林業のシカ被害をどうにかしたい!シカ対策方法・グッズを紹介
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林業のシカ被害をどうにかしたい!シカ対策方法・グッズを紹介

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林業による獣害被害のなかでも、特に大きな割合を占めるのがシカによる被害です。

度重なる被害に頭を抱えている森林保有者の方、林業従事者の方も多いのではないでしょうか。

林業におけるシカ対策は、シカから樹木を守る対策と、シカ自体を減らす対策があります。

この記事では、シカから樹木を守る対策の方法と対策グッズを紹介します。

シカ被害の現状

シカによる被害は林業における獣害の7割を占め、全国の森林の約3割でシカによる被害が確認されています。

(参照:林野庁HP https://www.rinya.maff.go.jp/j/hogo/higai/tyouju.html

主要な野生鳥獣による森林被害面積(令和4年度)
出典:林野庁HP

シカは日本全国に生息します。

非常に繁殖力が強く、捕獲しないと4~5年で個体数は倍増してしまいます。

被害の種類は主に以下の3つです。

  • 植栽木への食害
  • 下層植生への食害
  • 壮齢木への樹皮剥ぎ・角こすり

食害が激しい区域では、土壌流出など森林の機能自体にまで影響を及ぼす場合があります。

このような状態になる前に、早めの対策が必要です。

どのような対策方法があるか、具体的に見ていきましょう。

防護柵

防護柵による対策は、施業する区域を柵・ネットで囲い、シカの侵入を防ぐ方法です。

もっともメジャーなシカ対策であり、植栽面積が広い場合に特に有効です。

防護柵による対策のポイントは以下の3点です。

  • ネットを噛み切られないようにする
  • 飛び越えや隙間からの侵入を防ぐ
  • コスト削減に立木を活用する

1つずつ説明します。

ネットを嚙み切られないようにする

ネット噛み切り被害は、地表から高さ1m以内に集中しているという調査結果があります。

(参照:令和元年度 国有林野事業業務研究発表会 発表課題「シカ防護柵設置方法の工夫~低コストかつメンテナンスの省力化を目指して~」

ネット下部に防護ネットを重ね張りすると対策になります。

重ね張りする防護ネットは、目が細かいもの(16mm程度)を選ぶのがおススメです。

もしくはステンレス線や特殊な繊維が入っているネットを選んでもよいでしょう。

ナカダ産業株式会社「まったくんUC/SIDシリーズ」

ステンレス線や強度の高い繊維材料イザナスを使用したネットです。

複数の目合い・サイズがあるので状況に応じて使い分けができます。

商品詳細:https://www.nakadanet.co.jp/product/deer_prevention.html

飛び越えや隙間からの侵入を防ぐ

シカがネットを乗り越えたりすり抜けてしまう場合もあります。

この対策としては、1.8m以上のネットを利用し、脇や地面との間に隙間をつくらないことが大切です。

またネットを斜めに長く張り、シカが侵入しづらくさせる方法もあります。

大同商事株式会社「さいねっと」

ネットがシカの体に接触し、足にも絡みやすくすることで侵入を防止するネットです。

シンプルな資材でコストの削減にも効果的です。

商品詳細:http://www.daido-syo.co.jp/works/sai-net/

コスト削減に立木を活用する

コスト削減には支柱として立木を活用することが有効です。

FRP製支柱と立木支柱を3:7の割合で設置した場合、すべてFRP製支柱を利用する場合に比べ57%資材費を削減できるという検証結果が出ています。

さらに重量も50%削減できるため運搬コストの軽減にもつながります。

(参照:令和元年度 国有林野事業業務研究発表会 発表課題「シカ防護柵設置方法の工夫~低コストかつメンテナンスの省力化を目指して~」

ツリーシェルター

ツリーシェルターは、植栽した苗木を筒状の資材で一本ずつ保護する方法です。

柵が設置しにくい急傾斜地や、植栽面積がそれほど広くない場合にメリットがあります。

また、「低コスト再造林」を実現するツールとしても注目されています。

風や初期成長を妨げるほどの強光から苗木を守り、下草との誤伐から苗木保護できるので下草刈りを省略する施業も可能になるからです。

代表的なツリーシェルターを2つ紹介します。

ヘキサチューブ

ヘキサチューブはポリプロピレンなどでできた6角形の筒状の保護資材です。

優れた耐久性に加え、苗の成長への影響も低いという研究結果が出ています。(参照:森 一生・高橋昌隆「シカ林業被害防護チューブに関する報告」(2000年))

