f679f44c1d.html (2024年7月21日取得)

国土地理院「地形図を散歩する:果樹園(みかん)」https://www.gsi.go.jp/MUSEUM/TOKUBE/KIKA3-kajyuen.htm(2024年7月31日取得)

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