森林管理にもGISの活用が欠かせない時代となっています。
今回の記事では、森林GISの基本的な情報、活用方法、森林GISの活用に便利なツールなどを紹介します。
目次
森林GISとは?
GISとは、コンピューター上で様々な地理空間情報を重ねて表示するシステムのことです。
森林GISは、森林に関わる作業においてGISを活用することを指します。
例えば、森林資源量の把握、所有する森林範囲の確認、森林機能の解析などに活用できます。
森林GISの活用方法
森林GISの活用方法は、4つの役割に大別されます。
- データ管理
- 資料作成
- 施業計画
- 情報共有・管理
1つずつ解説します。
1.データ管理
広大な面積を長期間にわたって扱う森林管理では、データの管理が重要です。
林班・小班の区分け、地形図などの基本的なデータから、森林簿や施業履歴などの帳簿データなど数多くのデータを扱います。
GIS利用することで地図と帳簿を一体に管理し、森林情報を高精度かつ効率的に集約できます。
2.資料作成
林業を経営する上で、自治体や森林所有者に提出する書類や資料は数多くあります。
例えば以下のような書類です。
- 森林経営計画
- 伐採届
- 補助金申請書
GISを活用することで効率的に書類を作成できます。
例えば、GISを使って資源情報・所有者などをソートする機能は森林経営計画の策定に役立ちます。
3.施業計画
森林組合や林業事業体が施業の計画を立てる際にGISを活用します。
- 地形や資源状を考慮した間伐や主伐などの計画
- 地形や所有者情報を考慮した作業道の開設計画
4.情報共有
近年では森林管理に特化したGISソフト・WebGISの開発も盛んです。
GISを活用することで場所と情報を結び付け、スムーズな情報共有が可能になります。
- ストックヤードの丸太情報の共有
- 原木の流通情報の管理(トレーサビリティ)
- 現場計測データとのスムーズな連携
森林GISで活用できるオープンデータ
オープンデータは誰もが使える無償データです。
オープンデータの詳細はこちらの記事をご覧ください。
林野庁は、森林資源量集計メッシュや樹種ポリゴンなどのオープンデータの公開を進めています。
オープンデータを活用することで基盤となる情報を読み込む手間が省け、よりスムーズに森林GISを利用できるようになりました。
森林GISに活用できるソフト・サービス
森林管理に活用できるGISサービスにはどのようなものがあるのでしょうか。
具体例をみていきましょう。
【用語解説】デスクトップGISとWebGIS
デスクトップGISは、GISソフトをパソコンにインストールして利用するGISです。単に「GISソフト」と呼ぶことも多いです。
WebGISは、インターネットを利用してブラウザ上で操作するGISです。
QGIS
QGISは無料で利用できるオープンソースのGISソフトです。
無料でありながらも高度な機能を備えているので、多くの人が利用しています。
QGISでできる機能の一例をあげます。
- 地図・航空写真の表示→森林の位置を把握できる
- ポリゴンの作成・編集→樹種や施業別に塗分けて可視化できる
- 作業道や河川の表示
QGISを森林管理に活用するメリットは、無料であること、広く普及していることです。
複数のパソコンにインストールしても費用がかからないため、「特定の人しかGISソフトを操作できない」という状況を防ぎます。
QGISは企業が提供しているサービスと違い、サポートがないため自分で操作を習得する必要があります。
「自分で習得する」と聞くとハードルが高く感じるかもしれませんが、QGISは多くのユーザーがいることから、操作を解説しているWebサイトや書籍もたくさん見つかります。
それらを参考に操作をしてみてください。
ArcGIS
https://www.esrij.com/products/arcgis/
ArcGISは非常に高機能なGISサービスです。
デスクトップで使うGISソフトのほかに、WebGISやスマートフォンアプリなど、豊富なサービスから組み合わせて利用できます。
位置情報の表示や面積の測定といった基本的な機能に加え、空間解析機能も充実していることが特長です。
店舗の出店計画などのビジネス分野や、災害記録などの行政・研究機関でも多く利用されています。
森林分野では、山地災害対策や森林・林業マスタープランの策定、森林資源の解析などに利用されています。
扱うデータが豊富であったり、高度な解析を行いたいという場合はArcGISがおススメです。
PasCAL 森林
https://www.pasco.co.jp/products/pcl_shinrin
PasCAL 森林は森林資源管理に特化したクラウドサービスです。
属性検索、地名検索、出力、GPS連携などの基本的なGIS機能に加え、申請書類作成の機能や、自治体向けの台帳管理サービスが充実していることが特長です。
行政専用ネットワークを搭載するなど、自治体で森林を管理するのに最適なサービスです。
GeoFIMAS
https://ssl.prs.co.jp/home/html/products_01.html