株式会社GCJ「ヘキサチューブ」

高さ・色・素材ごとに様々な種類の商品があります。

植栽する樹種や環境に応じて使い分けができます。

商品詳細:https://www.gcj-labo.jp/hexatube.html

サプリガード

サプリガードは、網状のシートを筒状に丸めて設置する防護資材です。

かさばらないこと、取り付けが簡単なことが特長です。

大一工業株式会社「苗木用サプリガード HP-22/HP-6」

UV剤入りで耐候性に優れ、苗木の大きさに合わせてネットをカットできることが特長です。

通気性が良いので内部が蒸れる心配もありません。

商品詳細:https://nara-daiichikogyo.co.jp/product/product05.html

テープ

植栽木がある程度大きくなったら、樹皮剥ぎや角こすり被害への対策が必要です。

おおよそ植栽した樹木が150cmを超えると食害の被害の可能性は下がるので、ツリーシェルターや柵による食害対策から樹皮剝ぎへの対策に切り替えます。

テープ巻きは効果の高い対策です。

シカだけでなくクマの樹皮剥ぎ対策としても効果があります。

ポリエチレンテープの他にも、金網やトタン、枝条を巻き付ける方法もあります。

信濃化学工業株式会社「ウィリーGP」

樹木に巻き付ける剥皮防止資材です。

簡単に設置でき、生分解製品のため撤去も不要であり管理の手間がかからないことが特長です。

商品詳細:https://www.shinano-kagaku.co.jp/environment/product_category3/

忌避剤

忌避剤(きひざい)によるシカ対策は、被害がまだ初期段階である場合に有効です。

具体的には、林道などに若干の食痕が見られる程度の被害の段階です。

大同商事株式会社「コニファー水和剤」

コニファー水和剤は噴射器で散布する忌避剤です。

シカの他、ノウサギ・カモシカへの効果も確認されています。

果樹用殺菌剤としても長年使用されてきた有効成分を使っているため、安全性が高いことも特徴です。

商品詳細:http://www.daido-syo.co.jp/works/konifa/

ドローンの活用

忌避剤の散布は、噴射器を林内で持ち歩く(もしくは背負う)必要があり労力が大きい作業です。

現在はドローンによる忌避剤の散布も検討されています。

ドローンによる散布は「忌避剤のロスが非常に多い」「風の影響を受け機体の安定が難しい」という課題があります。

(参照:岐阜県森林研究所「令和3年度 業務報告」

忌避剤の散布に適したドローンの研究・開発が進み、実用化されることが期待されます。

まとめ

シカ対策は、被害状況や環境に応じて最適な方法を選ぶことが大切です。

簡単にまとめると、以下の対策に分かれます。

  • 防護柵による対策がメジャーな方法
  • 急傾斜地ではツリーシェルターを活用する
  • 植栽木がある程度大きくなったらテープで樹皮剝ぎ・角こすりを防ぐ
  • 被害が初期段階の場合は忌避剤による対策も有効

これらの対策は「対症療法」ではありますが、有効な対策であることが確認されています。

根本的な解決に向けては、シカの個体数を調整することが不可欠であり、より高度なスキルが求められます。

参考資料

林野庁.「野生鳥獣による森林被害」.https://www.rinya.maff.go.jp/j/hogo/higai/tyouju.html(2024.2.27取得)

国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所「西日本の若齢造林地におけるシカ被害対策選択のポイント~防鹿柵・単木保護・大苗植栽~」.https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/chukiseika/documents/4th-chuukiseika40.pdf(2024.2.27取得)

近畿中国森林管理局 和歌山森林管理署 大井田 明優,児玉 浩稔.「シカ防護柵設置方法の工夫~低コストかつメンテナンスの省力化を目指して~」.令和元年度 国有林野事業業務研究発表会 発表課題.https://www.rinya.maff.go.jp/j/gyoumu/gijutu/kenkyu_happyo/attach/pdf/R1_happyo-80.pdf(2024.2.27取得)

ナカダ産業株式会社.「シカ・カモシカ侵入防止ネット」.https://www.nakadanet.co.jp/product/deer_prevention.html(2024.2.27取得)

大同商事株式会社.「斜め張りネット さいねっと」.http://www.daido-syo.co.jp/works/sai-net/(2024.2.27取得)

森一生,高橋昌隆.「シカ林業被害防護チューブに関する報告」.徳島県林業総合技術センター研究報告.2000年,37号,p.7-11.

株式会社GCJ.「ヘキサチューブ」.https://www.gcj-labo.jp/hexatube.html(2024.2.27取得)

大一工業株式会社.「苗木用サプリガード HP-22/HP-6」.https://nara-daiichikogyo.co.jp/product/product05.html(2024.2.27取得)

信濃化学工業株式会社「獣害対策資材 熊/シカによる剝皮防止資材」.https://www.shinano-kagaku.co.jp/environment/product_category3/(2024.2.27取得)

大同商事株式会社.「野生動物食害忌避剤 コニファー水和剤」.http://www.daido-syo.co.jp/works/konifa/(2024.2.27取得)

宇敷京介 片桐奈々 大橋章博.「ドローンを活用した省力的なシカ対策に関する研究」.岐阜県森林研究所 令和3年度業務報告,2021年,p12.https://www.forest.rd.pref.gifu.lg.jp/pdf/gyoumuR3.pdf(2024.2.27取得)