建物の設計など3次元以上の設計を行うのによく使われるCAD。
近年ではこれとGISの組み合わせによる地理空間分析についても注目されています。
この記事では、CADそのものについて説明したのち、GISと組み合わせることによる地理空間分析の可能性について触れていきます。
目次
CADとは
CADとは、「Computer-Aided Design(コンピュータ支援設計)」の略で、コンピュータを使って設計や図面作成を行う技術やシステムのことを指します。
CADの歴史はコンピューター黎明期の1960年代まで遡ります。
1963年には初めての2次元CADソフトウェア「Sketchpad」が発売。
ペンを動かすだけで画面上に図面を描けるという操作の簡単さが衝撃を与え、以後製図をPCで行うことが当たり前となりました。
その後1970年代になると自動で製図・加工できるADAMや3次元CADソフトCATIAなどが登場し、さらに普及することとなります。
そして1982年に現在のCADソフトで主流となっているAutoDesk社のAutoCADが発売。
以降は一般企業にもCADが広まるようになり、機械や建築の設計から始まったCADも今日ではさまざまな分野で幅広く利用されるようになっています。
CAD技術は林業・木材業界にも大きな影響を与えています。CADを利用した木材のプレカットは工事の効率化や材料ロスを削減を実現。1990年代~2000年代にかけて普及率が高まり、製材品の流通構造を大きく変化させました。
CADの利点
CADにはいくつかの大きな利点がありますが、その代表的なものを以下に挙げます。
- 精度の向上
- 作業の効率化
- 修正が簡単
精度の向上
手作業による設計では、どうしてもミスや誤差が発生しやすくなりますが、CADを使用すれば非常に高い精度で設計が可能です。
直線や曲線、角度などの要素を正確に描写できるため、製品や建物の品質も向上します。
作業の効率化
CADは手作業よりもはるかに速く設計を進めることができます。
繰り返し作業が多い部分をテンプレート化したり、複数の図面を同時に扱うことができるため、大幅な時間短縮が期待できます。
修正が簡単
設計や計画は変更がつきものですが、紙の図面では修正に時間がかかることがあります。
とりわけ手書きの図については寸法などに専用のルールがあり、それらに従って買い直しを行うのは容易ではありません。
一方、CADならば図面データを簡単に修正・更新することができるため、設計の進行に合わせた柔軟な対応が可能です。
またコピー&ペーストも容易に行えるため、他の人からフィードバックを受けやすく修正もしやす区なるというのも大きなメリットになると言えるでしょう。
CADの種類
CADソフトウェアにはいくつかの種類があり、利用する目的に応じて適切なものを選ぶことが重要です。以下に、代表的なCADの種類をいくつか挙げます。
2D CAD
2D CADは、平面図や断面図など、二次元の図面を作成するためのツールです。
建築の設計図や機械部品の製図などに広く使われています。
2D CADでは、図面内の各要素を線や点、円、弧などの単純な図形で表現し、それらを組み合わせて形状を描きます。
3D CAD
3D CADは、立体的な三次元モデルを作成するためのツールです。
物体を三次元的に表現するため、設計者は形状や寸法、質量などの情報を視覚的に把握しやすくなります。
3D CADを使用することで、設計物がどのように動くか、他の部品とどのように組み合わさるかといったシミュレーションも可能になります。
BIM(Building Information Modeling)
CADの種類とはいえないですが、近年の建造物の3Dモデルにおいて活用事例が増えているBIMにも触れます。
BIMは、建物全体をデジタルでモデル化し、その設計・施工から維持管理までのあらゆる過程で情報を活用するためのシステムです。
従来のCADと異なり、BIMでは設計データに加えて、材料や施工スケジュール、コストなどの情報も一元管理できるため、建築プロジェクト全体の効率化が図れます。
よりよい意匠や設備の実現、環境負荷の削減などにも役立つことから、建設業回で大きな注目を集める仕組みとなっています。
GISにおけるCADの活用
上述したようにCADはもともと機械や建築の設計分野で使われてきましたが、近年では様々な用途が生まれており、地理空間分析もその一つです。
CADでも地理空間情報は存在するものの、GISと組み合わせることで幅広い分析ができるようになっています。
以下に簡単に説明します。
GISとCADの連携
CADは設計図や詳細な図面を作成するのに優れていますが、GISは広範囲の地理的データを扱うのが得意です。
この2つを組み合わせることで、設計と地理的なデータを統合し、より正確な分析や計画を行うことが可能になります。
