「スマート林業ってメリットあるの?」
「スマート林業って具体的に何をするの?」
こういった疑問・お悩みにお答えします。
スマート林業とはドローンなどの最先端技術を活用し、業務の効率化を図る取り組みのことです。
林業従事者の高齢化や担い手不足により減少傾向を見せる中で、スマート林業を活用し森林を維持していく必要性が各企業に求められてきています。
一方で「どう活用していくべきかが分からない」といった声が上がっていることも事実です。
そこで本記事では、スマート林業の活用法についてメリットやデメリット、解決策も含めて解説していきます。
最後までお読みいただくと、最小限の人員で最大の効果が得られるスマート林業の技術が分かります。
目次
スマート林業の活用法について
スマート林業は、業務の効率化や木材の生産性、安全性の向上、人材担い手不足の解消などさまざまな側面で貢献をみせています。
しかし、ここ数年の技術ということもあって、普及が完全に進んでおらず各企業もどう活用すべきか模索している状況であることが現実です。
林野庁の報告書によると、22あるスマート林業の技術に関して、7都道府県以上が取り組んでいる技術は、わずか4つのみとなっています。※対象は12都道府県
(参考:令和4年度スマート林業構築普及展開事業報告書 P18)
原因としてまだ実証中である技術も多く、企業も実務として使用していけるか活用法に試行錯誤している段階であるからといえるでしょう。
このようにスマート林業は着実に実績を残しつつも、現場にはまだ浸透しきれていないといった現状があります。
スマート林業のメリット
スマート林業を活用していくうえでのメリットは、以下が考えられます。
- 管理の効率化による時間と人員の削減
- 経験や技術に左右されにくい
- 安全性の向上
これらについて詳しく解説します。
管理の効率化による時間と人員の削減
スマート林業を活用していくことで、森林施業の効率化が高まり、時間と人員の削減が期待できます。
例えば、木材検収システムの活用で20~70%の労務削減、30%の経費削減につながったという報告があります。
(参考:令和4年度スマート林業構築普及展開事業報告書 P21)
時間・人員の削減は人件費の削減にもつながります。
経験や技術に左右されにくい
林業は技術職だけあって、実務経験が非常に大事な部分とされています。
しかし現状は、新規雇用は減少傾向をみせ、経験豊富な林業従事者は高齢化に伴い、退職の一途をたどっています。
そこでスマート林業の活用です。
スマート林業であれば経験の浅い林業従事者であっても、ベテランの従事者が行った結果に近い成果を上げられる点もメリットといえます。
たとえばGISを使用した森林管理であれば、パソコンの画面上で樹種や材積、傾斜などベテランの経験や技術に依存せずに情報の網羅が可能です。
また情報を出力しておけば、山林所有者や上司、行政機関などへの説明資料としても活用できます。
そのため経験の浅い林業従事者であっても、スマート林業の活用法を知ることで、成果が得られる点はメリットといえます。
安全性の向上
スマート林業の活用法を知っていると実は安全性にも大きく貢献し、とくに災害時には最大限の力を発揮することが分かっています。
たとえば林道を走行中、倒木や土砂崩れがあって通行できなくなった場合、その先の情報を得ることができません。
最悪の場合、二次災害に巻き込まれる可能性もあります。
そこで安全圏からドローンを飛ばし、林況を把握するのです。
得た情報はパソコン上にデータを送付することで、情報共有できます。
林業は労働災害や死亡件数が多い産業のひとつであり、解消すべき課題のひとつです。
そのためスマート林業は、安全面についても期待される取り組みともいえます。
スマート林業のデメリットと解決策
スマート林業は、メリットばかりではなくデメリットもあるというのが現状です。
デメリットと解決策については、以下が挙げられます。
- 投資金がない|補助金の活用
- 技術を身につける難しさ|講習に参加
これらのデメリットを解決策も含めて解説していきます。
投資金がない|補助金の活用
便利と分かっていても、スマート林業へ投資するお金がないといった企業は多くみられます。
導入にさしあたって機械や機器の購入が必要なケースが多く、かつ高額商品であるため、なかなか実装に至らないのが現状です。
そのうえ現場で永続的に使っていけるのか不確かであれば、企業も財布の紐を締めてしまうでしょう。
そのため解決策としては、補助金の活用が有効です。
