【GIS基礎知識】トポロジとは?概念やエラーについて解説 | 森林テック
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【GIS基礎知識】トポロジとは?概念やエラーについて解説

GISによる地理空間分析を行う際、個人の所有区画の線引き、土地利用の変化の調査の際に新たなポリゴンを作ろうとすると、エラーが発生しうまく進まないということがよくあるかと思います。

その際、しばしば問題になるのがトポロジです。

今回の記事ではトポロジという言葉の定義やエラーの解消方法について簡単にご説明します!

トポロジとは

GISにおけるトポロジとは、ベクタデータの接続や隣接などの空間的関係を管理する機能やデータモデルのことです。

以下のような空間的なルールを表すことができるため、ネットワーク分析などによく利用されます。

  • 市町村は都道府県に含まれ、都道府県は日本の中に含まれる
  • 建物は土地区画内にある
  • バスルートは道路上にあり、鉄道ルートは線路上にある

より私たちにとって身近な例としては乗り換え案内が考えられます。

例えば、鉄道で観光地を訪れて駅で最寄りとなる観光スポットまで向かうバスに関する地図を入手すると、場所によってはバスで直接向かうだけでなく地下鉄とバスなど、他の交通機関を乗り継いで利用して渋滞を避けるという方法があることに気づく人も多いでしょう。

その場合はどの駅で地下鉄とバスを乗り換えられるのか、どの路線に乗るのかなど複数の路線や交通機関、駅に関係する情報が必要となります。

それらの情報がトポロジで、乗り換える駅の地下鉄路線とバス路線の関係は接続性を示すポリゴン(円)で、路線についてはラインで表現されていることがわかります。

そもそもトポロジって何?

トポロジとは「位相幾何学」を意味する数学の一分野で、物体が伸ばされたり曲げられたりしても保たれる性質を扱います。コンピューターネットワークの世界では通信ネットワーク上にどのように端末が接続されるかを表す用語として用いられます。

GISにおけるトポロジエラーについて

ポリゴンに隙間がある、ラインが点状で完全に合流していないといったように、ベクタデータに不整合があるとトポロジエラーが発生します。

トポロジエラーにはデータの種別に応じて以下のようなパターンが存在します。

  1. ポリゴン地物の場合:ポリゴンが閉じられていない、ポリゴンと別のポリゴンの間に隙間があったり重なりがあったりする
  2. ライン地物の場合:点状で完全に合流していない。

ラインでのトポロジエラーについて、線と線の間に隙間がある場合はアンダーシュートと呼ばれ、線が接続すべき線を越えて終わっている場合はオーバーシュートと呼ばれます。

これらはぶら下がりノードと呼ばれるラインの端にある箇所でエラーが発生しています。

ぶら下がりノードは行き止まりの通りに接続している場合については許容され、エラーとはなりません。

トポロジエラーが発生していてもGISソフトによっては計測ツールは使用できるものの、得られる結果は不正確なものになってしまいます。

そのため一度この問題が発生すると、市町村の面積が測定不能になる、所有者ごとの土地境界がわからなくなるなどネットワーク分析や土地利用分析が実施不可能になるほどの問題を起こしてしまいます。

そのためベクタデータを作成する際には、隙間や重なりがないトポロジ的に正しいデータにしてからGISによる分析を実施するようにしてください。

特にQGISの公式ドキュメントに掲載されている、ベクタ地図の現実世界の地物の定義についてはよく利用されるので、チェックの際に利用できるよう覚えておくようにしましょう。

  • 市区町村地図の領域の境界は重なってはいけない。
  • 市区町村の領域の境界に細かい隙間(ギャップ)があってはいけない。
  • 境界を表すポリゴンは閉じていないといけない。
  • 境界線のアンダーシュート、オーバーシュートは許可されない。
  • 等高線は互いに交差してはいけない。

トポロジ処理の方法

上記のようにトポロジエラーは地理空間分析が実施不能になる可能性を高めるなど深刻な事態をもたらすことがありますが、QGISやArcGISなど多くのGISソフトに搭載されたトポロジルールでその大多数をカバーすることが可能です。

例えばQGISにおいては、ポリゴンの境界線のエッジ頂点を移動したり重なりを防いだりしてエラーを解消するトポロジカル編集を有効にすることができます。・

また最も近い頂点やセグメント(ポリゴンやラインの2つの頂点で形成される直線)を検索するスナップ距離や動かそうとしている地物の最も近い頂点を検索する検索半径といった機能を使うことで、エラーが発生しているベクタデータは見つけやすくなります。

トポロジエラーは拡大表示してもわかりにくいほんのわずかな隙間や重なりでも発生するため、エラーチェック時に用いるといいでしょう。

まとめ

トポロジはベクタデータ間の関係を表現する際に重要な概念となるため、重なりやすきまなどが生じてエラーが発生すると深刻な問題をもたらします。

非常に厄介ではありますが、境界線が重要な役割を果たす空間分析を行う場合には必須概念であるため、必ず念頭に入れて行うようにしてください。

特に所有者が分散しやすい農地や森林などの土地利用の状況をGISで調査する場合、一つ一つのポリゴンが細かく境界線も多いためトポロジエラーが発生しやすい傾向にあります。

ご自身で利用されている各GISソフトでどのように解消すればいいのかをよくチェックするようにしてください。

参考文献

ESRIジャパン「トポロジ|GIS基礎解説」https://www.esrij.com/gis-guide/other-dataformat/topology/ (2024年4月15日取得)

QGIS Project「やさしいGIS入門/7.トポロジ」https://docs.qgis.org/3.34/ja/docs/gentle_gis_introduction/topology.html (2024年4月15日取得)

京都市「バス・地下鉄路線図」https://www2.city.kyoto.lg.jp/kotsu/webguide/files/tikabusnavi/ja_tikabusnavi_2.pdf (2024年4月15日取得)