木曽ヒノキは建築材として伊勢神宮にも使われている、日本を代表する樹木の1つです。
日本三大美林にも数えられており、長野県の木曽地方の森林を古くから守ってきました。
本記事では、木曽ヒノキの特徴とその使用例を紹介します。
ぜひ最後までご覧ください。
目次
木曽ヒノキとは
木曽ヒノキには、以下のような特徴があります。
- 長野県にある天然のヒノキ
- 日本三大美林の1つ
- 木曽五木の1つ
- 条件の厳しい環境下で生育
ここでは、それぞれの特徴について詳しく紹介していきます。
長野県にある天然のヒノキ
一般に木曽ヒノキと呼ばれる場合には、長野県にある天然のヒノキを指します。
樹齢が700年になるものもあり、胸高直径(樹木における胸の高さの直径)は120cmにも及びます。
木曽ヒノキには以下の特徴があります。
- 真っすぐに育つ
- 耐水・耐湿性がある
- 強度がある
- 抗菌作用がある
- 年輪が美しい
一般的なヒノキにも当てはまる特長と言えますが、木曽ヒノキはゆっくりと成長する分これらの特徴がより顕著です。
材としても良好で、日本最古の木造建築物である「法隆寺五重塔」にも使われています。
1959年・1961年の大型台風の襲来や風害などにより、木曽ヒノキの資源量は減少しています。
確実に更新していくために、現在は皆伐からの人工植栽を取り入れており、世代交代が図られているところです。
ヒノキの名前の由来
ヒノキの名前の由来は「火の木」で、火起こしに使われていたことから取られたとされています。また、古代語で「匕」は「良い」という意味があるため、「良い木」とする説もあるようです。
日本三大美林の1つ
秋田の「秋田スギ」や青森県の「青森ヒバ」と並んで、木曽ヒノキは日本三大美林に数えられています。
日本最大級の天然林であり、その多くは、江戸時代に尾張藩が制定した森林保護政策によって守られてきました。
木曽ヒノキを鑑賞するのに代表的な場所が赤沢自然休養林で、樹齢300年を超えるヒノキの森が見られます。
歩道があるためいくつかのコースを散策でき、森林浴やヒノキの壮大さを楽しめるでしょう。
他の三大美林については、以下の記事を参考にしてください。
木曽五木の1つ
木曽ヒノキは「木曽五木(きそごぼく)」の1つです。
木曽五木とは、長野県木曽地方を産地とする次の5種の常緑針葉樹を指します。
- ヒノキ
- サワラ
- コウヤマキ
- ネズコ
- アスナロ
江戸時代には、約100年にわたる伐採が続いた結果、木曽の森林資源は徐々に減っていきました。
尾張藩は木曽の森を守るために、「停止木制度(ちょうじぼくせいど)」という制度を設けます。
この制度は木曽五木の伐採を禁じるものであり、破ったものには木一本につき首1つという厳しい罰が科されました。
条件の厳しい環境下で生育
木曽ヒノキが生育する長野県木曽地方の山地は、急峻な斜面と深い渓谷を特徴とします。
木曽ヒノキの森林が生育している主な標高は、600〜1,500mほどです。
厳しい環境下で育つため、木曽ヒノキはゆっくりと成長します。
ほかの地域のヒノキは、40年ほどで木材として利用可能です。
しかし、木曽ヒノキが木材として使えるまでに育つ期間は70年ほどです。
それだけ厳しい環境下で木曽ヒノキは育っているといえるでしょう。
ゆっくりと成長する分、緻密で美しくなるのが木曽ヒノキの木目です。
冬時期には降雪も見込まれ、地面の乾燥を防いだり若木を寒害(寒さによる植物の被害)から守ったりしてくれます。
偶然重なった自然環境の元、木曽ヒノキは成立しています。
木曽ヒノキの使用例
木曽ヒノキの利用例には、以下のものが挙げられます。
- 神社・仏閣用建築材
- 木工品
- 芳香剤
それぞれの使用例について、詳しく紹介します。
神社・仏閣用建築材
木曽ヒノキを用いた材は耐久力があるため、神社や仏閣用の建築材として使われています。
世界最古の木造建築物として知られる「奈良県の法隆寺」や「三重県の伊勢神宮」が、木曽ヒノキを用いた代表的な建物です。
現存していることを考えても、その耐久性の高さが証明されています。
伊勢神宮で20年に1度行われる「遷宮(せんぐう:伊勢神宮内の建物を建て替える儀式)」の際には、およそ1万本のヒノキが使われるとされています。
その他、木曽ヒノキが使われている有名な建物は以下の通りです。
- 江戸城
- 駿府城(すんぷじょう)
- 明治神宮
- 湯島神宮
全国の神社・仏閣の建築用材として使われているのが木曽ヒノキです。
木工品
木曽ヒノキは色合いや香り、木目に優れているため、多くの木工品が作られています。
代表的な木工品は以下の通りです。
- 樽(たる)
- 桶(おけ)
- 枡(ます)
- 風呂の椅子
木曽ヒノキの木材は、水拭きして手入れをすることで、長くヒノキの白さを保てる特徴があります。
古さを感じさせない特徴も、木曽ヒノキの魅力の1つです。
芳香剤
木曽ヒノキから得られる芳香は、次のような商品に生まれ変わります。
- 木曽ヒノキの精油:アロマテラピー用
- ヒノキスプレー:ルームフレグランスとして使用
- 木曽ヒノキの香水:身だしなみ用
この他にも木曽ヒノキの抽出水や入浴剤があり、お風呂でも香りを楽しめます。
昔からヒノキ風呂は有名ですが、手軽に楽しむのであれば入浴剤などからはじめてみるのもよいでしょう。
まとめ
木曽ヒノキは長野県にある天然のヒノキを指していて、秋田県の「秋田スギ」や青森県の「青森ヒバ」と並んで、日本三大美林に数えられています。
また、江戸時代には森林の保護を目的として伐採を禁じられた「木曽五木」にも選ばれていて、木曽の森を形成しています。
長野県の厳しい環境で育つため、ゆっくりと成長し、目の細かい良質の材が生産可能です。
材の多くは神社や仏閣の建築用材として使われ、奈良県の法隆寺や、三重県の伊勢神宮などはその代表格です。
他にも木曽ヒノキ材の特徴を生かした木工品や芳香剤など、様々な用途で使われています。
長野県を訪れた際は、木曽ヒノキの森林が鑑賞できる赤沢自然休養林に足を運んでみてはいかがでしょうか。
この記事が木曽ヒノキを知るための参考になれば幸いです。
参考資料
森林総合研究所「自然探訪2018年2月木曽ヒノキ」.2018.02.01. https://www.ffpri.affrc.go.jp/snap/2018/2-kisohinoki.html(2024年7月7日取得)
中部森林管理局「木曽五木」. https://www.rinya.maff.go.jp/chubu/kiso/morigatari/kisogoboku.html(2024年7月7日取得)
上松町観光サイト「赤沢自然休養林」. https://kiso-hinoki.jp/colibri-wp/tourist/akasawa/(2024年7月7日取得)