木材を搬出する現場で毎日のように行われる作業が木材検収です。
今回の記事では、木材検収の概要や活用の仕方、作業のコツなどを紹介します。
目次
林業で欠かせない木材検収とは
林業における木材検収とは、造材した木材の直径を測り、記録することを指します。
木材の断面には以下の2種類があります。
- 元口:根元に近い側
- 末口:てっぺんに近い側
木材検収で径を計るのは末口です。
アナログ的にはコンベックス(メジャー)を用いて計測します。
現在ではデジタル化が進み、工程が大きく縮まっている作業でもあります。
木材検収の工程を見直すことで、日々の作業の効率化が図られるため、コスト削減や生産力アップが期待できます。
木材検収を行う意味
木材検収は、材積を集計するために行われます。
基本的に材の量を数えるための単位はm3(立方メートル)です。
材積を計算するひとつの方法には「末口2乗法」があり、以下の式で求められます。
- 材積(m3)=材の直径(m)×材の直径(m)×材の長さ(m)
計算には径が必要なため、木材検収が行われるのです。
木材工場とのやりとりがm3で行われるため、林業においては、材積がさまざまな基準となります。
伐採の仕事を依頼するときも、作業量は材積で表されることがほとんどです。
期間内に決められた材積を出すのが、伐採・搬出する人に求められる仕事といえます。
そのため、管理の面から考えても、日々の搬出量を把握するのは必要な作業です。
木材検収で得られた材積の活用の仕方
木材検収で得られた材積は、以下の情報を知るために活用されます。
- 単位当たりの生産量
- 仕事の進捗度合い
- ひと山当たりの概算の材積量
- 山土場に蓄積された材積量
全ての木材検収は材積量を知るために行われます。
木材検収の情報がどのように活かせるのか、それぞれくわしく紹介します。
単位当たりの生産量
単位当たりの生産量は、作業工程の見直しに役立てられます。
計算には搬出した材積量が必要なので、木材検収が行われます。
各生産量の求め方は以下のとおりです。
- 「1日」当たりの生産量(日/m3)=搬出した材積÷日数
- 「1人」当たりの生産量(人/m3)=搬出した材積÷作業にかかった延べ人数
林業の伐採チームの生産量を求めるときは、日々の材積管理が欠かせません。
伐採・搬出現場の進捗度合い
伐採・搬出現場の進捗度合いを計る際にも、木材検収は重要な役割を持ちます。
なぜなら、材積を知ることで進捗度合いがわかるからです。
進捗度合いは以下の式で表されます。
- 伐採・搬出現場の進捗度合い(%)=木材検収した材積÷予定搬出材積×100
もちろん、片付けや手直しなど、進捗度合いを計る上では他にも考慮すべき点はあります。
しかし、伐採現場における搬出作業は仕事の大部分を占めます。
おおよその進捗度合いを計るのであれば、十分な数値といえるでしょう。
ひと山当たりの概算の材積量
ひと山当たりの材積を知りたいときも、木材検収は有効な手段です。
部分的に伐採が完了したエリアの木材検収を行ったうえで、全体の木材搬出量を想定します。
全体の木材搬出量は、以下の式で表されます。
- 全体の木材搬出量=全体の面積÷伐採した面積×木材検収した材積
例えば、搬出可能な約10haの山があるとします。
1ha分の山の伐採が完了していて、伐採量は100m3の場合、山全体から見込まれる材積はおよそ1,000m3です。
ただし、おおよそでも山の面積がわからないと計算できません。
山の面積が分かっている場合に可能な計算方法です。
山土場に蓄積された材積量
トラックの運転手との連携時に必要な情報が、山土場に蓄積された材積量です。
山土場は、トラックが積み込みできる場所を指します。
狭い山土場では、トラックが材を運び出さないと山からの搬出作業ができないため、仕事がスムーズに進みません。
そのため、無線や携帯電話を使用し、トラックの運転手との連携が重要です。
ベテランの作業員になってくると、トラック何台分が山土場にあるか見分けることも可能です。
しかし、木材検収をすることで、より正確な材積量が分かります。
その結果、手配するトラックも必要最低限で済むため、スムーズな配車が可能です。
木材検収に必要な道具
一般的に木材検収に必要な道具は、以下のとおりです。
- チョーク
- コンベックス(メジャー)
- 野帳
- 筆記用具
現在は木材検収ができる便利なアプリケーションが多数開発されています。
そのため、スマホやタブレットで木材検収ができる時代です。
しかし、アナログ的なやり方はアクシデントに強い側面があるため、覚えておいて損はない方法です。
例えば、電池が切れた、電波障害で使えない、などの心配がありません。
アナログ的に木材検収できる道具は、常に準備しておきたいものです。
木材検収のやり方
木材検収のやり方は以下の流れで行われます。
- 木材の末口をコンベックス(メジャー)などで測る
- 木材チョークで木口(木の断面)に寸径を記す
- 野帳に転記する
一連の作業を全ての木材に行い、材積を集計します。