各都道府県や市町村、国ではスマート林業を支援する補助金制度があります。
補助金申請すると購入する機械の何割かを補助してもらえるため、購入への難易度は下がります。
詳しくは該当する自治体を確認してみてください。
補助金の活用法が分かると、スマート林業の導入に一歩近づけます。
技術を身につける難しさ|講習に参加
スマート林業の活用法を身につけるうえで、大半は技術習得が必要となってきます。
しかし本業があるため、並行して覚えることが難しく感じる人が多いというのが現状です。
くわえて教えられる人がいないと挫折してしまう可能性も大いにあります。
打開策としては、講習に積極的に参加することです。
各都道府県や林業大学校などでは、スマート林業に関する講習を開催している場合があります。
無料であることも多いですし、まずは参加してみて使ってみることもおすすめです。
ネットで「〇〇(該当する都道府県) スマート林業 講習」などで調べてみるか各都道府県の林務担当者に直接聞いてみても良いでしょう。
具体的なスマート林業の活用法
スマート林業を実践するには、様々な技術を上手に活用することが求められます。
代表的な技術は以下の4つです。
- リモートセンシング
- 森林GIS
- 林業アプリケーション
- 需要マッチングシステム・SCM
複数の技術が組み合わさったツールもあるので、重複する部分もありますが1つずつ解説します。
リモートセンシング
リモートセンシングとは、対象とするものを離れたところから非接触で計測することです。
この技術は、森林資源量の調査、路網の把握・計画、森林ゾーニングなどに活用されています。
リモートセンシングを活用できる代表的な機械は以下のようなものがあります。
- ドローン
- 地上レーザー測量機
1つずつ解説します。
ドローン
ドローンとは、リモコンで操作する「無人航空機」のことを指します。
撮影や物流などが可能なため、林業に限らず農業や災害時の活動、アクティビティなどさまざまな場面で活躍の場を広げています。
ドローンの活用で考えられるメリットは、以下のとおりです。
- 災害や林道がなく立ち入れない区域でも、空中から林況を確認できる
- さまざまな解析アプリを使って、精度の高い森林情報が得られる
- 資格が不要(※)なため、誰でも操縦できる
- 車に積載できるほど小型なため、気軽に調査ができる
レーザー計測のみならず、苗木や資材の運搬ができるドローンもあります。
汎用性の高いドローンでは、さまざまな技術に適用できるため「スマート林業といえば、ドローン」といえるほど、身近な存在ともいえるでしょう。
※条件によっては資格が必要となるため、詳しい飛行ルールについては国土交通省の公式サイトで確認してください。
地上レーザー測量機
地上レーザーでは、一般的に三脚などにレーザースキャナーを据え付け、計測地点から放射状に点群を取得します。
三脚を利用するのが一般的ですが、ハンディ式やバックパック型の機器も開発されており、林内を歩きながら計測することも可能です。
地上レーザー計測には以下のような特長があります。
- 樹幹の曲がりなど、単木情報を高精度に把握できる
- 樹幹の三次元データが取得できるので、販売計画を立てられる
- ドローンや衛星データに比べ高精度の地形情報を取得できるため、路網の詳細設計ができる
- 移動しながら計測するため、短時間での広範囲の計測には適さない
必要に応じてドローンや地上レーザー測量を使い分けると、より効果的な森林管理が可能です。
森林GISの活用
森林GISは、森林に関わる作業においてGISを活用することを指します。
リモートセンシングで取得したデータを活用するには、森林GISの操作が不可欠です。
GISは、地図と帳簿を一体に管理できることが特長です。
上手に活用することで、データ管理・資料作成・施業計画の効率化や、スムーズな情報共有につながります。
森林GISについての詳細は以下の記事を参考にしてみてください。
林業アプリケーションの活用
近年は林業で利用できる様々なアプリケーションが開発されています。
iPhone 12 Pro /12 Pro MaxやiPad Pro以降の機種にLiDARが標準搭載されたことで、測量関係のアプリケーションも多数リリースされています。
具体的には、以下のようなアプリがリリースされています。
- 日報アプリ
- GISアプリ
- 測量アプリ
- 林業機械と連動したアプリ
- 木材検収アプリ
- 毎木調査アプリ
