地理情報は一般的には郵便番号や住所などで表現されますが、そのままではGISの分析で用いることができません。
そこで重要になるのがジオコーディングです。
この記事ではジオコーディングの概念や代表的なツール、利用するときの注意点について簡単に解説します!
目次
ジオコーディングとは
ジオコーディングとは、住所や郵便番号といった位置情報を緯度経度で表される地理座標に変換するツールやサービスのことを指します。
GISでの地理空間分析で特定の場所の状況を調べる場合、その場所の緯度経度の情報がなければベースとなるマップ上で正確な場所を表すことができません。
そこで文字列で表現される住所の情報をジオコーディングを用いて数値にすることでコンピューターで処理できるデータにするという作業が必須となります。
また地図アプリやネット検索においても、特定の住所を入力すれば地図上にピンポイントで位置が特定されますが、これも裏側で自動で住所情報をジオコーディングによって度経度情報で表現することで正確な場所を表現しています。
例えばGoogle Mapで東京駅を検索すると、緯度は「35.68145839867605」、経度は「139.76713552516142」という座標にジオコーディングを用いて表現しています。
逆ジオコーディングとは
また緯度軽度の情報から特定の住所に転換するサービスやツールも存在し、それを逆ジオコーディングといいます。
この方法を用いることで地図アプリなどでは、緯度経度の情報だけでも特定の住所を特定することができます。
例として「34.9948682522734, 135.78460733191918」という座標情報をGoogle Mapで入力すると検索結果に「〒605-0862 京都府京都市東山区清水1丁目294」という住所が表示されます。
これをストリートビューで確認すると、京都の代表的観光地・清水寺の入り口付近が表示されることがわかります。
主なジオコーディングツール・サービス
地図アプリやGISが普及している今日では、ジオコーディングを行うツールは数多く用意されています。
以下に代表的なものをまとめてお伝えします。
Google Mapによるジオコーデシング
最もシンプルなジオコーディングの方法は、Google Map上のピンで右クリックして調べる方法です。
Google Mapで特定の場所を検索し、現れたピン表示について右クリックするとその場所の座標がわかります。
前述したように、東京駅を検索してピンの位置で右クリックすると、北緯「35.68145839867605,」東経「139.76713552516142」で表現されているということがわかります。
通常のブラウザで検索するだけで使えるためものすごく手軽な方法ではありますが、1件ごとに検索する必要があるため100件以上ある住宅や農地のデータなどを入力するには途方もない時間がかかるためあまり向きません。
また住所が分からなければ検索できないため、電話番号しかわからない場合などにはジオコーディングをこなうことができないという問題点もあります。
無償で利用できるWebツールを利用
続いてよく利用されるのが無償で利用できるツールを利用する方法です。
その中でも代表的なものが東京大学が提供する「CSVアドレスマッチングサービス」です。
指定したCSVファイルを入力することで、当該ファイルに緯度軽度情報を追加して自動出力してくれます。
一度に複数の場所のアドレスを確認したい場合は極めて便利なサイトなどで利用してみるといいでしょう。
チュートリアルページも用意されているため、簡単に使うことができます。
そのほかにも無料で利用できるツールとして、以下のようなサイトが存在します。
無償で手軽に使える上、Google Mapよりも詳しい情報を得られることが多いというのがこれらのWEBツールのメリットです。
ただツールによっては、住所の揺れのせいで使えないことも多い点には注意しましょう。特に京都市のように独特な地名が使われる場合や市町村合併前の情報を使う場合は要注意です。
住所の揺れとは、以下のように住所の文字や数値の形式が統一されず、データとしてうまく読み込めない状態を指します。
・半角の文字が入っている
・「ー」を「の」や「ノ」などを記述する
・旧字体が使われている
・番地や号の表記の有無やズレがある
・「が」、「ガ」などについて、ひらがな・カタカナ両方の表記がある
APIを利用
