なぜ日本にヒノキは多い?ヒノキ花粉に関する政策・研究を紹介
コラム

なぜ日本にヒノキは多い?ヒノキ花粉に関する政策・研究を紹介

ヒノキ花粉アイキャッチ画像

3月中旬ごろから本格的な飛散が始まるヒノキ花粉。

スギ花粉よりも遅めの時期に飛散がはじまり、終わりも4月~5月と遅いのが特長です。

「ヒノキをもっと伐採してほしい・・・」

「ヒノキ花粉の政策や研究はどのようなものがあるの?」

という考えている人もいるのではないでしょうか。

今回の記事は、日本のヒノキの状況、ヒノキ花粉に関する政策や研究を紹介します。

日本にヒノキはどれくらいある?

ヒノキはヒノキ科ヒノキ属の常緑針葉樹です。

ヒノキは日本の固有種で、福島県以南の本州・四国・九州(屋久島まで)に広く分布しています。

ヒノキはやや乾燥する場所を好み、山地では山腹や尾根に多く見られます。

軽くて加工しやすいため建築材によく利用されます。

耐久性・耐湿性に優れ、香りもよいため価値が高く、さらに管理に手間がかかることからスギよりも高値で取引されます。

最古の木造建築物である法隆寺にヒノキが使われていることからも、耐久性の高さがうかがえます。

日本の森林面積のうち、約4割は人口林で、その25%にあたる260万haはヒノキ林となっています。

日本の国土面積は3,779万haなので、日本の国土面積のうち、6.9%がヒノキ林ということになります。

森林面積に占めるスギ・ヒノキ人工林の割合
出典:林野庁ホームページhttps://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/kafun/data.html

なぜヒノキが多いのか

日本に多くヒノキが植えられたのは、昭和20~30年代(1945年~1965年ごろ)にかけて行われた「拡大造林計画」によるものです。

戦中・戦後の物資不足を補うために強度に森林伐採が行われました。

しかしその後、はげ山が広がり土砂災害などが多発し、さらに高度経済成長期の用材需要に対応するためスギやヒノキの人工林を増やす「拡大造林計画」が行われました。

現在、当時植えたヒノキは伐採期を迎えているのですが、市場価値が低く採算が取りづらい、また林業界の人手不足の問題からも適切に伐採が行われていない状態が続いています。

日本にヒノキが多い理由はほとんどスギと同様ですので、詳しくは以下の記事をご確認ください。

ヒノキ花粉に関する政策・研究

行政が行っている花粉症対策のうちの1つの柱が「発生源対策」です。

発生源対策は、花粉を飛散させるスギ・ヒノキ林を花粉の少ない森林へ変える取り組みです。

そのうち、「無花粉ヒノキ」と「木材利用の促進」について紹介します。

無花粉ヒノキ「丹沢 森のミライ」

発生源対策のうちの1つが「花粉の少ない苗木に植え替える」ことです。

無花粉スギが1992年に発見され開発・生産が進んでいますが、無花粉ヒノキはなかなか発見されないでいました。

そんな中、2012年に全国で初めて発見された無花粉ヒノキが「丹沢 森のミライ」(品種名:神奈川無花粉ヒ1号)です。

2021年には苗木が初出荷され、2022年に品種として登録されました。

今後は自然環境保全センター内のさし木の採穂園にて生産を拡大する予定となっています。

無花粉スギと比べて発見が遅れましたが、ようやく無花粉ヒノキの実用的な利用が始まりました。

無花粉ヒノキ(自然環境保全センター圃場)
無花粉ヒノキ(コンテナ苗木)

出典:神奈川県ホームページ

木材利用の促進

林野庁は、国産材の利用を促進しています。

スギ・ヒノキの人工林を伐採して利用することは、花粉発生源対策のほか森林のもつ働きを発揮させるのにも大切なことです。

例えば、2024年度の林野庁の予算のうち、「花粉の少ない森林への転換促進緊急総合対策」に60億円が充てられておりそのうちの1つが「スギ材の需要拡大」です。

また国産木材を使った木製品を紹介している「ウッド・チェンジ特設サイト」の公開なども行っています。

まとめ

花粉症の人には辛いヒノキ花粉ですが、国産材の利用促進や無花粉ヒノキの開発などの対策が行われていることがわかりました。

また、ヒノキは日本で古くから利用されてきた優れた材です。

花粉の少ないヒノキに切り替えるなどして、これからも人間が上手にヒノキと関わっていけるとよいですね。

参考資料

菱山忠三郎 監修.「樹皮・葉でわかる 樹木図鑑」成美堂出版,2011,p288

林野庁.「森林・林業とスギ・ヒノキ花粉に関するQ&A」.https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/kafun/qanda.html(2024.3.21取得)

林野庁.「スギ・ヒノキ林に関するデータ」.https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/kafun/data.html(2024.3.21取得)

神奈川県.「無花粉ヒノキが品種登録されました」.https://www.pref.kanagawa.jp/docs/f4y/prs/page/20220318.html(2024.3.21取得)

林野庁.「花粉症解決に向けた緊急総合対策<一部公共>」https://www.rinya.maff.go.jp/j/rinsei/yosankesan/attach/pdf/R6kettei-12.pdf(2024.3.21取得)

楽天グループ株式会社.「Good Select | 木を選ぶことはGoodなこと」https://event.rakuten.co.jp/area/japan/woodchange/(2024.3.21取得)