【コラム・林業の安全2】切れない刃物は危ない!?安全に向けて意識すべき基本6点
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【コラム・林業の安全2】切れない刃物は危ない!?安全に向けて意識すべき基本6点

コラム「林業と安全」では、依然として危険度の高い林業の安全性向上のため、実体験を元にしたノウハウをお伝えしています。

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2回目となる林業コラム記事のテーマは、「安全に向けて意識すべき基本的なこと」です。

どの業界でもいえますが、それぞれの業種には安全に作業するうえで留意すべき点が存在し、林業においても例外ではありません。

本コラムでは林業で安全に作業するための考え方を、以下の通り紹介します。

  • 切れない刃物は危ない
  • 自然を相手にする仕事である
  • 基本は上方向に注意する
  • 一人で作業しない
  • 土砂災害に対するアンテナをはる
  • 日頃から体調を管理する必要がある

林業経験の浅い方やこれから林業を始めようと思っている方はもちろん、山林に出かける方などはぜひ、参考にしてほしいと思います。

切れない刃物は危ない

刃物を目の前にしたとき、「よく切れそうで怖いな」と思ったことはありませんか。

実は切れる刃物ほど安全に作業できます

なぜかというと、よく切れる刃物は余計な力を入れなくても、簡単に切れるからです。

切れない刃物ほど、力を込める必要があります。

そのため、切れない刃物は余計な力が加わり手元が狂いやすく、怪我につながりやすいでしょう。

林業でいえば、チェーンソーの刃がわかりやすいかと思います。

よく目立て(刃を研ぐこと)されたチェーンソーであれば、刃を回し丸太の上にあてがっただけで、ぐんぐん切れていきます。

逆に切れない刃がついたチェーンソーを使っている場合は、チェーンソーを強く押し当てるようにして扱わないと切れていきません

常に力が入っているため、作業終了後は疲労感でいっぱいでしょう。

疲れのたまりやすさにも影響するため、切れない刃を使っている人の方が怪我をしやすいといえます。

とはいえ、切れる刃物は触るだけで切れてしまうため、扱いには注意が必要ではあります。

自然を相手にする仕事である

改めていうところではないかもしれませんが、林業は自然を相手にする仕事です。

自然を相手に仕事をするときに気をつけるべきことの1つに、2つとして同じ現場はないことが挙げられます。

そのため、常に総合的な判断の元、仕事をしなければいけません。

以前と同じように作業すれば、前も安全だったから大丈夫」といった考えを持つと、細かな違いに気づけず事故につながる可能性もあります。

例えば伐採現場であれば、安全作業のために次の点を考慮すべきです。

  • 伐採木の形状:太さ・高さ・堅さなど
  • 周辺の状況
  • 倒すべき方向
  • 風向き
  • 立っている場所の傾斜
  • 雨や雪の有無

これらの諸条件は常に異なります。

目の前の状況をしっかりと把握し、経験と理論を融合させて仕事をする必要があります。

ときには、「伐採しない」といった判断を下す必要もあるでしょう。

常に変化する自然に対応しながら作業できれば、事故にあう可能性を減らせると私は考えます。

基本は上方向に注意する

林業の現場ではときに作業に夢中になると、足元に目を奪われがちです。

伐採したあとの樹木は地面に倒れていますし、刈り払うべき対象の雑草は地面に生えています。

測量の杭なども地面にありますね。

そのため、目線は下にいきがちです。

しかし、災害につながるようなものは上からやってきます

例えば誰かが切り落とした丸太が斜面の上部から転がってくるかもしれませんし、作業道の作設中に発生した岩が落ちてくる可能性もあります。

足元ばかりを見ていては、危険な上方の状態を把握できません。

逆にいうと、作業者をする側は常に、斜面下方向にものが落ちていかないように注意を払う必要があります。

一例として、石や丸太が転がっていかないような防止策をとる、などが考えられるでしょう。

常に物は斜面下方向に落ちていく、と思って作業することが大切です。

一人で作業しない

林業では一人で作業しないような体制で仕事をする必要があります。

なぜなら、もしも事故が発生した場合に、一人作業だと発見が遅れて迅速に対応できなくなるからです。

二人で作業している状況下では、被災者ではないもう一方が助けを求めに行けば、事故にあった人を助けられる可能性は上がるでしょう。

林業の現場は人里から離れていることが多く、病院までの道のりが遠い場合も少なくないです。

また、作業現場から車のある林道まで、歩いて30分以上かかるといったケースもあります。

いずれにしても、病院まで気軽に行けない現場が多いため、いかにして早く助けを呼びに行けるかが重要です。

加えて、近年では熊の被害が多く報告されています。

二人でいれば話し声が周囲に届くため、一人よりも熊との遭遇の可能性は下がります。

もし一人が襲われてしまったときも、対応が可能になるのは林業の作業時と同様です。

基本的に山林では素早く助けることが求められるため、二人以上での作業を基本としましょう。

土砂災害に対するアンテナをはる

林業の現場の多くは、林道を通った先にあります。

作業中に土砂災害が発生し林道がふさがれてしまうと、現場から車で帰れないといった事態におちいります。

土砂崩れに直接巻き込まれてしまう可能性も否定できませんから、土砂災害に対するアンテナをはり、場合によっては現場を休みにすることも検討しなければいけないでしょう。

日頃から体調を管理する必要がある

林業は労働災害が多く、危険な業種です。

そのため、適度な緊張感を持った作業が求められます。

そこで必要になってくるのが、常に万全な体調で作業に当たることです。

体調不良のまま作業していると、集中力が欠けて危険な行動へとつながるでしょう。

「夜ふかしをする」「深酒をする」などといった行動は、翌日の作業に大きく影響を与えます。

労働災害は多くの人を巻き込むと自覚し、日々の体調管理に力を入れていかなければいけません。

まとめ

第2回の本コラムでは、「林業における安全な作業をするうえで考えたいこと」を紹介しました。

どの業種にも通ずるものもありましたが、「刃物は切れない方が危ない」などは、林業に従事して間もない方にとっては初耳のことだったかもしれません。

また、実際に私の職場では、梅雨時期に雨が続き土砂崩れが発生。作業者たちが現場に取り残されたこともありました。

とくに事故にはつながりませんでしたが、やはり普段からニュースなどで気象情報をチェックしておく必要があります。

いざというときの迂回ルートの確認や、緊急の連絡手段の確保も大切ですね。

林業という業種の特徴をよく理解し、経験を積み重ねていってもらいたいと思います。

次回第3回コラムテーマは、「森林・林業初心者でもできる安全対策」です。

ご期待ください。