GeoFIMASは基本的なGISに加え、森林の施業や書類作成をサポートする機能が掲載されているGISソフトです。
ニーズに合ったカスタマイズが可能で、特定の機能が使いたいという希望がある方におススメです。
Assist 8/Assist Z
https://www.be-system.co.jp/products/assist/
Assistは、広域なデータ管理を一括して行える「森林測量管理システム」です。
基本的なGIS機能に加え、現地測量システムARUQと連携した測量結果のスムーズな取り込みや、書類作成機能も搭載。
AssistZは3Dデータを利用できることが特長です。
ドローン写真で作った点群データを元にした林地の材積推定や、作業道の設計シミュレーションを行うことができます。
ギョロビュー
https://www.gyoroman.com/product/gyoroview/
ギョロビューは、「誰にでも簡単に操作できる分かりやすいGIS」を目指して開発されたGISソフトです。
シンプルな機能で、さらに無料なのではじめてGISを使うという方にもおすすめです。
有償でGPS機能などを追加できます。
森林クラウド「羅森盤」
http://rashinban-mori.com/pc/public/
羅森盤は、林野庁「令和5年度 森林情報オープン化推進対策事業」により試験的に公開しているWebGISサービスです。
林野庁により公開されたオープンデータをブラウザ上で閲覧できます。
公開期間は、令和6年2月末日までの予定となっています(2023年12月4日現在)。
mapryGIS/森林マップ
最後に、弊社のサービスを紹介いたします。
mapryGIS
mapryGISは、森林管理にも活用できるWebGISです。
CADなどの基本的な機能に加え、「mapry林業」や「mapry測量」などのアプリと連携したサービスが特長です。
現場で計測したデータを帳票に反映/出力する機能や、点群データの共有、グループ管理などの機能があります。
森林マップ
森林マップはmapryGISよりもシンプルな機能で、無料で利用できます。
林野庁で公開されたオープンデータを地図上で表示する機能や、シェープファイルや地上計測データとの連携機能があります。
また、オープンデータをもとにした立木の材積予想の機能もあります。
森林・林業関係者のみならず、一般の山林保有者の方など広く利用していただくことを目的に開発しました。
まとめ
- 森林GISは、地図と情報を一体に管理できることから業務の効率化に欠かせないツールである
- 森林情報のオープンデータ化が進み、ますます森林GISを利用しやすくなる
- 近年は森林管理に特化したGISサービスも充実している
森林GISのことをご理解いただけたでしょうか。
ぜひ森林管理にGISをご活用ください。
参考資料
森林総合研究所 四国支所.「四国情報 No.22森林管理へGIS導入は有効か? -GIS導入森林組合調査から-」.1999.7.30http://www.ffpri-skk.affrc.go.jp/sj/sj22p3.html(2023.11.30取得)
Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 ライセンス(CC BY-SA).「QGIS」.2023.12.5.https://www.qgis.org/ja/site/index.html(2023.12.1取得)
esriジャパン.「森林GISソリューション」.2023.https://www.esrij.com/industries/forestry/(2023.12.1取得)
株式会社パスコ.「pasCAL森林」.日付不明.https://www.pasco.co.jp/products/pcl_shinrin(2023.12.1取得)
Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 ライセンス(CC BY-SA).「QGIS」.2023.12.5.https://www.qgis.org/ja/site/index.html(2023.12.5取得)
パシフィックリプロサービス株式会社.「森林GIS(GeoFIMAS)」.日付不明.https://ssl.prs.co.jp/home/html/products_01.html(2023.12.5取得)
株式会社ビィーシステム.「Assist 8」.https://www.be-system.co.jp/products/assist/(2023.12.5取得)
ギョロマン.「ギョロビュー」.https://www.gyoroman.com/product/gyoroview/(2023.12.5取得)
一般社団法人日本森林技術協会.「令和5年度林野庁委託事業 森林情報の公開実証
『森林情報WEB-GIS公開実証(公開期間:令和5年10月~令和6年2月末日)』」.羅森盤.http://rashinban-mori.com/pc/public/(2023.12.4取得)