また、これらが複合した、林業全般に利用できるアプリも発売されています。
まだ林業アプリを使ったことがないという方は、弊社が開発した無料アプリ「mapry木材検収」から始めてみてはどうでしょうか。
興味のある方は以下のURLからお問い合わせてみてください。
需要マッチングシステム・SCM
需要マッチングとは、その名の通り売り手と買い手を結びつけ、ビジネスを成立させることです。
需要マッチングは、SCMと深く結びついています。
SCMはサプライチェーンマネジメントと言い、生産・加工・販売を一元管理し、全過程を最適化する経営手法のことです。
林業におけるSCMは、川上~川中~川下を結びつけ、スムーズに情報共有することが大切です。
具体的には以下のようなサービスがあります。
- クラウドシステムによる川上・川中・川下の情報共有
- トレーサビリティシステム(追跡アプリなど)
- Web入札システム
- 原木管理クラウド
いち事業体にとっては導入効果のイメージがしづらく、導入のハードルが高いかもしれません。
流通全体に関わる技術のため、川上~川中~川上、また自治体やメーカーなど、業界全体となって取り組む必要があります。
まとめ
本記事をまとめると、以下のとおりです。
- スマート林業を活用することで作業の効率化・均一化・安全性の向上というメリットがある
- スマート林業導入のハードルであるコストや技術の習得は、補助金の活用や講習への参加が解決への道
- スマート林業にはリモートセンシング、森林GIS、アプリ・需要マッチングシステムなどが活用できる
林業従事者の高齢化や担い手不足が深刻な今、最先端技術の力が必要不可欠であり、今後日常的に使われていくと考えられます。
林業の学校においても、スマート林業に関するカリキュラムは取り入れられてきており、興味関心を抱く若手も増えてきています。
そういった若手の林業従事者に対してのアピールポイントとしても、スマート林業を導入するのもありかと思います。
そして、将来の森林管理の省力化や効率化を図り、あるべき姿の森林管理をスマート林業とともに作り上げていきましょう。
参考資料
林野庁,「森林資源情報のデジタル化/スマート林業の推進」,林野庁,日付不明,https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/smartforest/smart_forestry.html(2024.2.1取得)
林野庁,「高精度な森林情報の整備・活用のためのリモートセンシング技術やその利用方法等に関する手引き」,林野庁,2018.3,https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/smartforest/attach/pdf/smart_forestry-20.pdf(2024.2.1取得)
林野庁,「令和元年度スマート林業構築普及展開事業事例集」,令和元年度スマート林業構築普及展開事業事例,2020.3,https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/smartforest/attach/pdf/smart_forestry-33.pdf(2023.12.22取得)
国立大学法人信州大学,「信州大学発ベンチャー企業特集 森を空から情報化する会社!」,信州大学発ベンチャー企業特集 森を空から情報化する会社!2018.7.31,https://www.shinshu-u.ac.jp/zukan/cooperation/post-15.html(2023.12.22取得)
国土交通省,「無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール」,航空安全:無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール,https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk10_000003.html(2023.12.22取得)
eTree,「スマート林業とは?技術で森林経営を効率化する新しい林業の形」,スマート林業とは?技術で森林経営を効率化する新しい林業の形,2023.1.23,https://www.etree.jp/content/woodreport/sustainable-0310/(2023.12.22取得)