林業において伐採搬出作業をする際に欠かせないのが、作業道の作設です。
実際に作業風景を見たことがない人にとっては、「どんな手順で作業道が作られるのだろう」「作設時の注意点は何だろう」といった疑問点もあると思います。
そこで本記事では、作業道作設の施工手順と注意点を解説します。
作業道の施工部分の概要がわかる内容となっていますので、ぜひ参考にしてみてください。
作業道作設のおおまかな流れ
作業道の作設は以下の流れで進みます。
- 路網計画の作成
- 現地踏査
- 施工
- 管理
今回は作業道作設における現地踏査・施工の部分について紹介していきます。
路網計画については「作業道作設の路網計画について手順やポイントを解説〜路網計画編〜」の記事で詳しく紹介していますので、興味のある方はぜひご覧ください。
作業道作設の手順
作業道作設の手順は以下の通りです。
- 路線踏査
- 支障木伐採
- 土工
- 排水施設の設置
- 補修
高性能林業機械の使用を想定した一般的な作業道の作設手順について、詳しく見ていきましょう。
路線踏査
実際に作設を担当する重機のオペレーターと支障木の伐倒者が、路網計画で検討されたルートを歩きます。
路網の計画者ではわからなかった施工上の課題などを見つけだし、作業に生かしていきます。
実際に作業道を作設すると、狙ったところに路線を付けられないときもあります。
その場合には、もう一度路線踏査を行い、計画された路線に復帰できるよう調整をかけていきます。
支障木伐採
路線踏査が終わり計画された路線に変更がなければ、作業道を作るにあたって支障となる立木を伐採していきます。
この作業のことを林業では「支障木伐採」と呼びます。
支障木伐採を行う際は、路線上に生えている木を手前から少しずつ切ります。
なぜなら、途中で岩などが出てきて路線変更をする場合も考えられるからです。
一度に全部の木を切ってしまうと、途中の路線変更に対応できません。
作業道作設のオペレーターと連携をとり、伐採箇所を日々調整しながら進めていく必要があります。
土工
土工は作業道開設の中で要ともいえる作業です。
基本的には、山を削ってできた土砂を路肩に盛って作業道を作設する、「半切り半盛り」の施工方法が用いられます。
出典:森林研究・整備機構 森林整備センター九州整備局「壊れにくい作業道に向けて ~山ずりを活用した道づくり~」
作業道の作設を半切り半盛りで行うメリットは以下の通りです。
- 山を削る量を少なくできる
- 支障木伐採の量を少なくできる
ただし、作業道の半分は土を盛って作ることになるため、オペレーターには作設スキルが求められます。
盛った土は山を削った部分よりも強度が落ちるため、崩落の可能性も秘めています。
盛土部分は何度も締め固めて強度を保ち、崩れない作業道の作設が必須です。
土砂を掘削した際に出てきた岩などは、盛土部に埋めることで作業道の強度を増やせます。
排水施設の設置
土工の途中で湧水箇所や沢目などに遭遇した場合は、排水施設を設置します。
排水施設には、大きく分けて2つの種類があります。
支障木伐採で出た枝条などを敷いて作業道の上を排水させる「明きょ」と、ヒューム管などを用いて作業道の下で水を処理する「暗きょ」です。
作業道は排水させずにそのまま利用すると、以下のようなデメリットが考えられます。
- 水によってぐちゃぐちゃになり重機が坂を登れなくなる
- 作業道の強度が落ちて崩落の可能性がある
- 泥水が発生し周辺環境へ影響を及ぼす
基本的にはコストが許される限り排水施設は設置すべきです。
現地で出てきた枝条や不要木などを上手に活用することで、経費を抑えた排水施設の設置もできます。
補修
伐採搬出作業を行っていると、作業道は少しずつ傷んできます。
大きく壊れる前に補修することで、あとで直す負担を減らすことが可能です。
また、伐採搬出作業が完了した場合も、次に使うときのことを考えて補修します。
排水施設を多めに設置し直すことで、雨水による作業道の崩壊を防げるでしょう。
作業道作設の注意点
作業道の作設で注意したいのは以下の2点です。
- 支障木を伐採する際は立ち入り可能な距離を守る
- 幅員に余裕をもって作業道を作設する
1つは「支障木を伐採する際、重機が作業半径内に立ち入らないこと」です。
立木の伐採時は、伐採する木の高さの2倍を半径とする範囲内に、伐採者以外を立ち入らせてはいけない決まりがあります。
出典:厚生労働省「伐木作業等の安全対策の規制が変わります!」
伐採した支障木が重機にぶつかるといった労働災害を防ぐためにも、作業半径内の立ち入り禁止事項を守りましょう。
もう1つの注意点は、「作設する作業道の幅員に余裕をもつこと」です。
作業道作設の計画時には、幅員が設定されている場合が多いものです。設計通りの幅員で都合が悪いときには、作業道を広く作設しましょう。
例えば、山の傾斜がきつい場所に幅員ぎりぎりの道幅で作業道を作設しては、作業者は安心して仕事ができません。
幅に余裕をもった作業道を作設することで、作業者が安心して作業に取り組めるでしょう。
早く作設することを急ぐあまり、ぎりぎりの幅員になってしまいがちですが、余裕をもった作業道の作設を心がけましょう。
まとめ
作業道の施工は、路線踏査から排水施設の設置と工程が多岐にわたります。
作業道のでき次第では、のちの作業の効率や安全面に大きく影響を及ぼします。
そのため、作業道の作設には、現場作業に精通した人がオペレーターとなるのが望ましいでしょう。
作業道の作設は危険の伴う仕事です。
作業道作設の注意点を守りながら、日々の業務にあたりましょう。
この記事が、作業道作設を知るための参考になってもらえれば幸いです。
参考資料
厚生労働省.「伐木作業等の安全対策の規制が変わります!」.2019年5月.https://www.mhlw.go.jp/content/000524013.pdf(2024.4.7取得)