API(Application Programming Interface)とは、ソフトウェアやプログラムの間をつなげるインターフェイスで、WebサイトやWebアプリに呼び起こす設定をするだけで特定のプログラムを実行できる仕組みです。
ジオコーディングを行うAPIもいくつか存在し、それを活用すれば自社内のシステムに組み込んで簡単に利用することが可能です。
主なジオコーディングのAPIとしては以下のようなものがあります。
この仕組みを用いればプログラムを作ることで大量の住所情報から緯度軽度情報を一度に入手することができ、一件一件入力する必要があるGoogle MapやWebツールなどと比べて格段に作業時間を短縮することができます。
ただし簡略とはいえ一部プログラムにも触れるため、ある程度プログラミングに対する知識が求められるという点には留意しましょう。
専用ソフト・ツールを利用
無料で利用できる各ツールは便利ではあるものの、住所の揺れの問題や一度に大量に返還することができないなど、地理空間分析を担当する際には問題となる点がいくつか存在します。
とりわけ森林管理などの場合は数十年前の非常に古い地図を使う場合も少なくなく、旧字体や旧市町村名などのためにうまく座標情報を得られない問題に直面する場合が珍しくありません。
無償ツールで活用できない時に活用されるのが、地図会社や空間分析会社が提供する有償のジオコーディングツールです。
代表的なものとしては国際航業株式会社が提供する「Genavis 住所正規化コンバータ」、株式会社マップルが提供する「アドレスマッチングツール」が挙げられます。
これらのソフトは大量のレコード(行)からなるデータ処理を行うのに向いており、また旧字体や京都市の通り名など地域独特の住所表現や市町村合併の影響なども考慮した上で座標情報を出力できるという大きなメリットがあります。
ただし価格は高めで数十万円以上する場合もあります。
ジオコーディングの活用法
ジオコーディングは多くの業界で活用されています。
例として商業施設やオフィスビルの建設の場合、周辺の住所データをジオコーディングによって緯度軽度の情報とすることで自社のマップに一瞬で反映でき、手作業の手間がなく最新の情報を顧客に提示することができます。
また小売業者に物を運ぶ運送会社も、ジオコーディングによって運ぶべき店舗の最新情報をマッピングすることで最適な輸送ルートの確立に応用することができるようになります。
このようにジオコーディングは住所データを簡単、かつ大量に地図上に表示できるのが大きなメリットとなっており、今後も様々な業界での活用が期待されています。
ジオコーディングの際の注意点:測地系
ジオコーディングを行って位置情報を入手する際、とりわけGISによる分析を行うために利用するときに気をつけなければならないのが、利用している測地系が何であるかを把握することです。
ジオコーディングの際に利用したツール・APIとGISのベースマップの測地系が同一でない場合、入手した緯度軽度をGISに取り込んでも正確に表示されない場合があります。
場合によっては建物や道路が海や湖の上に表示されるというような致命的なズレを生じかねません。
そのため利用しているジオコーディングの測地系が何であるかはきっちり把握してから利用するようにしましょう。
とりわけ日本測地系を使っているシステムから情報を入手する場合は、Google Mapなどと異なるため注意が必要です。
なお測地系について詳しい情報を知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
まとめ
住所情報を緯度軽度情報に直すジオコーディングは、GISを活用した地理空間分析には必要不可欠です。
概念や代表的なツールの使い方は覚えた上で、分析を行うようにしましょう。
ただ前述した住所の揺れや座標系はジオコーディングにおいては大きな制約条件となるため、注意が必要です。
古い地図から大量の住所データを得た場合には有償ツールも活用するなど、必要に応じて複数の手法を考えてみましょう。
参考文献
井口奏大「現場のプロがわかりやすく教える位置情報エンジニア養成講座」秀和システム, 2023年出版, p49~52
株式会社ゼンリン「ジオコーディングとは?業務効率化を果たし、正確な住所情報を取得する方法を解説」https://www.zenrin.co.jp/product/article/geocoding/index.html(2024年9月7日閲覧)