みなさんは春の林業といえば何を思い浮かべるでしょうか。
春の山では山菜が採れることで知られていますが、もちろん林業の作業も行われています。
そこで本記事では、春に行われる林業の代表的な作業や、春作業の注意点を紹介します。
春の林業を知る参考にしてください。
目次
春の林業で代表的な作業とは
春に行われる林業で代表的な作業は以下のようなものがあります。
- 植栽
- 踏査(とうさ)
- 枝打ち
- 除伐
- ほだ木取り
これらの作業は、春に行う必要があったり効率の良い仕事が期待できたりします。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
植栽
植栽とは人工的に目的となる樹種を植える作業のことをいいます。
木が成長する春に植栽することで、しっかりと根付く効果が期待できます。
現在はコンテナ苗も普及してきているため、春以外の季節でも植栽が可能です。
しかし、温暖な気候である春が植栽に適しているのは変わりありません。
踏査・測量
早春の時期は木々が落葉していて林地内でも遠くまで見通せるため、踏査や測量が効率的に行える時期です。
踏査とは実際に現場に行き、調査することを指します。
林業の場合は、境界確認や毎木調査、作業道の路線設計などが当てはまるでしょう。
また、積雪のある地域では雪が固くなる時期でもあります。
雪上を歩いても足を取られることが少なく、柴などが雪で抑えられていて障害物もなくなるため、踏査や測量が容易になります。
春は一年の作業の段取りを行うのにうってつけの季節といえるでしょう。
枝打ち
一般的に枝打ち作業は、木々が活動を始める4月ごろまでに行われます。
この時期までに枝打ちすることで、枝を切り落とした際に樹皮がはがれにくく、木を傷めずに作業ができます。
もともとは、木材として節のない木を育てるために行われてきた枝打ちですが、そのほかにも以下のようなメリットがあります。
- 枯れ枝から虫が進入するの防ぐ
- 林内に入る光を調節できる
- 雪に枝が引っ張られ木が曲がることを防ぐ
良い木や山に育てようとすると、枝打ちは欠かせない作業といえます。
除伐
除伐も春先に行われる作業の1つです。
林内で刈り払い機を使い作業することは下刈と共通しています。
しかし、除伐が刈り払う対象は柴やツルであり、夏場でなくても生えているものです。
そのため、春の作業の一環として行われます。
夏場と違って体が動きやすいのは、春に除伐をする特徴の一つです。
また、危険因子である「蜂」がいないのも、春先に除伐をするメリットです。
ただし、除伐は必ずしも春に行うものではありません。
夏や秋、積雪のないところであれば冬場でも作業できるのが除伐の仕事です。
ほだ木取り
ほだ木とは、きのこを栽培する際、種を植え付ける天然の木を指します。
作業の適期は冬の時期で、遅くとも春の彼岸、つまり3月20日頃までには切り出さなくてはいけないとされています。
時期を逃し、遅くに切り出したほだ木は、種駒を植え付けてもうまくきのこが生えてきません。
そのため、森林組合や伐採業者などにほだ木の購入を依頼する場合は、早めの連絡をしておく必要があるでしょう。
春作業の注意点
春に作業する場合の注意点は以下の通りです。
- 熊が冬眠から目覚めてくる
- 山菜取りが入山してくる
- 沢が増水しやすい
どれも危険度が高く、命に関わる場合もあります。対策も含めて詳しく見ていきましょう。
熊が冬眠から目覚めてくる
春は熊が冬眠から目覚める季節です。
熊対策のグッズを持たずに山に入ると、遭遇した熊に襲われる可能性があります。
とくに一人で入山して襲われた場合は、助けを呼びに行けないため非常に危険です。
対策グッズを持っていたとしても、必ず2人以上で山に行くことをおススメします。
入山時の対策としては、こちらから人間の存在を熊に知らせることが原始的で有効です。
具体的には、熊よけの鈴やラジオで音を鳴らすなどが考えられます。
山菜取りが入山してくる
春の山といえば、山菜が待ち遠しい人も多いのではないでしょうか。
しかし、林業従事者にとっては悩ましい問題で、山菜取りによって予期せぬアクシデントに見舞われる場合があります。
考えられる注意すべき点は以下の通りです。
- 林道で交通事故にあう
- 伐倒作業中に急に姿を見せる
- 作業道を作っている際の落石によりケガをさせる
入山禁止の案内をしていても、山菜取りをする一般人が作業範囲内に入ってくることがあります。
急に山菜採りが現れても大丈夫なような対策が必要です。
沢が増水しやすくなる
雪山に見られる注意点として、沢の水が増水することがあげられます。
春は冬に降った雪が徐々に解け始めるため、沢水が増水し危険です。
普段よりも水かさが増しているため、うっかり沢目近くで足を滑らし激流に飲み込まれる場合も考えられます。
雪山において、春先の沢目には十分注意する必要があるでしょう。
花粉症の人は林業従事者になれるのか
春の森林内では、多くの花粉が飛び交っています。
伐倒作業に従事していると飛散の様子がとくにわかりますが、木が倒れたときの衝撃で花粉が一斉に空中に舞う瞬間は圧巻です。
あたり一面が黄色に染まり、もともと花粉症でない人でも目や鼻がむずむずしてきます。
では、花粉症の人は林業従事者になれないのでしょうか。
結論、花粉症でも林業に従事している人もいます。マスクをしたり薬を飲んだりしながら日々仕事をしています。
高性能林業機械などに乗って仕事をするオペレーターなどは、ある程度は外気としゃ断されるため、花粉から身を守れるでしょう。
逆に、チェーンソーマンをはじめ、調査や測量をする人たちのように外気に触れる機会が多い場合には、春はなかなか厳しい季節といえます。
近年では少花粉の苗木が植えられ始めています。
次世代では花粉に悩む林業従事者が少なくなるのかもしれません。
まとめ
季節の流れとともに仕事をする林業にとって、春は作業のしやすい時期です。
気温も上がり過ぎず、また葉が付く前であれば見通しもききやすいといったメリットがあります。
木々の状態に合わせ、枝打ちや除伐、ほだ木取りといった作業が効率良く行えます。
しかし、穏やかな気候とともに熊の出没し始める時期でもあります。
入山する場合は、徹底した対応が求められるでしょう。
厳しい冬の寒さから開放される春。自然の移ろいを感じるために、山へ足を伸ばしてみるのもいいかもしれません。