住友林業株式会社(社長:光吉 敏郎、本社:東京都千代田区)は3月26日、木(もく)被覆(ひふく)角形(かくがた)鋼管柱(こうかんはしら)の1時間耐火構造の国土交通大臣認定を取得しました。角形鋼管柱として国内で初めて、木材のみの被覆で耐火性能を達成しています。木被覆部分は現場で後付けも可能で、工事中の汚れや傷を防げます。鉄骨造の構造設計で汎用性の高い角形鋼管柱を木質化してオフィスや教育施設等の中大規模建築で木質感豊かな建築空間を実現し、木材の利用を促進します。
特長
(1)木材のみの被覆で環境負荷を軽減
カラマツ材とスギ材の燃え方の違いを活かした二層構成により、カラマツ材の燃え止まり効果を高め、木材のみの被覆で耐火性能を実現しました。従来の耐火部材では、燃え止まり性能を担保するために石膏ボードなどの無機材料の併用が一般的でした。本部材は木材のみの被覆構成のため、炭素固定量が大きく増え、部材製造時のGHG(温室効果ガス)排出量が減り、環境負荷低減に貢献します。
(2)現場施工を可能にし、コストを削減
本部材では二次接着仕様と被覆留付仕様を開発しました。先行開発した二次接着仕様では、鋼材周囲で木被覆材同士を接着させる必要があります。鉄骨工場で製造した鋼材が、集成材工場を経由して現場に納品される必要があるため、運搬費のコストアップや工程の長期化が課題でした。被覆留付仕様は木被覆材をL形に分割製造して直接現場に搬入するので、ビスと木栓を用いた現場組み立てが可能です。鉄骨建方工事や床スラブ打設終了後に木被覆材を取り付けできるため、鋼材の溶接作業や雨濡れによる柱汚れ、傷を防ぎやすくなります。
背景
脱炭素社会の実現に向け木材に注目が集まるなか、建築分野では2021年に「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律(都市の木造化推進法)」が施行され、建築物全般で木材の利用が促進されています。鉄骨造やRC造の中大規模建築の一部を木造化・木質化する事例も増えており、木被覆した耐火鉄骨柱・梁のニーズは高まっています。構造設計がしやすく汎用性の高い角形鋼管の耐火部材で環境負荷が少なく意匠性にも優れる木材を活用した建築物を実現します。
今後の見通し
本部材を積極的に非住宅建築物に採用し木材利用を促進します。さらに、木被覆鉄骨部材の1.5時間耐火構造の大臣認定取得を目指し、鉄骨造やRC造の木質化に貢献していきます。
住友林業グループは森林経営から木材建材の製造・流通、戸建住宅・中大規模木造建築の請負や不動産開発、木質バイオマス発電まで「木」を軸とした事業をグローバルに展開しています。2030年までの長期ビジョン「Mission TREEING 2030」では住友林業のバリューチェーン「ウッドサイクル」を回すことで、森林のCO2吸収量を増やし、木造建築の普及で炭素を長期にわたり固定し、自社のみならず社会全体の脱炭素に貢献することを目指しています。今後も森と木の価値を最大限に活かす研究開発を推進していきます。
関連記事