近年熊と遭遇するニュースが多く流れるようになりました。
山に行く機会があるといった場合には、何か対策をしたいと思っている方も多いでしょう。
本記事では、熊との遭遇リスクやその生態、林業従事者の熊対策を紹介します。
どのようなパターンで遭遇してしまうのかも解説するため、熊対策を知りたいと思っている方はぜひ、参考にしてください。
目次
熊との遭遇リスクについて
近年、熊と人が遭遇するリスクが高まっています。
環境省の調査によると、令和5年のツキノワグマの出没件数においては、平成21年度以降の同時期と比べて過去最多を記録したとのことです。
出典:環境省「クマ類の生息状況、被害状況等について」
これは熊が人の生活圏に近づいてきていることを表しています。
山林だけが遭遇場所なのではなく、里山に近いところでも見かけられます。
熊と遭遇すると、時と場合によっては人身事故につながり、非常に危険です。
出典:環境省「クマ類の生息状況、被害状況等について」
人ごとではないと捉え、対応策を知っておくことが大切です。
熊の生態
日本の熊の種類には、北海道に生息する「ヒグマ」と、本州と四国に生息する「ツキノワグマ」がいます。
どちらも慎重な性格をしているため、基本的には人の気配を察知すると離れる傾向にあります。
ただし、熊も人もお互いを察知できず、偶然遭遇してしまう場合は要注意です。
驚いた熊が攻撃してきたり、子熊を守るために襲ってきたりするため、熊とは遭遇しないことが基本です。
熊は雑食性であるため、幅広いものを食べます。
農作物を求めて里山に降り、しばらく居座るケースも見られます。
熊と遭遇する3つのパターン
ここでは、熊と遭遇する3つのパターンを紹介します。
遭遇するパターンを極力避けて、熊とはなるべく会わないようにしましょう。
1人で山菜採りに出かけたとき
1人で山菜採りに出かけたときに熊と遭遇し、被害にあうパターンが最も多いとされています。
そのため、山菜が取れる時期である4〜5月や9〜11月頃は、1人で山菜採りに出かけないようにしましょう。
山菜採りは、採取につい夢中になってしまい、周囲の警戒を怠りがちです。
熊も山菜が好物であるため、お互いに気づかずに遭遇してしまうことがあります。
山林において山菜採りは非常に魅力的なものではありますが、十分に注意が必要です。
熊が里に降りてきたとき
熊が里に降りてきて、遭遇してしまうパターンも多く見られます。
とくに9〜12月に増加傾向で、これは熊の食べるものが山林に不足してくる時期と一致します。
つまり、熊が食べるものを欲して生活圏内に降りてきたときに、人と遭遇してしまうということです。
熊がよく食べるとされる「ブナ科」の実、いわゆるどんぐりがどの程度山にあるかによっても、降りてくる可能性は変わります。
林野庁では、その年のブナの開花状況と結実の予測を発表しています。
参考:東北森林管理局「ブナ開花・結実調査」
ブナの実が大凶作であると、熊が里に降りてくるとされるため、山林に向かう際は情報収集を欠かさないようにしましょう。
子熊が親熊とはぐれたとき
親熊は子熊を危険から守るために、人を襲ってきます。
普段は子熊と親熊は一緒にいるため、人と遭遇することは少ないでしょう。
しかし、なんらかの理由で子熊が親熊とはぐれてしまったときは要注意です。
子熊を探して親熊が徘徊しています。
メンタルも不安定になっていて、もし遭遇してしまった場合は襲われる可能性が高いでしょう。
小さい熊を見かけた際は、近くに親熊がいるものと思い、細心の注意を払いその場を離れましょう。
林業従事者の熊対策
ここでは、林業従事者の熊対策について紹介していきます。
1人で行動しない
基本ですが1人で行動しないことが大切で、その理由は以下の通りです。
- 何かあった際に助けを呼びに行ける
- 1人よりも2人の方が気配を大きくできる
とくに、1人が助けに行けることで、もう1人が襲われたときの生存率を上げられます。
もし1人で襲われて動けないほどのダメージを負ってしまったら、助かることは難しいでしょう。
林業を行う事業体によっては、山林での行動は2人1組としているところもあります。山林では1人にならず、2人以上で行動することを心がけましょう。
熊対策アイテムを装備する
熊対策のアイテムを使うのは、熊との遭遇を回避するために有効です。
人が大きな音を立てて熊に人の存在を知らせるのが基本とされ、以下のようなアイテムがあります。
- 熊よけ鈴:鈴の音が響き遠くまで届く
- ベアホーン:大きな音が遠くまで届く
熊は人の気配を察すると離れようとするため、音を出すことは有効的です。
おススメの熊よけ鈴は西山商会さんの「南部熊よけ鈴 2コ付き」です。私が在籍中の森林組合でも使用しています。ベアホーンはmont-bellの商品などがあります。
もしも遭遇してしまった場合を考え、熊撃退用スプレーを携帯するのも良いでしょう。
林業従事者が山林を調査する際などは、熊よけ鈴を装備したうえに熊撃退用スプレーを携えるなど、準備を怠りません。
もしもに備える気持ちが大切です。
まとめ
日本に生息する熊であるヒグマとツキノワグマは、基本的に慎重な性格をしています。
そのため、人の気配を察知すると離れていこうとしますが、ばったり遭遇した場合は襲われてしまうこともあります。
人の生活圏内に近づいてきているのが近年の熊です。
普通に生活していても遭遇する可能性は否定できないため、1人で行動しないなどの対策が大切です。
もしも山林に出向く際は、林業従事者も活用している「熊よけ鈴」や「熊撃退スプレー」などを準備しましょう。
なお、熊の基本情報や冬眠についての詳しい情報は、「クマの冬眠はいつからいつまで?驚くべきメカニズムを紹介」をご参照ください。
この記事が熊対策の一助となれば幸いです。
参考資料
環境省「クマ類の生息状況、被害状況等について」.https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/kuma-situation.pdf(2024年8月11日取得)
東北森林管理局「ブナ開花・結実調査」.https://www.rinya.maff.go.jp/tohoku/sidou/buna.html(2024年8月11日取得)