ジビエ利用で獣害をプラスに転換!鳥獣被害防止総合対策について解説 |
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ジビエ利用で獣害をプラスに転換!鳥獣被害防止総合対策について解説

林業における獣害被害は依然として広範囲で確認され、特にシカによる被害は全国の森林の約3割で確認されています。

農業においても鳥獣による農作物被害は約156億円(令和4年度)と深刻な状況です。

そんな中、国が進めているのが「鳥獣被害防止総合対策」です。

どんな制度なのか詳しく解説するとともに、実例についても紹介します。

鳥獣被害防止総合対策とは

鳥獣被害防止総合対策とは、鳥獣被害防止のために捕獲強化やジビエ利用拡大を推進する、国による取り組みです。

シカやイノシシなどによる被害は農業・林業のみならず地域の住民の生活にも営業を及ぼしています。

そこで各市町村が「被害防止計画」を作成し、それに基づく取り組みを国庫支出金を利用して支援するのが鳥獣被害総合対策交付金です。

主な事業は以下の通りです。

  • 捕獲活動の支援
  • 侵入防止策の支援
  • 生育環境管理の支援
  • 処理加工施設や焼却施設等の整備への支援
  • ジビエ利活用への支援

ICTを活用して効率的な被害対策を

ここからは、「捕獲活動の支援」の1つである「ICTを活用した被害対策」について解説します。

交付金が出るのは以下の2つの事業です。

  1. 新技術の実証
  2. 新技術の導入の支援

1つずつ解説します。

新技術の実証

新技術とは主に以下のことを指します。

  • センサーカメラやドローンなど活用した対象動物の把握
  • 遠隔捕獲機や通知機器を利用した捕獲
  • GISを活用した個体分布や被害状況の把握・対策

これらの技術を導入する際、かかった費用の定額(上限あり)の交付を受けられます。

上限はいち市町村あたり100万円以内ですが、隣接する複数の市町村と共同で被害対策を行う場合はいち市町村当たり110万円までの上限となります。

鳥獣被害対策に活用できるICT機器はこちらの農林水産省のページにまとめられています。

新技術の導入の支援

導入の支援とは、機器の導入・定着をコンサル会社等に委託する際にかかる費用の支援になります。

こちらもかかった費用の定額の交付を受けられます。

実例:ドローンを活用した対策

神奈川県秦野市では、ドローンを活用した重点鳥獣対策を実施しています。

秦野市ではシカやイノシシによる農作物の被害や、クマの人里への出没が課題でした。

そこで、被害が特に大きい3地域を重点取り組み地域に指定し、地域ぐるみの対策を推進しました。

ドローンで空撮した画像に野生動物の出没場所や営農状況などを加えた「被害対策地図」を作成し、課題を可視化しました。

さらに地域住民を対象に神奈川県の専門職員が講師を担当し、勉強会を開催しました。

その後は勉強会で計画した内容に基づき、放棄果樹の伐採や防護柵の補修・わなの設置などを地域主体で実施しました。

今後は市内全体にこのような取り組みを拡大する予定となっています。

被害対策地図 出典:秦野市

ジビエ利用で獣害をプラスに転換

対象動物の捕獲に伴って発生する課題が、捕獲個体の処分費用です。

そこで推進しているのがジビエとしての活用です。

ジビエ活用における交付金が受け取れる事業は「ソフト事業」と「ハード事業」に分かれています。

ソフト事業

ソフト事業は主に以下の事業に対して限度額内で定額支援がされます。

  • 国産ジビエ認証取得
  • ジビエペットフード商品の開発
  • 在庫管理などにおけるICTシステムの導入
  • 捕獲機器の利用などによる捕獲の効率化

ハード事業

ハード事業は、主に以下の事業に対して1/2以内の費用が交付されます。

  • ジビエカー・処理加工施設の整備
  • ペットフード製造機器の導入
  • 出荷調整のための一時保養施設
  • 解体残渣の現況化施設・焼却施設の導入

実例:処理施設の整備やふるさと納税でのPR

静岡県富士宮市では、年間1千万円を超える野生鳥獣による農作物被害が発生していました。

年間約800頭のシカを捕獲していましたが、ほぼ埋没処理しており増えていく廃棄物処理量が課題でした。

そこで交付金を活用して民間事業者による食肉処理施設2か所の整備を支援し、ジビエ活用につなげる取り組みを行っています。

処理施設が運営するキャンプ場ではジビエ料理の提供や、シカ解体ワークショップなども実施しています。

他にもふるさと納税での返礼品として出品したり、残渣をペット用シカ肉ジャーキーに加工するなど無駄の少ないジビエ利用につながっています。

市内の農業被害は2013年で1,219万円だったのに対し、2021年には404万円に減少するなど確実に成果が出ています。

処理施設「富士山麓ジビエ」 出典:富士山麓ジビエ

交付金を活用するには

鳥獣被害防止総合対策交付金を活用したいと考えている事業者の方は、まずは在住の市町村に確認しましょう。

鳥獣防止総合対策は市町村の作成する「被害防止計画」が主体となる取り組みではありますが、市町村が「住民や企業に主体となって取り組んでほしい」と考えているケースも多いです。

積極的に市町村と関わることがプラスにつながる場合もあります。

まとめ

鳥獣被害防止総合対策についてまとめます。

  • 鳥獣被害防止総合対策は鳥獣害の捕獲強化などを推進する、国による取り組み
  • 市町村の作成する計画に基づき交付金が支給される
  • 交付金を活用し、人材育成や物理的対策、ICTを活用した対策、ジビエ利用など幅広い対策が実施されている

何かしらの鳥獣害対策を考えている方は、交付金を利用できる可能性があるので一度在住の市町村に確認してみてください。

参考資料

林野庁.「野生鳥獣による森林被害」.https://www.rinya.maff.go.jp/j/hogo/higai/tyouju.html(2024年7月3日取得)

農林水産省.「鳥獣被害防止総合対策交付金について」.令和6年4月.https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/yosan/attach/pdf/yosan-137.pdf(2024年7月3日取得)

農林水産省.「鳥獣被害対策に活用出来る機器情報」https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/kikijouhou/kikijouhou.html#ICT(2024年7月3日取得)

秦野市.「ドローンを活用した鳥獣対策より 令和2年度被害対策地図北地区横野地域被害対策地図(第一回勉強会)」.https://www.city.hadano.kanagawa.jp/www/contents/1631060524523/simple/file01.pdf(2024年7月3日取得)

富士山麓ジビエ.「ジビエ施設見学」.https://wens.gr.jp/gibier/tour/(2024年7月3日取得)

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