【5分で読み解く森林・林業白書】テクノロジーの話題をピックアップ
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【5分で読み解く森林・林業白書】テクノロジーの話題をピックアップ

林野庁は令和6年6月4日、「令和5年度 森林・林業白書」を公表しました。

森林・林業関係者は目を通しておきたい資料ですが、全部を読み込むのは時間が足りないという方もいらっしゃるでしょう。

そこで本記事では、「令和5年度 森林・林業白書」の中からテクノロジーに関する話題をピックアップし、約5分で読めるようにまとめました。

少花粉スギ苗は約5割のシェアに

品種開発と並行して苗木生産の効率化・普及も進む

1991年より開始された少花粉・無花粉スギの研究ですが、現在は147品種の少花粉スギ・28品種の無花粉スギが開発されています。

特定の品種を全国に普及すればよいというわけではなく、様々な病虫害や気象害に適応するため、現在進行形で地域ごとに多様な品種の開発をしています。

無花粉スギの普及における課題が苗木生産までにかかる時間の長さであり、種子の採取まで10年かかるのが一般的でした。

そこで近年推進されているのが「ミニチュア採種園」「閉鎖型採種園」です。

「ミニチュア採種園」はジベレリン処理により種子生産までの期間を4年ほどに短縮しました。

「閉鎖型採種園」は花粉の少ないスギ同士の確実な交配により種子生産までの期間を2年ほどに短縮しました。

このような技術の進歩により、花粉の少ないスギの生産量は2022年度で約1,600万本まで増加し、スギ苗木全体の生産量の約5割のシェアとなっています。

うち関東地方は、スギ苗木生産量の99%以上が花粉の少ないスギ苗木となっており、特に普及が進んでいます。

出典:林野庁「令和5年度 森林・林業白書」

一方ヒノキには、159種の少花粉品種が開発されています。※2024年3月時点

ただし苗木生産の技術はスギと比べて遅れており、花粉の少ないヒノキ苗木の生産量は全体の約3割にとどまっています。※2022年度

▼詳しく知りたい方はこちらをチェック

スギ材利用拡大に向けた新しい木材技術

花粉発生源対策の1つの柱が、スギ材の利用促進です。

スギ材の需要拡大のため、林野庁は以下のような新たな木質部材の開発・普及を推進しています。

  • スギ材を活用した集成材や構造用LVLの開発・流通の整備
  • 「難燃薬剤処理スギLVLで被覆した木質耐火部材」など非住宅・中層建築でもスギ材を利用できる技術の推進
  • 建築コスト・健康面等における木造化メリットの普及

さらに、2050年カーボンニュートラルの実現や花粉症対策に関心のある消費者層への訴求や海外市場の獲得などにより普及を広げる活動をしています。

デジタル林業戦略拠点と森ハブ・プラットフォームが始動

デジタル林業戦略拠点とは、ドローンやスマホアプリなどのデジタル技術を、地域一帯で活用する取り組みです。

2023年度に北海道・静岡県・鳥取県の3地域で取り組みが始まりました。

2027年度までに全都道府県で取り組みを実施することを目標にしています。

北海道:ICTハーベスタの活用

北海道では、比較的高性能林業を用いやすい地形条件であることから、ICTハーベスタの活用を軸に戦略を立てています。

ICTハーベスタとは、需要と供給をマッチングする最適採材機能や、仕分け作業に役立つカラーマーキング機能などを備えたハーベスタのことです。

クラウド・GISから得た立木情報、ICTハーベスタから得た丸太情報、さらに需要情報を連携し、マーケットイン型のサプライチェーンをめざしています。

静岡:アプリ検知を用いた木材SCM

静岡では、木材生産量の増加や合板工場等への需要に応じた安定供給木材SCM(サプライチェーンマネジメント)の構築に重点を置いています。

土場の丸太情報をアプリで取得し、土場~合板工場までの納品管理を省略化しています。

その他にも東部地域を拠点として、GNSS測量を利用した資源管理や、ドローンを用いた獣害対策、機械を用いた下刈りなど幅広くデジタル化を進めています。

鳥取:木材トレーサビリティや日報のデジタル化

鳥取県では原木 ・ 製品の需給データを集積して各流通段階に共有することで、トレーサビリティの事務手間を省略しています。

また、施業プラン・作業日報をデジタル化を推進するなどの取り組みも行っています。

森ハブ・プラットフォームの発足

ICTなどの林業技術を現場へスムーズに普及することを目的に2021年に林業イノベーションハブセンター(森ハブ)が発足しました。

2023年から9月から業イノベーションを推進するために必要な組織・人材・情報が集まる場として「森ハブ・プラットフォーム」を開始し、デジタル林業戦略拠点へのコーディネーターの派遣や事業者間のマッチングなどを行っています。

新しい林業による林業の収益性UP

「新しい林業」とは、低コスト造林などにより伐採~再造林・保育におけるトータルの収支をプラスにする林業のことです。

主に以下の施業を行い、コストの削減を図ります。

  • 一貫作業システムへの転換
  • 下刈りの機械化
  • 地拵えの機械化
  • 普通苗からコンテナ苗へ切り替え
  • 遠隔操作・自動機械の導入
  • エリートツリーや早生樹の植栽による下刈り回数削減・収穫期間の短縮

新しい林業のカギとなるのが一貫作業システムエリートツリーです。

一貫作業システムは、高性能林業機械の定着や路網整備、コンテナ苗の普及など様々な要素が絡んでいるので同時に様々な施策を進める必要があります。

山口県長門市など、複数の技術を取り入れて「新しい林業」を進めている自治体をモデルに実証を行っている段階です。

エリートツリーの生産においては、土を使わずミスト散水により発根を促す「空中さし木法」によるコンテナ苗生産の効率化などの技術開発が進められています。

▼詳しく知りたい方はこちらをチェック

まとめ

森林・林業白書からテクノロジーの話題をピックアップしたことで、ざっくりと現在の森林テクノロジーについてご理解いただけたかと思います。

今後も森林テクノロジーの動向を追っていきます。

参考資料

林野庁.「令和5年度 森林・林業白書」.令和6年6月4日.https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/r5hakusyo/attach/pdf/zenbun-1.pdf(2024年6月21日取得)

スマート林業EZOモデル構築協議会(北海道).「ハーベスタの生産データを活用したICT生産管理」.https://www.rinya.maff.go.jp/j/kaihatu/morihub/attach/pdf/240208_04_hokkaido.pdf(2024年6月21日取得)

静岡県.「デジタル林業戦略拠点構築推進事業の採択」.2023年4月13日.https://www.pref.shizuoka.jp/res/projects/default_project/_page/001/053/750/0413shinrinkeikaku.pdf(2024年6月21日取得)

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