またGISでは政府や自治体などが提供するオープンデータや統計情報が充実しており、それらを組み合わせることでより実態にあった分析やプランニングを行えるというメリットも存在します。
例えば、都市計画ではCADで作成された建物の設計図をGIS上に配置し、実際の地形や周辺環境との調和を確認することができます。
森林管理においては、CADで作成した森林の区画図をGISに取り込み、地形データや植生データと組み合わせて分析を行うことで、より効率的な管理が可能になります。
CADデータのGISへのインポート
GISにおけるCADデータの活用は、まずCADで作成された図面やモデルをGISに取り込む(インポートする)作業から始まります。
多くのGISソフトウェアは、一般的なCADフォーマット(例:DWG、DXF)をサポートしており、これによりCADで作成された詳細な設計図や地形図をGISで利用することができます。
インポートされたCADデータは、GIS内で他の地理データと重ね合わせて表示したり、属性情報を付加して分析に活用することができます。
これにより、CADで描かれた物理的な設計と、GISで管理される地理的な情報が統合され、より包括的な視点でプロジェクトを進めることができるようになります。
CADとGISの組み合わせによるを空間解析
GISの強力な機能の一つに、空間解析があります。
空間解析とは、地理的なデータを基にさまざまな要素間の関係を解析する手法です。
CADで作成されたデータをGISに取り込むことで、設計図や構造物の位置情報を活用した空間解析が可能になります。
例えば、都市計画においては、CADで設計した建物の配置をGISに取り込み、交通の流れや景観への影響などをシミュレーションすることができます。
これにより、都市の発展や再開発計画において、より実践的なデータに基づいた意思決定がなされ、住民との折衝など後ほど発生する可能性のある問題を事前に把握できます。
森林管理においては、GISに表示した地形や樹種・植栽時期などのデータをもとにCAD機能で施業区域や作業道の作成するなどといった活用法があります。
また、CAD形式のオープンデータや既存データをインポートして施業計画に役立てることも可能です。
近年では3D CADモデルをGISで活用する技術も注目を集めています。
これを活用すれば風向きの影響や日照条件など高さに関連した情報を組み合わせて分析することができます。
mapryGISのCAD機能
当社のmapryGISでもCAD機能を搭載しています。
CAD機能(編集モード)
mapryGISでは以下のようなCAD機能を搭載しています。
- 図形の作成・編集(点、線分、ポリゴン、長方形、円、曲線)
- 除地ポリゴンの作成
- 座標を指定した図形の設置
- DXF ファイル・ Shapefile として出力
- 印刷
CADファイルのインポート
既存のCADファイルをインポートして利用することも可能です。
以下の2ステップだけで簡単にインポートすることができるので、手元にファイル付がある方は是非とも試してみましょう。
- mapryGISにログインし、「インポート」ボタンを押してください。
- CADのファイル形式の一つである「DXF」の箇所を選択すると、保存した場所から簡単にファイルインポートを行うことができます。
なお、DWG形式などCADでよく利用される他の形式のファイルは読み込めないことや座標系が平面直角座標図系に限定されることには注意してください。
高額なソフトのインストールをすることなくCADファイルを読み込めるのはmapryGISの魅力の一つです。
ご興味のある方はぜひ一度お問い合わせください。
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参考文献
Adecco 「CADとは?CADオペレーターってどんな仕事?」https://www.adecco.co.jp/useful/engineer_01#:~:text=CADという言葉自体は,ということになります%E3%80%82 (2024年9月26日閲覧)
「年表で見るCADの歴史 誕生から現在まで」CAD JOB 2019年1月22日 https://cadjob.co.jp/cad_course/column/p1314/ (2024年9月26日閲覧)
AUTODESK 「BIMとは」BIM design https://bim-design.com/bim-dx/bim/01-about-bim/ (2024年9月26日閲覧)
大塚商会 「CADユーザーがGISを利用するメリットは?」CADJapan.com https://www.cadjapan.com/topics/cim/useful/words/200930_01.html (2024年9月26日参照)