山から出る本数は何千何万となる場合もあるので、骨の折れる作業です。
しかし、アプリケーションを使うと、木材検収作業の省力化が可能です。
カメラで撮影するだけで、木材検収が終わります。
木材検収にデジタル化を取り入れることは、伐採搬出作業の効率化の面から考えて、非常に大きな可能性を秘めています。
正確な検収作業のコツ
正確な木材検収には、以下のようなコツがあります。
- きれいにはい積みする
- 役割分担する
- チェックの印は大きめに付ける
コツをつかんで木材検収を行えば、正確で効率よく作業ができます。
それぞれについて紹介します。
きれいにはい積みする
はい積みの木口がデコボコしていては、検収作業がやりにくくなってしまいます。
とくに奥に引っ込んでしまった木材は要注意です。
コンベックスを当てられないため、正確な木材検収ができません。
きれいなはい積みは、木材検収を効率よく進められます。
木材を積む人が自分以外であれば、積み込む人に一声かけてみましょう。
役割分担する
木材検収は役割を分担して行うと、早く正確に作業できます。
木材検収の工程はいくつかありますが、基本的には一人でもできる作業です。
しかし、もう一人の仲間に径を測って読み上げてもらえば、間違いは相当数減らせます。
なぜなら、一人が行う工程を少なくすることで、作業に集中できるためです。
効率面を考えると、ペンやチョークを持ち帰る手間などもあります。
効率を上げたうえでミスを減らすためには、役割を決めて作業に当たることが大切です。
チェックの印は大きめに付ける
野帳に記入し終わった木材の木口には、大きくチェックの印を付けましょう。
付けたかわからないような印では迷いが出ますし、二重記入の可能性も出てきます。
大きく付けたからといって、そこまで手間がかかるわけではありません。
大きなチェックは、あとで無駄な作業をしないための工夫のひとつです。
木材検収作業の注意点
木材検収作業の注意点は以下の3つです。
- 安全を確保する
- 末口を確認する
- 過小評価で木材を測る
注意点を知ることで、現場作業に活かせるでしょう。
それぞれについて紹介します。
安全を確保する
足場やはい積みが十分に安定しているかの確認が重要です。
考えられる危険なポイントは、以下の状況が考えられます。
- 不安定な足場での作業による転落の可能性
- はい積みが崩れる可能性
木材検収の作業は、高く積まれた木材に行う場面が想定されます。
そのため、転落の可能性が大いにあります。
くわえて、林業・木材製造業労働災害防止協会の災害発生状況によると、2011年にははい積みが崩れ下敷きになった死亡事故も起きています。
危険が潜んでいることを認識し、対策を立てましょう。
末口を確認する
林業・木材業界のルールとして、木材検収は末口、つまり木材の断面の小さい方を測ることになっています。
そのため、どちらが末口かわからなくなっている木材は注意が必要です。
誤って元口へ寸径を書いてしまうと、運搬業者や木材加工業者からクレームが入る可能性があります。
なぜなら、2cm分の材積を水増しした可能性を疑われるからです。
例えば、末口で18cmの木材が、元口では20cmとなる木材はよく見られます。
1本であれば微々たる誤差でも、山全体となると大きな差となって表れます。
材の末口がそろっているかどうか、十分に確認して作業に当たらなくてはいけません。
過小評価で木材を測る
過小評価で材を測るのも、木材検収のルールです。
例えば、測った直径が19.9cmだった場合、木材の寸径を18cmと記入します。
10cmの次は12cmのように、スギやヒノキの木材検収は2cmずつ記入するのが決まりです。(これを2cm括約といいます)
ほとんど20cmに近いからといって、数値を繰り上げてはいけません。
木材の売買の基本単位は材積です。
そのため、材積の過大な報告は、売上の水増しにつながってしまいます。
木材は過小評価で測る。
心に留めて木材検収を行ってもらいたいと思います。
まとめ
- 木材検収は、材積を集計するために行われる
- 材積は、林業のベースとなる数値である
- 材積を測ることで、進捗状況の確認や各生産量を計算できる
- 近年はアプリケーションによる木材検収も進んでいる
- 基本は過小評価であり、過大には集計しない
- 木材検収も安全には気を付ける必要がある
木材検収の概要やコツ、注意点などへの理解が深まったでしょうか。
木材伐出作業において、木材検収はなくてはならない作業です。
しかし、山から搬出される全ての木を木材検収するのは、非常に手間がかかります。
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参考資料
林業・木材製造業労働災害防止協会.「木材製造業労働災害(死亡災害)速報一覧」.林業・木材製造業労働災害防止協会.日付不明.https://www.rinsaibou.or.jp/disaster/detail/5319.html(2023.12.14取得)