デジタルツインとは?地理空間分析にも活用される最新ツール
GIS応用

デジタルツインとは?地理空間分析にも活用される最新ツール

製造業や運輸業など様々な産業で利用されるようになったデジタルツイン。

地理空間分析においても都市開発や災害防止のための新手法として、GIS分析と同時によく利用されるようになりました。

この記事ではデジタルツインの概要やメリット、主なシステムや事例について簡単にご紹介します。

デジタルツインとは何か?

デジタルツインとは、物理的なオブジェクトやシステムをデジタルの世界で正確に再現した仮想モデルのことを指します。

物理的な対象とデジタルモデルが双子(ツイン)のように並行して存在し、相互に影響を与え合うことからこの名前がつけられました。

具体的には、実際にインターネットで使われる機器や建物、都市などの物理的な存在を、コンピューター上に構築された仮想空間内に再現し、その挙動や状態をリアルタイムで監視・分析・シミュレーションする技術です。

IoT(モノのインターネット)やビッグデータ、AI(人工知能)などの技術の進展により、センサーやデバイスが収集する膨大なデータを活用し、物理的な対象物の状態を正確にデジタルモデルに反映させることが可能になりました。

現実の世界と密接に連動する動的なシステムであるデジタルツインが登場したことで、現実世界のリアルタイムの監視やシュミレーションを行うことにより、以下の事例のようにあらゆる分野で活用が始まっています。

  • 製造ライン上に設置した多種多様なセンサーから生体データやCO2濃度データなどを収集してデジタルツイン上に反映させることで異常予知
  • 航空機エンジンのメンテナンスを本当に補修が必要な場所と時に応じて実施
  • 自動車に走行状態を識別・修正し、必要であれば内部ソフトをアップデート

またデジタルツインの応用範囲の中には都市計画や土地利用などの地理空間分析も含まれます。

その前提として位置情報を使うため、GISソフトも併せて使われることが多いです。

複雑かつ巨大な建造物や自然の表現や時間経過などに向くシステムであるため、うまく利用すれば地理空間分析を極めて効率化させることができる期待のツールです。

地理空間分析におけるデジタルツインの国際基準規格と主なモデル

デジタルツインのような3Dデータを利用する主体は、国や自治体だけでなく企業や個人も含む多くの人や団体が利用するため、共通のプラットフォームが欠かせません。

地理空間情報分野においては国際標準化団体OGC(Open Geospatial Consortium)が策定した国際標準「CityGML」の規格を採用することで、国内外多くのデジタルツインを利用することができます。

この企画は一律に幾何学上で構成した「ジオメトリモデル」のほか、建物や街路を区別して定義し、それぞれに高さや属性情報が付与された「セマンティックモデル」を活用しています。

そのため高い精度・秘匿性が求められる高度な用途に応用できます。

日本においては、国土交通省が主導するPLATEAU(プラトー)が3D都市モデルのオープンデータとして有名で、公開されています。

このシステムは以下3つのデータで構成され、以前から調査・取得されてきたデータのダウンロードコストを削減でき、莫大な構築費用をかけずに作業時間を下げることができる点でも注目を集めています。

  • 航空測量データ:航空機からレーザープロファイラーで測量した高さや航空写真
  • 都市基本計画図:自治体・市町村による2D地図データ
  • 都市計画基本調査:都市計画法にも続いて調査された建物の属性や構造などの基本情報

PLATEAUは世界的には遅れてのリリースとなりましたが、すでに全国各地の自治体や企業により様々なアイデアが生まれ、日々拡張を続けています。

なおPLEATEAUにおいてはオープンデータのダウンロードのほかWebブラウザ上でエリアや3Dモデル、各種の情報を表示できる「PLEATEAU VIEW」も提供されているので、興味のある方は是非ともアクセスしてみてください。

地理空間分析におけるデジタルツイン作成のメリット

多くの分野で実績を残しつつあるデジタルツインについては、地理空間分析でもいくつかのメリットがあります。

以下に主要なものをご紹介します。

視認性が高い

デジタルツインはGISの位置情報データをもとに3Dモデリングソフトによって現実社会を3Dモデルとして表すようになっています。

土地利用変化・建物の形状の確認などを確認する時にはGISソフト上の2次元の画面ではわかりにくいのは歪めません。

3D化することで視認性が高まり形状や高さなどがわかりやすくなるため、地理空間分析がやりやすくなります。

様々な目的に応じて3Dモデルを高精度に活用可能

デジタルツインツールは座標と連動した3Dモデルと建物のテクスチャ・属性情報などを高い精度で目的に応じて利用できることが可能になります。

その目的は多様で、洪水における建物の浸水被害や都市計画の策定など従来から活用される地理空間分析のほか、ゲーム用の3D背景やVR(仮想現実)・AR(拡張現実)を利用したエンターテイナメントなどにも活用可能です。

それぞれにおける事例については後ほど解説いたします

時間経過をわかりやすく見ることができる

デジタルツインは3Dモデルである以上に、GISと同様過去のデータを反映させることができます

それゆえに過去数十年における建造物の形状変化や土地利用の変化を3Dモデルの形状変化によって簡単に表現できるというメリットを持っています。

また過去のデータだけでなく計画中のビルなどの建造物をモデルとして表すことができるため、竣工後の都市景観などを事前に調べて周辺住民や立地企業との対立を防ぐ、といった使い方も可能になります。

