美しく強い! 南部アカマツの特長とは?歴史的建造物にも使われている
森林・林業知識

美しく強い! 南部アカマツの特長とは?歴史的建造物にも使われている

リノベーションやDIYで木材を選ぶ際、何を基準にしていますか?

強度や見た目、加工のしやすさは重要な要素です。

今回紹介するのは、岩手県で育つ「南部アカマツ」

この木材は、その名の通りアカマツの一種ですが、一般的なアカマツとは異なる特長を持っています。

通直で均一な木目、優れた強度、ヤニの少なさは、DIYでの加工を容易にし、住宅の梁からフローリングまで、幅広い用途に対応可能です。

この記事では、古くは熊本城などの歴史的建造物にも使われてきた南部アカマツの特長を紹介します。

南部アカマツとは?

南部アカマツは岩手県で生産されるアカマツを指します。

岩手県はアカマツやカラマツの産地として有名で、人工林面積のおよそ3分の1がアカマツとなっているほどです。

なかでも、岩手県には以下のアカマツの産地があります。

  • 県北の久慈地方にある「侍浜松」
  • 盛岡市以北にある「御堂松」
  • 岩手県南にある「東山松」

国有林下にはそれぞれに保護林もあり、その資源の貴重さが伺えます。

なかでも、久慈地方で採れる南部アカマツは太く真っ直ぐで上質とされ、強度の高さから今も神社や仏閣などで重宝されています。

近年はマツ材線虫病、通称「マツ枯れ」の被害が拡大しており、岩手県も例外ではありません。

全国的にアカマツがマツ枯れの被害に合う中で、岩手県の南部アカマツは守るべき資源として貴重さを増しています。

南部アカマツの特長

南部アカマツには以下の特長があります。

  • 材は通直で太く木目が均一
  • 強度と曲がりを生かした「たいこ梁」
  • ヤニが少なく加工しやすい
  • マツ枯れの影響が少ない

ここでは、それぞれの特長について詳しく紹介します。

材は通直で太く木目が均一

南部アカマツの材は曲がりが少なく、木目も均一なのが特長です

母樹から種が落ち、密集した状態から林となる南部アカマツ。

その自然環境から育つことで、通直で木目が均一な材になるとされます。

樹齢100年を超すような個体も珍しくなく、高級建築用材として流通しています。

強度を生かした「たいこ梁」

木目が詰まっているということは、強度があるということでもあります。

木目が均一で細かい南部アカマツは、強度の面から注目されてきました。

また、「たいこ梁」と呼ばれる木材が南部アカマツでは製材されます。

たいこ梁とは、皮をむいた丸太の側面だけを切り落とし、上下部分の丸太箇所を残した梁を指します。

たいこ梁に加工された木材は、一般に角材よりも曲がりへの強度が高まるとされ、南部アカマツの特長をさらに引き上げています。

神社や仏閣などで使われる梁材もたいこ梁が一般的ですね。

ヤニが少なく加工しやすい

南部アカマツはヤニが少ないとされています。

それは南部アカマツの管理方法によるものです。

南部アカマツは基本的に、伐採後の1年は屋外で自然乾燥させます。

これによってヤニの出方が抑えられます。

また、伐採時期は冬場に行うのが通例とされ、「寒切り」と呼ばれるこの手法は、伐採後に青くなりやすいアカマツの特性に合わせた伐採方法です。

低温化で伐採された南部アカマツは、樹脂の動きがそこまで活発ではなく、ヤニが出るのを抑え込みます。

寒切りや自然乾燥によって管理された南部アカマツは、ヤニが少なく加工のしやすい木材に仕上がるのです。

マツ枯れの影響が少ない

マツ枯れは、日本各地で猛威を振るっています。

徐々に北上し被害エリアを広げているマツ枯れですが、岩手県の県北を中心とした一部の地域には、まだマツ枯れが到達していません(令和5年現在)。

アカマツは梁材などで一定の需要があるものの、日本各地のマツ枯れによって木材が獲得しにくい状況です。

岩手県の南部アカマツは貴重な資源となっているため、的確な管理が期待されています。

参考:岩手県森林病害虫被害対策推進協議会「岩手県の松くい虫被害の現状と対策について

南部アカマツの良さを生かした使用例

ここでは、南部アカマツの良さを生かした使用例を紹介します。

熊本城など歴史的建造物の梁(はり)

南部アカマツは強度や耐久性が高いことから、熊本城や歴史的建造物の梁などに用いられています

強度や耐久性が高いことで、大きな建物も長年支えることができているのです。

とくに100年を超すようなアカマツが採れる南部アカマツでは、その強度や耐久力は際立っています。

また、木目が均一で美しいため、建物の美観も向上させます。

南部アカマツは加工のしやすさから、複雑な構造である神社や仏閣の建築に適しているため、多くの歴史的建造物に使われてきました。

参考:いわての木

触れても冷えにくいフローリング材

触れても冷えにくい南部アカマツは、住宅のフローリング材としても有用です

木の温かみは、寒い時期に直に触れることによってよくわかります。

触れたときの温かみは、含水率が低いほど感じます。

伐採後に1年間、屋外で自然乾燥される久慈地方の南部アカマツ。

必要に応じて人工乾燥と組み合わせ、含水率をコントロールします。

しっかりと含水率を落とした南部アカマツの床板材は、とくに温かみが感じられるでしょう。

まとめ

南部アカマツは、リノベーションやDIY愛好家にとっても、非常に魅力的な木材です。

強度、加工性、見た目の美しさ、これらの要素がバランス良く備わっている点は、他の木材にはない大きなアドバンテージと言えます。

とくに、古くから神社仏閣や歴史的建造物にも使用されてきた実績は、その信頼性の高さを物語っています。

次にDIYするときには、ぜひ南部アカマツを候補に入れてみてはいかがでしょうか。

この記事が、南部アカマツを知るための参考になれば幸いです。

参考資料

岩手県森林病害虫被害対策推進協議会.2024年1月「岩手県の松くい虫被害の現状と対策について」https://www.pref.iwate.jp/res/projects/default_project/_page/001/017/546/r5siryo.pdf.(2024年12月19日取得)

いわての木.http://www.iwatenoki.jp/index/iwatenoki/iwatenoki.htm(2024年12月19日取得)

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