広葉樹の用途は多種多様で、様々な活用事例があります。
住宅に使われる木材の多くは針葉樹であり、広葉樹は木材としては比較的なじみの薄い樹木ですが、「広葉樹ってどんな活用方法があるの?」「どんな樹種が活用されているの?」などと思われている方もいるでしょう。
本記事では、広葉樹の活用方法や代表的な樹種、活用事例を紹介します。
広葉樹の活用方法について、ぜひ参考にしてみてください。
目次
広葉樹の活用とは
広葉樹の活用とは、パルプ材やチップ材だけでなく建材や木工、薪など様々な方法で広葉樹を利用することを指します。
以前は家庭における燃料といえば「炭」や「薪」でした。
炭や薪は、主に里山の広葉樹を伐採し作られます。
炭や薪があまり使われなくなった現在、里山の広葉樹は安価なチップ材などとして利用されるか、採算が取れずそのまま放置されているのが現状です。
そこで近年では、なにか広葉樹を利用する方法はないかが模索されていて、その活動が「広葉樹の活用」につながります。
再生可能な「広葉樹」という資源を有効活用することこそ、循環型社会には必要といえるでしょう。
一般的な広葉樹の販路といえば製材所や市場などになります。
広葉樹の活用を進める場合、広葉樹の価値を上げるためにも販路の拡大が必要です。
林業で扱われる代表的な広葉樹とその用途
ここでは、林業で扱われる代表的な広葉樹として以下の樹木を紹介します。
- ナラ
- ブナ
- クリ
- サクラ
用途についても解説しますので、参考にしてみてください。
ナラ
ナラは「コナラ」と「ミズナラ」に分かれていて、とくにコナラは薪や炭として有用な材です。
コナラはブナ科の広葉樹で、樹高は約20mにも及びます。
雑木林といえばコナラ林といえるほど、地域で使われてきた広葉樹です。
ひと昔前の里山ではコナラの山が多数あり、薪や炭として数多く利用されてきました。
活用方法としては、従来より利用されてきた薪・炭、シイタケ原木に加え、どんぐりや葉っぱを使いワークショップなどで飾りを作ったり、子どもの工作用品として利用したりもできます。
工作用品として人気があり、ネットのフリマサイトなどでも盛んに取り引きされています。
近年のキャンプブームも影響し、キャンプ用の薪がネットショップやふるさと納税でも多数出品されています。
現在の里山のナラ林では、ナラ枯れの被害で枯木が多く見られます。倒木による事故が起きる可能性もあるため、ナラ枯れが発生していると思われる林には入らないようにしましょう。
ブナ
樹肌が白く美しいブナは、樹高30mにも達する大型の落葉広葉樹です。
ナラと同様にどんぐりが採取可能で、ブナに実るどんぐりの豊作・凶作は熊が出没する目安にもなっています。
戦後の復興のため、多くのブナ林が伐採されました。
伐採後は材としても活用しやすい針葉樹へと樹種変換が行われ、現在ブナ林は貴重なものとなっています。
ブナ林の活用方法の1つが「森林浴体験」です。
ブナ林を巡るツアーでは、ガイド付きで森の散策が楽しめます。
その他の用途として、硬く火持ちが良いため薪にも使われたり、耐久性の高さから家具や木製のおもちゃなどにも使用されたりしています。
クリ
夏に大きく垂れる花を咲かせるクリは、里山を代表する広葉樹です。
秋にはクリの収穫も楽しめる、雑木林ではよく見られる樹木です。
クリは水に強く腐りにくいため、建物の土台や柱などに用いられています。
使用例として有名なのは、青森県にある「三内丸山遺跡」で、クリの木を使った柱が確認されています。
明治以降は線路の枕木に使用された実績があり、クリは日本の近代化に大きく貢献したといえるでしょう。
また、木目も美しいため一枚板としても人気があります。
サクラ
春の華麗な開花で有名なサクラは、雑木林でもよく見かけられます。
ナラなどと比べると数は少ないものの、春先には山を桃色に彩ります。
主な用途としては、香りを目的としたくん製用のチップや、皮を用いた樺(かば)細工などがあげられます。
また、サクラはキノコの種駒植菌用の原木に適していて、とくになめことの相性が良いことで知られています。
広葉樹の活用事例
ここでは、広葉樹の活用事例として、「岐阜県飛騨市」と「北海道池田町」の取り組みを紹介します。
岐阜県飛騨市の広葉樹活用事例
岐阜県にある飛騨(ひだ)市では、「広葉樹のまちづくり」を目指した取り組みが行われています。
H28年に実施した調査によると、飛騨市内の広葉樹の平均胸高直径は26cm程度と小径木が多く、家具などには不向きであることが判明しました。
小径木の広葉樹にいかに付加価値をつけるかが飛騨市の課題となり、そこで取り組んだ一例に、「FabCafeHida」があります。
カフェでありつつも、木製品の企画や開発のほか、滞在から宿泊、イベント開催もできるクリエイティブな空間です。
小径広葉樹の活用に国内外のクリエイターが交わることで、飛騨市の広葉樹は新たな価値を見いだしました。
新たな課題を見つけてはさらなるアクションプランにつなげるその姿勢は、今後の広葉樹活用に大きな期待ができます。
現在の飛騨市の活動内容に興味のある方は、「飛騨市広葉樹のまちづくり」をご覧になってください。
北海道池田町の広葉樹活用事例
北海道にある池田町では、天然林の経済的価値を高めるために、様々な取り組みを行ってきました。
当初は広葉樹原木の販売会を行っていましたが、活動をする中で製材用や製炭用の規格に満たない材に着目しました。
広葉樹伐採の採算を合わせていくためには、高価格の丸太を出荷させる必要があります。
そこで取り組んだのが、以下の事例です。
- シラカンバの事業者への直接販売:クラフトブランド「ホワイトバーチ✕イケダ」の立ち上げ
- 楽器製作:ウッドブロック作成のワークショップを開催
- 単一樹種のチップ生産:樹種の混ざりがない希少価値の高いチップ
どの取り組みも地元で取れた広葉樹を材料としていて、池田町の天然林の付加価値を高める活用事例となっています。
まとめ
近年、広葉樹は放置され、その活用方法が課題となっています。
里山に生育する各種の広葉樹の用途は多種多様で、木材としての価値だけではなく、レクリエーションの場所としても有用とされています。
岐阜県飛騨市や北海道の池田町は、広葉樹の活用に積極的に取り組んでいる自治体です。
広葉樹の活用に関して成果をあげているため、興味のある方は取り組みを参考にしてみてはいかがでしょうか。
この記事が、広葉樹の活用方法を知るための参考になれば幸いです。
参考資料
農林水産省.「知って得する「栗」のこと」2019年10月.https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1910/spe2_02.html(2024年7月9日取得)
岐阜県飛騨市.飛騨市の森を活かした地方創生.2021年3月11日.satoyamakouyoujyu-33.pdf (maff.go.jp)(2024年7月9日取得)
北海道池田町.広葉樹の積極的な活用.https://www.town.hokkaido-ikeda.lg.jp/kanko-sangyo/ringyo/naturalforest/katsuyou.html(2024年7月9日取得)