森林認証について解説!FM認証の取得方法を説明します |
森林・林業知識

森林認証について解説!FM認証の取得方法を説明します

森林認証アイキャッチ画像

印刷物や段ボールなどに、森林認証のマークがついているのを見たことがあるでしょうか?

今回は、森を守るマーク・森林認証について解説します。

森林認証の中でも、森林の管理者が直接かかわる、FM認証の取得方法についても記載します。

森林認証とは?

森林認証とは、第三機関の管理を通じ、持続可能な森林経営を支援する仕組みです。

消費者が森林認証を取得している木材・木材加工品を選択することで、持続可能な森林経営を支援することにつながります。

主な森林認証は、国際的な認証だとFSC認証PEFC認証、日本の認証だとSGEC認証があります。

森林認証の目的

日本では近年の森林面積は減少していませんが、世界全体では毎年森林面積が減少しています。

人々は、直接または間接的に森林資源に依存しているので、森林減少は環境や社会にに深刻な影響をもたらします。

森林の減少は、動植物の住処の減少、気候変動、災害の増加、薬用植物の損失などにつながります。

単純な面積の減少だけでなく、森林の質の低下も問題です。

例えば日本では適切な管理がなされていない人工林が多くあります。

林床が暗くなって生物多様性が失われたり、CO2の吸収量が減少するなどのマイナスな効果があります。

これらの問題を解決するため、貴重な森林を守り、活用するために森林認証制度があります。

代表的な森林認証

FSC認証

FSCは国際的な森林認証制度で、世界共通の1つの規格に基づき審査しています。

FSCの規格は森林認証の中でも最も高い基準を設けており、WWF(世界自然保護基金)からも支持されています。

森林の機能評価や環境への配慮といった基準だけでなく、労働者の権利や先住民の権利に関する基準も設けていることが特長です。

2024年2月現在、89か国の森林で認証されいます。

認証森林面積は約1億6千ヘクタールで、世界の森林面積の4%にあたります(2024年2月時点)。

(参考:FSCコネクト「事実と数字」

PEFC認証

PEFC認証は、1999年に発足した国際的な森林認証です。

各国の森林認証制度間の相互承認をしていることが特長です。

評価基準は、森林の持つ機能・価値の維持や増進に着目しています。

2023年9月時点で55か国が加盟しています。

認証森林面積は約2億9千ヘクタールと、世界の森林面積の7%にあたります(2023年9月時点)。

(参考:PEFC認証林・CoC認証 国別認証実績表(2023年9月末現在)

SGEC認証

SGECは2002年に発足した、日本独自の森林認証制度です。

2016年にPEFCより相互承認が認められました。

SGEC認証を取得すると、PEFC認証も取得したことになります。

2024年1月11日時点で、490団体が認証を取得しています。

(参考:SGEC/PEFC認証企業のリスト・詳細情報

FM認証とCoC認証

FSC認証、PEFC認証、SGEC認証は、すべて「FM認証」と「CoC認証」の2段階に分かれるシステムを採用しています。

1つずつ説明します。

FM認証

FM認証はForest Management(森林管理)認証の略で、森林の管理段階で受ける認証です。

森林の所有者・管理者が認証の対象です。

CoC認証

CoC認証はChain of Custody(管理の連鎖)認証の略で、加工・流通段階で受ける認証です。

伐採業者、加工業者、製造業者、流通業者、印刷業者、小売業者などが認証の対象です。

せっかくFM認証を受けた森林から伐採された木材でも、流通の管理がしっかりしていないと意味がありません。

FM認証~CoC認証のサプライチェーンがつながることで、はじめて森林認証製品として販売することができます。

FM認証を取得するには

どんな森林が認証を受けられるか

対象

FM認証の対象となるのは森林管理に関わる方です。

具体的には、森林所有者、森林組合、自治体、社有林を保有している企業などです。

森林の面積に制限はありません。

基準

FSC認証、SGEC/PESC認証ともに細かく認証の基準が設けられています。

ただ、自分の管理する森林が基準に当てはまるかというのはちょっと読んだだけでは判断できないと思います。

まずは認証機関や所在する自治体に問い合わせてみるのがおすすめです。

FSCの認証機関はこちら

SGEC/PESCの認証機関はこちら

FM認証取得のステップ

ここからは、FM認証の取得方法を林野庁「森林認証取得ガイド【森林所有者向け】」に基づいて説明します。

1.計画

まず、単独で認証を取得するのか、グループ認証を取得するのかを決めます。

グループ認証だと1団体(1人)あたりの認証審査費用が安価に抑えられます。

グループ認証を取得する場合、地域内で森林認証取得に向けた合意形成を行います。

その後、複数の認証機関に見積もりを依頼し、認証機関を選んで契約をします。

2.審査の準備

審査に必要な書類の準備、体制づくりを行います。

自治体やコンサルタントから支援を受けながら、認証の原則と基準に対応した書類をそろえましょう。

必要となる資料の一例をあげます。

  • 森林経営計画
  • 生物多様性の保全を考慮した施業指針
  • 従業員教育計画
  • 作業路解説マニュアル
  • 地域代表者・森林所有者との合意書
  • 安全衛生及び健康管理マニュアル
  • モニタリング実施要領

