【GIS基礎知識】位置情報データとは?概念や森林での活用を解説
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【GIS基礎知識】位置情報データとは?概念や森林での活用を解説

人やもの、建物がどこにあるのかを示す位置情報。

地図の作成や地理空間分析には欠かせないものであり、近年ではカーナビやスマートフォンの普及により私たちの生活の中で必要不可欠なものとなりました。

ただ、位置情報データがそもそもどのように定義されているのかという点や、広大な地理空間からどのようにして正確な場所を把握しているのかという点については、わからないという方も多いでしょう。

本記事では、位置情報データとは何かという点について触れたのち、位置情報データの取得方法や森林管理における具体的な活用方法について簡単に解説します。

位置情報データとは

位置情報データとは、特定の物体や場所が地球上のどこに存在するかを示すデータのことです。

データは緯度と経度による地理的座標を用いて表現され、GISをはじめ数多くのソフトで活用しやすいようになっているのが特徴です。

位置情報データは主にGPS(グローバル・ポジショニング・システム)のような人工衛星、Wi-Fiや基地局、Beacon(ビーコン)などの通信施設や機器を利用して取得されます。

この取得方法については後ほど解説します。

今ではスマートフォンの地図アプリや拡張現実を活用したゲーム、カーナビなどで一般的になった位置情報技術ですが、その歴史はアメリカと旧ソ連の冷戦時代に起こった大韓航空撃墜事件にまでさかのぼります。

現在は店舗の広告や森林管理、農地管理、測量など幅広い分野で利用されています。

GPSの民間利用のきっかけとなった大韓航空墜落事件

1983年、アメリカから韓国に向かっていた大韓航空の旅客機が空路に迷い、ソ連領空に侵入してしまいます。そしてソ連の戦闘機からミサイル攻撃を受けて撃墜。日本人28人を含む269人が犠牲となってしまいました。このことをきっかけにアメリカは軍事機密とされたGPSが民間旅客機に無料で提供されるようになり、以降空路や海路の安全確保のために広く活用されるようになりました。

位置情報データの取得方法

位置情報データを取得する方法にはいくつかの技術があります。ここでは、代表的な以下4つの方法について簡単に説明します。

  • GPS
  • Wi-Fi
  • 基地局
  • Beacon

GPSによる位置情報取得方法

GPSは正確には「Global Positioning System(全地球測位システム)」といい、人工衛星を利用して地球上の任意の地点の位置を測定するシステムです。

前述通り元々は米国が軍事用に開発したシステムですが、現在ではスマートフォンやタブレット、スマートウォッチなどに搭載される地図アプリのベースともなっているなど、最もなじみのある位置情報取得方法です。

GPSは衛星から送信される電波を受信し、その信号の到達時間差を基に現在地を特定でき、僅かな誤差で位置を特定できます。

ただ数メートル以内の精度で位置を特定できる精度の高いシステムではあるものの、待機状態や通信障害、室内、建物の多い場所などにより精度が落ちてしまうことには留意が必要です。

とりわけショッピングモールや複合施設、大学のキャンパスなど、建物自体が大きい場所での取得の際には、気をつける必要があります。

Wi-Fiによる位置情報取得方法

Wi-Fiを利用した位置情報取得はスマートフォンやその他のデバイスが周囲のWi-Fiネットワークを検出し、その情報をもとに位置を推定して行われています。

統計データを用いて位置情報を取得することが可能であるのが大きなメリットで、AppleやGoogleはWi-Fiのアクセスポイントの情報を随時集めて彼らのビジネスに活かしています。

この手法は屋内や都市部のWi-Fiのアクセスポイントの多い場所では高い制度を発揮します。

ただ農村や森林などアクセスポイントがあまりない地域で精度が落ちてしまうため、地域により変動があるという点には留意する必要があります。

基地局による位置情報取得方法

基地局による位置情報取得は、携帯電話の通信基地局の位置情報と電波の強度などの情報を活用することで導き出す形で行われます。

GPSが届かない室内や活用しにくい建物などで位置情報を取得しやすいのがメリットです。

ただ基地局の位置に依存するため地域による精度の差が生じやすいというWi-Fiと共通するデメリットがあることには注意したほうがいいでしょう。

またモバイル端末によっては複数の基地局から情報を取得することでより精度の高い位置情報を取得しているものもあるため、端末によっても位置情報の精度が変わりやすいことにも留意する必要があります。

Beaconによる位置情報取得方法

Beacon(ビーコン)は、「Bluetooth Low Energy(BLE)」というBluetooth信号を発信する小さな端末のことです。

Beaconが発信する信号をスマホアプリなどで受信することで、デバイスの位置を特定することができるという仕組みになっています。

端末自体が小さく狭い範囲でしか活用できないものの、常に電波を発信し続けているため対象エリア内での位置情報の精度が非常に高いというメリットを持ちます。

工場や建設現場、病院などでのスタッフの管理や保育園・幼稚園での園児の登園管理など特定のエリアや人を対象とする場合に大きな効果を発揮します。

森林管理における位置情報データの活用

森林管理においては通信手段が限られるために位置情報データの活用が進まなかったものの、近年ではデータ取得方法の進化により各地で使われるようになりました。

森林管理で位置情報をデータを活用する主な方法は以下の3つです。

  • GNSS測量
  • 点群データの取得
  • 林内での作業における安全管理

GNSS測量

土砂災害の防止や地球環境保全などの森林の多面的機能を維持するためには、植栽・保育・間伐などの管理を適切に行うことが欠かせません。

そのために各自治体では一定の作業のために森林整備事業の補助金が交付されていましたが、申請の際には現地でのコンパスなどによるアナログな手段での記録が必要なため莫大な時間と多くの人員的負担が必要でした。