地理空間分析におけるデジタルツインの主な活用事例

デジタルツインは多くの分野で活用され、全国各地に多くの事例が登場しています。

以下に国土交通省が紹介する3D都市モデルのうち2つをご紹介します。

なお同省では他にも多数の事例を紹介し、解析の際に利用したツールや今後の課題なども詳しく伝えています。

詳細については、こちらよりアクセスしてください。

地下街データを活用したナビゲーションシステムの開発

出典:国土交通省「PLATEAU | USECASE | 地下街データを活用したナビゲーションシステム」

都市部では買い物やビジネスの場として多く活用される地下街ですが、迷ってしまう方も多いかと思います。

地下街の案内図は管理者が独自で作っていることが多く、防災やまちづくりにおいて支障をきたすことが指摘されています。

そこでJR東日本コンサルタンツをはじめとする5者は東京駅周辺のGISデータやBIMモデル、3D駅構内地図などのデータを統合した3Dモデルを構築。

それを活用した3Dナビゲーションシステム「東京ステーションナビ」の開発に乗り出しています。

この東京駅周辺のデジタルツイン「東京ステーションナビ」を活かすことで以下のような情報を提供し、東京駅周辺に滞在する人の利便性を向上させようと動いています。

  • 電車の運行情報
  • ロッカーの空き情報
  • 災害時における避難経路の確保
  • 災害時における帰宅困難者の受け入れ施設情報

土砂災害シュミレーション

出典:国土交通省「PLATEAU | USECASE | 精緻な土砂災害シミュレーション」

集中豪雨や台風などによって発生し大きな被害をもたらす土砂災害。

古くから対策が進められ、地形から力学的に推定される最大範囲として土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域のハザード情報は全国各地で活用されています。

しかし現状の警戒区域の設定にも以下のような限界が見られていました。

  • 土砂災害から派生した家屋流出・半壊によるエネルギー変化や流動方向に対する変化の影響が反映されておらず、実際に即した土石流の氾濫範囲になっていない可能性がある
  • 最大範囲を対象にしてしまっているために地域によっては居住エリアの大半が土砂災害警戒区域に設定されてしまい、避難場所が選定しにくい状況にある

そこで株式会社ウエスコや株式会社構造計画研究所などをはじめとする6者は、3D都市モデルを活用し家屋の倒壊状況などを加味した土石流の流体数値シュミレータを開発。

かつて集中豪雨の被害が甚大であった広島県広島市安佐南区を対象としてシュミレーションを行い被害実績データと比較した結果、家屋倒壊状況や土石流被害のうち70%をシュミレーションで再現することができました。

このシステムは土砂災害における避難計画の精緻化につながるという意味から、各自治体での活用が期待されています。

まとめ

3D空間で建物や土地などの地理空間を表現するデジタルツインは、視覚的なわかりやすさと高さの概念でさらに細かく分析できる手段として期待されています。

まだまだ新しい概念のため、ソフトウェアの使いやすさやデータ処理にかかる時間など問題点もありますが、すでに土地利用の変化や災害のシュミレーション、観光まちづくりなどGISが利用される分野で活用されています。

今後の技術革新やUXの改善による新たなツールの登場でさらに普及が期待されている分野でもあるため、今のうちに知識として押さえておきましょう。

参考文献

ESRI 「デジタルツイン|概要」https://www.esri.com/ja-jp/digital-twin/overview (2024年7月21日閲覧)

株式会社村田製作所「「3D都市モデル」で加速する、スマートシティやデジタルツインの構築、エレクトロニクス分野のデータドリブン」2022年9月29日 https://article.murata.com/ja-jp/article/examples-of-diverse-applications-of-3d-urban-models (2024年7月25日閲覧)

総務省 「デジタルツインって何?」https://www.soumu.go.jp/hakusho-kids/use/economy/economy_11.html#:~:text=%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%83%84%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%81%AE%E4%BB%95%E7%B5%84%E3%81%BF,%E5%91%BC%EF%BC%88%E3%82%88%EF%BC%89%E3%81%B3%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82 (2024年7月29日閲覧)

NECソリューションイノベータ「デジタルツインとは?製造業や都市などでの活用事例8選」https://www.nec-solutioninnovators.co.jp/sp/contents/column/20220701_digital-twin.html (2024年7月29日閲覧)

国土交通省 「PLATEAU」https://www.mlit.go.jp/plateau/ (2024年7月26日閲覧)

国土交通省 「PLATEAU VIEW」https://www.mlit.go.jp/plateau/plateau-view-app/ (2024年7月26日閲覧)

国土交通省「PLATEAU | USE CASE」https://www.mlit.go.jp/plateau/use-case/ (2024年7月26日閲覧)

国土交通省「PLATEAU | USECASE | 地下街データを活用したナビゲーションシステムhttps://www.mlit.go.jp/plateau/use-case/uc23-05/ (2024年7月26日閲覧)

国土交通省「PLATEAU | USECASE | 精緻な土砂災害シミュレーション」https://www.mlit.go.jp/plateau/use-case/uc23-02/ (2024年7月26日閲覧)

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