日本の山林で伐採された木材はどのように消費者のもとに届くのでしょうか。
この記事では、木材の流通に欠かせない木材市場について紹介します。
目次
国産材の流通について
まず、木材市場について理解するのに欠かせない、国産材の流通構造について説明します。
ざっくりと言うと、以下のような流れになっています。
- 山から木を伐採する
- 市場で売る
- 工場で加工する
- 問屋が仕入れる
- 建築業者が材料として使う
- 消費者が利用する(木造住宅に住むなど)
実際には様々な流通方法があり、木材市場を介すこともあれば介さないこともあります。
詳細は以下の図の通りです。
木材市場の立ち位置についてなんとなくご理解いただけたでしょうか。
川上・川中・川下
木材の流通経路を段階に応じて「川上(かわかみ)・川中(かわなか)・川下(かわしも)」と呼ぶことがあります。
川上は木材を生産する現場、川中は加工や流通の過程、川下は利用・販売、消費の現場を指します。
木材市場とは?
木材市場とは、集合的に木材の取引を行う場のことです。
木材市場は、木材問屋など相対取引で売買を行う市場と、セリ方式で売買を行う木材市売市場(もくざいいちうりしじょう)に分かれます。
木材市売市場には、「原木市売市場(げんぼくいちうりしじょう)」と「製品市売市場(せいひんいちうりしじょう)」があります。
原木市場市場は原木を扱い、製品市売市場は製材を扱います。
原木と製材
原木とは、加工される前の、伐採された状態の木材のことです。「素材」と呼ぶこともあります。丸太をイメージしていただくとわかりやすいです。
一方、製材とは原木を加工した柱や板などの木材のことです。
木材市売市場について
木材市売り市場は原木市売市場と製品市売市場に分かれます。
また、組織形態の違いにより単式市場と複式市場があります。
単式は市場会社が集荷・販売・集金など一連の業務をすべて行います。
複式は、問屋が集荷や販売を行い、市場会社は場所の提供と代金回収を行って手数料を徴収するという仕組みです。ショッピングモールのようなイメージです。
原木市売市場の多くは単式です。
消費地に近い製品市売市場は複式が多くなっています。
原木市売市場について
原木市売市場は、原木を扱う市売市場です。
原木市売市場の機能は、集荷・仕分け機能、公正な価格を形成する機能、在庫機能、与信管理機能(お金が支払われないリスクを管理する)などがあります。
主に原木の生産地の近くに位置しています。
生産者や林家から運ばれた原木は、土場で以下のような分類で仕分けをされます。
- 樹種
- 長さ
- 径級(丸太の太さ)
- 品質
- 直材・曲がり材
仕分けられた原木は、はい積みされてセリによって販売されます。
原木市売市場はどこから原木を仕入れているのでしょうか。
平成29年度 林業・森林白書によると、平成28年における原木の取り扱いのうち、99%が国産材、1%が輸入材となっています。
また国産材の仕入れ元は、素材生産業者が61%、国・公共機関が17%、市場会社自らが生産したものが13%となっています。
原木市売市場は、国産原木の流通において大きな役割を占めています。
平成29年度 林業・森林白書によると、素材生産工場の出荷先の約4割が原木市売市場です。
また、製品工場の入荷先の約4割が原木市売市場です。
製品工場における原木市売市場の依存度は地域によって差があり、同じ国産材のメイン産地でも東北は依存度が低く、九州では依存度が高くなっています。
製品市売市場について
製品市売市場は、柱や板などの加工された木材製品を扱う市売市場です。
製品は、製材工場や木材販売業者、または製品市売市場会社自らが集荷しています。
集荷した製品は、出荷者ごとなどの方法で陳列し、セリによって販売します。
製品市売市場の機能は、集荷機能、公正な価格を形成する機能、在庫機能、与信管理機能(お金が支払われないリスクを管理する)などがあります。
平成29年度 林業・森林白書によると、平成28年度における製品市売市場で扱う木材は、国産材製品が88%、輸入材製品が12%となっています。
その他の木材流通機関
木材センター
木材センターは、複数の木材問屋が小売業者に販売をする場所です。
センター会社が問屋の販売代金を回収し、手数料を徴収します。
複式の製品市売市場に似ていますが、木材センターはセリではなく相対取引にて販売します。
また、製品市売市場では国産材を主に扱うのに対し、木材センターは外材を主に扱います。
プレカット工場
プレカットとは、木造住宅の構造材をあらかじめ機械加工しておくことです。
CAD/CAMを利用した精密なカットにより、工事作業の効率化や材料ロスを削減できることがメリットです。
製材工場から製品を仕入れ、プレカットを施し建築業者に販売します。
1990年代~2000年代にかけて普及率が高まり、製材品の流通構造を大きく変化させました。
木材販売業者
木材販売業者には木材問屋や材木店、建材店があります。
木材問屋は2種類の流通を行っています。
- 素材生産業者等から原木を仕入れて製材工場等に販売する
- 製材工場等から製品を仕入れ、材木店・建材店等に販売する
材木店・建材店は、製品市売市場や木材問屋から仕入れた製品を建築業者などに販売しています。
近年の木材市場の動向
木材の流通に欠かせない木材市場ですが、時代と共に役割も変化しています。
原木市場市場の変化
住宅を建築するのにハウスメーカーが主流になったことで、製材工場が原木を安定的に大ロットで調達する必要性が増しました。
原木市売市場を経由せず、素材生産業者から直接製材工場に納品する流れが増加傾向にあります。
直送の割合は、2006年と比べ2018年では2.1倍に増加しています。(令和3年度 森林・林業白書より)
その場合、原木市売市場はコーディネーターとして素材生産業者と製材工場を結びつけることもあります。
また、原木市売市場の事業所数は減少傾向ですが、1事業所あたりの入荷量が増加しており、大規模化・集約化が進んでいます。
製品市売市場の変化
プレカット工法が普及してきた1990年代以降、製品市売市場の流通量は減少傾向です。
そんな中、豊富な品揃え、在庫量、無垢材の提案、情報量などの強みを生かして新たな事業を展開している市場もあります。
まとめ
木材市場についてまとめます。
- 木材市場とは、集合的に木材の取引を行う場のこと
- 原木を扱う原木市売市場と、加工した製品を扱う製品市売市場がある
- プレカット工法・ハウスメーカーの普及により木材市場の役割が変化している
木材市場についておわかりいただけたでしょうか。
今後も木材市場の動向に注目してみてください。
参考資料
林野庁.2023.「令和3年度 森林・林業白書」https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/r3hakusyo_h/all/tokusyu2_3_2.html(2023.11.21取得)
林野庁.2019.「平成29年度 森林・林業白書」https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/29hakusyo_h/all/chap4_2_7.html(2023.11.21取得)
農林水産省.2019.「平成30年木材流通構造調査報告書」
武田八郎.2007.「林産業と木材流通」.東京農工大学農学部森林・林業実務必携編集委員会「森林・林業実務必携」.株式会社朝倉書店.237-242.
森未来.「木材製品市場を知っていますか?(前編)-市場の成り立ちとこれから-」.eTREE.2022.12.26.https://www.etree.jp/content/woodreport/industry-0017/,(2023.11.28取得)