林業における始まりの作業【地拵え】とは?種類や作業手順・コツを紹介 |
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林業における始まりの作業【地拵え】とは?種類や作業手順・コツを紹介

林業・森林に携わる方は、「地拵え(じごしらえ)」という言葉を1度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

「苗木」を植える前の準備作業ということもありまだまだ認知度は低く、

「そもそも地拵えって何?」

「作業したことがないけどどんな作業なの?」

といった疑問もあるかと思います。

本記事では地拵えの概要や種類、作業手順などを紹介します。

ぜひ地拵え作業を知るための参考にしてください。

林業で欠かせない作業「地拵え」とは

林業における地拵えとは苗木を植栽する前に行われ、のちに行われる作業の効率や安全性に関わる大切な作業です。

地拵えの目的や詳細は以下の通りです。

地拵えの目的詳細
効率を上げる林地内の雑草木がなくなり整理されるため、作業者の移動・苗木の運搬・刈り払い作業などの効率が上がる
安全性を高める林地内のゴミなどが整理されるため、移動時のつまずきや下刈り時のキックバック(※)を防ぎやすくする
苗木の生育を助ける日陰の要因となる不要な木を取り除くため、苗木が育ちやすい環境を作れる

※キックバックは刈り払い機やチェーンソーなどに見られる危険な動作を指します

地拵え作業が行われる主な時期は春と秋です。

これは一般的な苗木を植えるタイミングが春や秋だからです。

近年は省力化の流れが進んでいて、いかに手間を省いて作業できるかが求められています。

参考資料:全国森林組合連合会「安全情報(2号)」

地拵えの種類

地拵えは「人力による地拵え」と「重機による地拵え」に大別されます。

それぞれの種類を詳しく見ていきましょう。

昔ながらの人力による地拵え

人力による作業は一般的な地拵えで、この方法によって作業されている現場はまだまだ多くあります。

人力による地拵えの特徴は以下の通りです。

メリットデメリット
・今後の作業に必要のない不要木などを徹底的に除去できる
・大きな道具や機械が必要ない
・ある程度大きな面積を作業するなら人数が必要
・人力作業のため、事故の可能性を消せない

人力の地拵えに必要な道具は、刈り払い機やチェーンソー、なたなどです。

林業従事者が比較的持っていることの多い道具を使うのも特徴のひとつです。

一貫作業で見られる重機による地拵え

伐採と地拵えでは作業内容がまったく異なるため、通常は違う作業者によって行われます。

作業者を代えずに伐採から植栽までを一挙に行うのが「一貫作業」です。

一貫作業では現場にある重機を利用して地拵えが行われます。

重機による地拵えの特徴は以下の通りです。

メリットデメリット
・人力と比べ作業効率が良い
・切創(切り傷)や転倒などの事故が減る
・大きな除去物でも動かせる
・植栽作業をイメージして作業できる
・重機は簡単に所持できない
・重機の扱いには専門の資格が必要
・重機の管理コストが大きい

一貫作業は基本的に伐採や地拵え、植栽の作業者が同じであるため、植栽作業などをイメージしながら地拵えできます。

逆に、伐採や地拵え、植栽の作業者が異なる場合は、それぞれの作業者による事前の打ち合わせが重要となります。

地拵えの作業手順

地拵えの作業手順は以下の通りです。

  1. 外周測量
  2. 雑草木の除去
  3. 枝などの片付け

それぞれについて詳しく紹介します。

1.外周測量

地拵え作業の前準備として、外周測量を行い面積を洗い出す必要があります。

面積からおおよその作業量が把握できるため、作業計画に役立てられます。

また、植栽する苗木の本数を算出するためにも面積が必要です。

植栽本数の算出方法は以下の通りです。

  • 植栽に必要な苗木=植栽密度(ha当たり〇〇本)×面積(ha)

