【GIS基礎知識】オルソ画像とは?取得方法や活用方法について解説 | 森林テック
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【GIS基礎知識】オルソ画像とは?取得方法や活用方法について解説

GISで土地利用の分析をする際に問題になるのが、空中写真のずれです。

標高が異なる崖や高層ビルなどの空中写真を利用する際、歪みや傾きが激しくそのままGISに取り込むと地図の場所と著しくずれる場合があります。

そのような現象を防ぐのに欠かせない技術がオルソ画像の作成です。

この記事では、オルソ画像の基礎知識やGISで利用する際の注意点などを解説します。

オルソ画像とは何か?

オルソ画像とは、航空機やドローンなどで撮影した空中写真を真上から見たような傾きのない、正しい大きさと位置に表示される画像に変換した画像のことです。

(この大きさと位置の修正については正射変換とも呼ばれます。)

空中写真は光が集まるレンズの中心からの距離の違いにより、対象の写真上の像に位置ずれが生じます。

このずれは対象物が地面から高い距離にあるほど、写真の中心から離れる場所ほど大きくなり、高層ビルや周辺部の山などは写真の中心から外側へ傾くように写ってしまいます。

実際高い建物や山頂の展望台から下の風景を眺めて写真を撮ろうとすると、そのような写真になることがよくあります。

このような何も加工していない空中写真をGISに読み込むと、建物の位置に道路や池がある、など非常に不自然な地理空間情報が存在することになってしまいます。

オルソ画像は、対象物の像の形状や位置の配置を正しく記録し、面積や距離などを正しく分析するために必要な地理空間情報です。

出典:国土地理院ホームページ

オルソ画像の作成方法

オルソ画像を作成するには以下の5工程を経て修正していく必要があります。

  1. 元となる空中写真を撮影する
  2. オルソ画像の基準となる標定点を設置する
  3. 撮影区域の同時調整を行う
  4. 標高値を推測し、数値標高モデルを作成する
  5. 正射変換を行い、オルソ画像を作成する

各過程について簡単に解説します。

空中写真の撮影

オルソ画像には位置や高さについての正確な情報が必要となり、そのためには多くの空中写真が必要となります。

そのため、まずはドローンや航空機、人工衛星などを用いて、さまざまな高さや角度で対象物を撮影します。

標定点の設置

次に空中写真上でわかりやすく確認できる水平位置と高さを付与するために、それらの基準となる標定点を設置します。

標定点については、以下のような方法で設定されます。

  • 撮影前にあらかじめ標識を設置し、空中写真で確認する
  • 撮影した空中写真上で明確に形がわかる場所(白線やマンホールなど)を見つけ、現地に向かってGNSS測量機などにより水平位置や高さを計測する

撮影区域の同時調整

地理空間情報はちょっとのズレで使い物にならなくなるため、非常に高い精度の計測が必要です。

オルソ画像においても、デジタルステレオ図化機などの画像処理装置に、以下のようなデータを取り込み、撮影区域全体で統合して調整計算します。

  • 撮影された航空写真
  • GNSS/IMU装置で計測した各航空写真の外部標定要素
  • 水平位置と高さの基準となる標定点成果

国土地理院ではこの過程を同時調整と述べています。

数値標高モデルの作成

調整が完了したら、画像上の各地点の標高値を計算します。

標高の推定には空中写真の立体視による図化や自動標高抽出技術(重なり合う空中写真に写った情報を比較し、画像上の位置から自動計算する技術)が利用されます。

続いて、標高値が追加された複数の計測点から隣り合う3点を結んで「TIN(Triangulated Irregular Network)」と呼ばれる三角形を作ります。

そして地表面の形状にあてはめた内挿補間により、等間隔の格子状に標高を表された数値標高モデル(DEM)が作成されます。

数値標高モデルについては、こちらの記事に詳しく掲載しています。

正射変換によるオルソ画像の作成

数値標高モデルが作成されたら、正射変換を行い、オルソ画像を作成します。

正確には、外部標定要素の角度と数値標高モデルの標高値を三角形数に代入し、写真上の位置と地上の場所の関係をもとめて、対象物を正しい位置に移動させています。

この作業の過程で空中撮影の写真は複数使われ、正射写真もその枚数分だけ作成されます。

オルソ画像を作成する際には生成された正射写真をつなぎ合わせて作成され、その際にはつなぎ目が目立たないようモザイクがけを行った上で画像統合が行われます。

代表的なオルソ画像である国土地理院の電子国土基本図は、統合されたオルソ画像を30秒×30秒の経緯度区画に分割してデータファイルを作成しています。

オルソ画像の活用法:林業分野では業務効率化に欠かせない技術

オルソ画像の作成は空中写真を地理空間分析に利用する際には欠かせません。

とりわけドローンなどのUAVを用いて森林の標高差のある場所を撮影する際に不可欠となります。

特に森林分野では近年ドローンを用いたリモートセンシング技術の活用が盛んになっており、以下のような用途で活用されています。

  • 伐採、下刈りなどの施業面積の算出
  • 森林境界の推定
  • シカによる食害を防止する柵の延長面積の確定
  • 植え付け本数の算出
  • 人工林の収穫量の予測

これらの作業は職員が実際の山林に入り調査を行うのが一般的でしたが、移動コストや作業コストが発生する手間のかかる作業です。

しかしドローンの撮影とオルソ画像の作成により現地に出向かなくても樹木や林小班一つ一つの現状が詳しく分析できるようになりました。

これにより、現地での作業時間が大きく減り、林業の効率化につながることが期待されています。

ただドローンを用いる場合は進行方向が重ならなるオーバーラップや隣接するコース通しが重なるサイドラップの影響を考える必要があるため、走行ルートを工夫してオルソ画像を作りやすくする必要があることには注意しておくようにしましょう。

まとめ:オルソ画像は高い地点からの分析を行うなら覚えておきたい知識

オルソ画像の作成は専用の機材やソフトを使うことも多く、GISで使うまでの過程も少なくはないですが、画像を正確な地理空間と結びつけるには欠かせない技術です。

人工衛星やUAVなどが普及すると確実に求められる知識となるため、覚えておくようにしましょう。

mapryの開発するレーザードローン「M1」は、カメラも備わっているのでオルソ画像の作成が可能です。

専用の解析ソフトを使うと簡単にオルソ画像が作成できますので、ぜひ森林管理にご活用ください。

詳しくはこちら

参考文献

「オルソ画像について」国土地理院ホームページhttps://www.gsi.go.jp/gazochosa/gazochosa40002.html#:~:text=オルソ画像は、写され,できる地理空間情報です%E3%80%82 (2024年4月29日取得)

「AV(ドローン)オルソ画像を用いた造林補助金申請」一般財団法人日本森林林業振興会名古屋支部 http://www.center-green.or.jp/nagoya/research/report20220114_2.pdf (2024年5月3日取得)

「森林におけるドローン空撮画像からオルソ画像を作るためのラップ率の把握」長崎県庁ホームページhttps://www.pref.nagasaki.jp/e-nourin/nougi/theme/result/R2seika-jouhou/shidou/S-02-31.pdf (2024年5月3日取得)

「UAVオルソによる業務効率化の可能性 ~収穫調査に着目して~」林野庁ホームページhttps://www.rinya.maff.go.jp/j/gyoumu/gijutu/kenkyu_happyo/attach/pdf/R1_happyo-60.pdf (2024年5月3日取得)