そこで近年活用されはじめているのがGNSSによる測量です。

GNSSは地球上のすべての場所の位置情報を計測するシステムの一つです。GPSのほか、ロシアのGLONASS、欧州のGalileo、中国のBeiDou、日本のみちびきなどの複数の人工衛星を用いて運用していることから、位置情報の正確性が高く、自動車の自動運転や大規模災害の土塊の移動観測など高精度な位置情報を必要な分技術のベースとして注目されています。GNSSについて詳しい内容を知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

当社の開発するiOSアプリ「mapry林業」はGNSS測量を使って作業の効率化が可能です。

iPhoneまたはiPadを森林内に持ち込むことで、デバイスに搭載されたLiDARにより手軽に周囲測量を行えます。

mapry林業による測量精度は、造林補助事業竣工検査内規例に示される測量成果として許容される精度内となっています。

そのため助成金申請の際の記録手段として十分に用いることが可能です。

また「mapry林業」はウェブブラウザ上で動く「mapryGIS」と連携しているため、PCへの負荷や高コストが課題となっているGISソフトを用いなくて済むのも大きなメリットとなっています。

mapry林業について詳しく見る

点群データの取得

点群解析ソフト「mapryPC版」使用画面

点群データとは、レーザーや写真測量技術を使用して取得される、地点の3次元座標データ(=位置情報)の集合のことを表します。

ポイントクラウドとも呼ばれ、3次元座標値(X,Y,Z)と色の情報(RGB)から構成されたtxt、.las、.xyzなどのファイル形式によって表現されます。

点群データは地上設置型の3次元スキャナーやドローン・無人機などによる航空レーザー、ハンディ計測器、水中設置・移動型による計測など様々な手法があります。

近年ではLiDAR(Light Detection and Ranging)技術によって短い波長の電磁波を用いてより詳細な分析ができるようになってきました。

点群データは高精度かつ3D表現が可能であることから、橋梁やトンネルなどの道路インフラ点検や災害による被害確認、文化財のデジタルアーカイブなど様々な用途に使われるようになっています。

中でも森林分野は点群データの活用法として大きな可能性を秘めています。

地上レーザーにより取得した森林の点群データは森林資源量や地形情報を算出できるため、施業計画やカーボンクレジットの申請などにも活用され始めています。

レーザードローンではオルソ画像と点群データを併用して広域の森林管理に役立てられます。

林内での作業における安全管理

位置情報データを活用した安全管理ツールは、親が子どもの安全を確認するGPSアプリなどでの利用が主なものです。

作業中の事故・熱中症・野生動物との遭遇など、リスクの多い林業の現場においても、位置情報を共有するサービスは有効です。

先ほど紹介した「mapry林業」では、位置情報データを利用した安全管理のサービスも搭載しています。

設定したユーザーの位置情報を地図上で共有する機能や、緊急時にワンタップで警告を送信できる機能を搭載し、もしもの時の安全を確保するツールとしてご活用いただけます。

まとめ

スマホの地図ソフトやカーナビなどで普段の生活から使っている位置情報データは、GNSSやBeaconなどの技術が進歩することでますます精度を増しています。

その技術はインフラ点検や森林管理などの分野にも広がっていますが、取得方法によって制度や取得範囲は様々なため、ご自身が対象とする地域の置かれた状況によってどの技術を用いて測定するのかを入念に計画するようにいたしましょう。

また先ほどもご紹介したLiDARを搭載したiPhone/iPadを持ち込むだけでデータを取得できる「mapry林業」は、高価な測量機器を用いることなく三次元データを表現できる方法として、各自治体の注目を集めています。

森林管理における人員負担が課題である場合には、是非とも活用してみてください。

参考文献

中島円「その問題、デジタル地図が解決しますーはじめてのGIS」ベレ出版2021年出版、p77~85

株式会社ビーキャップ 「位置情報サービスとは?仕組み・種類・特徴~会社への導入・活用事例を紹介」2023年11月30日 https://jp.beacapp-here.com/blog/20231130-2/ (2024年8月22日閲覧)

株式会社ゼンリンデータコム「位置情報データとは」2023年7月13日 https://www.zenrin-datacom.net/solution/blog/locationdata (2024年8月22日閲覧)

MBS毎日放送「スマホやカーナビに使うGPSの進化 きっかけは大韓航空機撃墜事件」MBSコラム2018年6月18日 https://www.mbs.jp/mbs-column/maetoato/archive/2018/06/06/012562.shtml (2024年8月22日閲覧)

株式会社インフォマティクス「点群データとは|取得方法・活用例」 空間情報クラブ 2024年5月14日 https://club.informatix.co.jp/?p=1125 (2024年8月24日閲覧)

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