現在はGPSを利用した外周測量が主流で、刈り払い作業を行う前でも比較的容易に作業できます。

また、位置が把握できていれば、おおまかな面積はGISを利用してPC上でも算出できるでしょう。

2.雑草木の除去

雑草木はのちの作業の邪魔であり、また日陰を作ることによって苗木の生育を妨げるため、刈り払い機やチェーンソーで取り除きます。

刈り払い後の様子

一般的には林地内の全ての雑草木を刈る「全刈り」が行われますが、作業方法にはその他にも種類があります。

各種の除去方法は以下の通りです。

雑草木の除去方法の種類作業方法特徴
全刈り林地のすべての雑草木を除去する・一般的な刈り払い方法
・他の作業方法と比べ、刈り払いにかかる人工数が最も大きい
筋刈り植栽する列だけを刈り払う・経費削減のために用いられる
・雑草木を風よけとして使いたいときにも用いられる
坪刈り植栽する周りだけ刈り払う・刈り払う面積が小さい
・雑草木によって、植栽した苗木が被圧(※)される可能性がある

※被圧とは、樹木が周りの雑草木などの影響を受けて成長を阻害されること

3.枝などの片付け

地拵えは不要な雑草木を除去するだけにとどまらず、枝も集めて片付ける作業まで行われます。


集積の方法にもいくつか種類があるため、以下に詳細を紹介します。

片付けの種類作業方法特徴
棚積み地拵え雑草木を集めて、棚のように積み上げる・一般的な方法の1つ
・等高線なりに棚を作ることで移動が楽になる
枝条散布地拵え(※)雑草木を作業エリア全体にまき散らす・雑草木の量が少ない場合に採用される
・コンテナ苗を植える際に適している
巻き落とし雑草木を谷底に落として集積する・植え付けられる範囲が増える
・作業範囲に雑草木が散らからない
・生産性の高いエリアをつぶす可能性がある
火入れ地拵え雑草木を集めて燃やす・現在ではほとんど行われない方法
・雑草木が作業エリアに残らず、後続作業の効率化が望める
・山火事の可能性がある

※枝条とは枝のことを指します

棚積み地拵えの様子

地拵え作業のコツ

地拵え作業のコツは「植栽するめどが立ってから雑草木の除去を行う」ことと、「雑草木の除去から数日おいて行う」ことです。

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

植栽するめどが立ってから雑草木の除去を行う

一般的に地拵えは、植栽するめどが立ってから行われます。

しかし、気を付けたいのは、植栽する作業者が決まっていなくても地拵えを行う場合です。

このケースは、長い期間で考えると、春に地拵えだけを終わらせて秋に植栽するという流れが考えられます。

時間の経過によって雑草木が再び生え、植栽の前にもう一度刈り払い作業をする必要があります。

本来であれば不要な作業のため、連続してとりかかれるように段取りするのが地拵えのコツの1つです。

片付け作業は雑草木の除去から数日おいて行う

地拵え作業では、雑草木の除去作業から数日おいてから片付け作業を行うと作業効率が上がります。

雑草木の水分が抜けて軽くなるため、雑草木の移動がしやすくなるからです。

ただし、乾燥させ過ぎると、枝葉やつるをなたで切断しにくくなり片づけが大変になるため、時間の置き過ぎには注意しましょう。

まとめ

地拵えは植栽の効率化や安全性を高めるだけではなく、その後の保育業務全般に関わる非常に大切な作業です。

そのため、林業全般に精通している人が作業できると、のちの工程を考え抜いた地拵えが期待できます。

現在は重機を活用した地拵えが広まってきています。

しかし、必ずしも重機が入れる現場だけではないため、人力の地拵えも活躍の場を失ってはいません。

どちらの特徴も理解して、適切な地拵え方法を選ぶのが大切といえるでしょう。

参考資料

全国森林組合連合会,「安全情報(2号)」,2021.5.31,http://www.airinsai.server-shared.com/doc/anzen2022002.pdf (2024.2.19取得)

森づくりの技術,「4.地拵え」,日付不明,https://silviculturetech.com/text1/text1-04/(2024.2.19取得)