3.審査

認証機関による事前審査を経て、本審査へ進みます。

事前審査では、管理システムの確認や意見聴取が行われます。

本審査では、現場調査、従業員へのインタビュー、利害関係者への聞き込みなどが行われます。

4.認証発行

本審査の結果、基準を満たすと判断された場合に認証機関より証明(書)が発行されます。

認証を取得した後は、川下事業者と連携して認証材を販売する体制づくりを行いましょう。

5.年次審査・更新審査

認証は5年間有効ですが、認証機関による年次審査を行い基準を満たしているかチェックします。

FM認証を取得するメリット・デメリット

森林認証を取得するメリットとデメリットを説明します。

FM認証取得のメリット

ビジネスチャンスの拡大

CoC認証を取得している業者は、FM認証を取得している森林から原料を仕入れなければ認証材としてマークを使えません。

FM認証を取得すればCoC認証を取得している業者から選ばれやすくなり、ビジネスチャンスの拡大につながります。

また、欧米では認証材を扱うことを前提とする動きもあります。

ウッドショックや円安の影響で海外への輸出が注目される今、森林認証を取得することは大きなメリットがあります。

価格の向上

FM認証を取得することで、木材の価値が上がります。

場合によっては通常の木材よりも高く販売できます。

森林経営の適正化

認証を取得することは、森林経営を見直す機会になります。

例えば従業員への待遇がよくなることで志気の向上や、離職防止につながります。

また、「最も美しい森林は、また最も収穫多き森林である」とう格言があります。

これは19世紀のドイツ人林学者アルフレート・メーラーの言葉です。

森林認証を取得できるようなきちんと管理された森林は、生産性の向上にもつながるはずです。

FM認証取得のデメリット

取得にコストがかかる

森林認証を取得するには費用がかかります。

森林の状態によってかかる費用が違うため公開されていません。

一つの例として、日本で初めてFSC認証を取得された速水林業様は以下のように記載されています。

ちなみに速水林業が認証取得にあたって負担した額は、総額400万円以上でした。現在も、1000haで200万円程度の費用が必要です(補助金が出た場合を除く)。

出典:速水林業様ホームページ https://www.re-forest.com/hayami/fsc/after.html

認証の対象面積が小さければ、もう少しコストはおさえられるでしょう。

なかなか大きな出費となりますが、多くの自治体が森林認証にかかる費用の補助金を出しています。

費用の半分、上限は50万円~100万円程度にしている自治体が多いようです。

一度所在する自治体に問い合わせてみましょう。

手間がかかる

認証取得までには、1年~1年半ほどの時間がかかります。

認証を取得した後も、毎年の年次審査の準備などがあります。

まとめ

  • 森林認証とは、第三機関の管理を通じ、持続可能な森林経営を支援する仕組み
  • 代表的な森林認証制度は、FSC認証、PEFC認証、SGEC認証がある
  • 森林認証制度は森林の管理者が取得するFM認証と、加工・流通関係者が取得するCoC認証の2段階にわかれている
  • 認証取得にはコストがかかるが補助金も利用できるので、一度自治体や認証機関に相談してみるのがおススメ

森林認証制度についてご理解いただけたでしょうか。

森林認証は消費者の選択により成り立つ制度です。

マークのついている商品を積極的に選択しましょう。

また、森林関係者の方には認証取得について考えるきっかけとなりましたら幸いです。

参考資料

FSC® Japan.「世界の森林問題とFSC」.Forest Stewardship Council.日付不明.https://jp.fsc.org/jp-ja/Worlds_challenge_and_FSC(2024.2.8取得)

一般社団法人緑の循環認証会議(SGEC).「PEFC認証林・CoC認証 国別認証実績表(2023年9月末現在)」.2023.9.森林認証SGEC/PEFCジャパン.https://sgec-pefcj.jp/pefcとは/国別認証実績/(2024.2.8取得)

一般社団法人 緑の循環認証会議 SGEC/PEFCジャパン.「森林認証制度の仕組み」.2023.7.森林認証SGEC/PEFCジャパン.https://sgec-pefcj.jp/wp-content/uploads/2023/08/小冊子_compressed.pdf(2023.12.12取得)

森林管理協議会® – FSC® F000100.「事実と事実数字」.2023.12.12.FSCコネクト.https://connect.fsc.org/impact/facts-figures(2024.2.8取得)

林野庁.「森林認証取得ガイド【森林所有者向け】」.2016.https://www.rinya.maff.go.jp/j/seibi/ninsyou/pdf/ninshou_guide_shoyuusha.pdf(2023.12.13取得)

アミタホールディングス株式会社.「FSC®/PEFC FM認証|森林管理に関わる方へ」.AMITA社会デザイン事業.日付不明.https://www.amita-net.co.jp/solution-operation/certification/forest/fm.html(2013.12.14取得

速水林業.「FSC認証を取得して」.速水林業.日付不明.https://www.re-forest.com/hayami/fsc/after.html(2023.12.14取得)